メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

オスプレイ物資搬送 「政治利用」の声も

救援物資を届け、離陸する米軍のオスプレイ=熊本県南阿蘇村で2016年4月18日午後5時29分、西本勝撮影

 熊本地震の被災者支援のため米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが18日、熊本県内で救援物資約20トンを輸送した。国内の災害派遣で同機が使われたのは初めて。防衛省側は災害救援で有効性を示す機会だと考えたが、省内でも「オスプレイを政治的に見せつける作戦」と冷ややかな見方も出ている。

 米軍普天間飛行場(沖縄県)配備の4機が17日に岩国基地(山口県)に着陸し、うち2機が18日に熊本空港に向かい、水やパン、レトルト食品、簡易トイレなどを積み、熊本県南阿蘇村の白水運動公園に着陸した。待ち受けた陸自隊員がオスプレイから食料などが入った段ボールを運び出し、輸送車で村内3カ所の避難所に向かった。

 熊本空港など各拠点に物資は届いているが、道路の寸断や渋滞で被災者まで渡っていない状況に米軍が加勢した形。オスプレイを巡っては、陸上自衛隊が導入するオスプレイの佐賀空港配備計画の協議や、本土への訓練移転による沖縄の負担軽減など地元との懸案を抱えている。防衛省関係者は「オスプレイ投入は災害で使えることを示して安全性の懸念を取り除こうとする取り組み。災害の政治利用という批判はあるだろう」と指摘する。

 オスプレイは陸上自衛隊の輸送ヘリCH47より航続距離や速度は上回るが、搭載できる空間が狭く容積は半分ほど。比較的軽い生活物資ならばCH47の方が一度で多くの物資を運べる。オスプレイは着陸時に巻き上げる風が強いため、2015年のネパール大地震で住宅の屋根が破損したとの報道もあった。この日は白水運動公園にオスプレイが着陸する前、砂が巻き上がるのを防ぐためか自衛隊車両が散水していた。

 南阿蘇村立長陽中学校の体育館では1日3回の食事が配給されるが、一度の食事はこぶし大のおにぎり1個程度。村内のスーパーやコンビニエンスストアは品薄状態が続く。16日未明の地震で自宅の柱がゆがみ同体育館に避難している農業研修生、丸山慎裕(しんすけ)さん(36)は米軍の支援について「カロリーが少ないためか自宅の後片付けも力が出ない。素直にありがたい」と話した。

 一方、オスプレイの佐賀空港配備に反対している佐賀市の主婦、石丸初美さん(64)は「被災者の方々はおにぎり一つでもありがたいと思う状況。政府は(オスプレイの国内配備のために)どんな状況でも利用するのか」と憤った。配備計画には地権者の佐賀県有明漁協が防衛省の現地調査を拒否している。

 日米は陸海空自衛隊で構成する「統合任務部隊」内に18日、「日米共同調整所」を開設し、日米連携を加速させる。オスプレイは岩国基地を拠点に19日以降も物資輸送を続ける。熊本県沖に停泊する海上自衛隊の大型護衛艦「ひゅうが」で給油する準備もしている。【町田徳丈、蓬田正志、関東晋慈】

あわせて読みたい

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 消費税 先送りの「大震災級」と熊本地震 首相明言避ける
  2. 熊本地震 熊本刑務所が住民150人受け入れ 初の試み
  3. 熊本地震 「お父さん、助けて」 自宅崩落、奇跡の救出
  4. 熊本地震 「車中泊」3人重体 エコノミー症候群と診断 
  5. 熊本地震 不明者救出、祈り 発生72時間迫る 依然10万人避難

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]