最新記事

宇宙開発

NASAの選んだ近未来技術──平面宇宙船に、微生物を使ったリサイクルまで

NASA Innovative Advanced Concepts

イノベーティブで先端的なコンセプトを募集し、支援するプログラム

2016年4月18日(月)16時10分
山路達也

数年後に実用化?  Siegfried Janson氏が提案したのは「Brane Craft」という膜状の宇宙船

 NASAは、NIACというプログラムを毎年開催している。NIACとは、NASA Innovative Advanced Conceptsの略。イノベーティブで先端的なコンセプトを募集し、それが実現できるものであれば経済的な支援も行うというプログラムだ。

 NIACは2段階になっており、フェーズ1を通過したコンセプトは10万ドルの資金と9か月の期限で初期調査を行う。実現性が評価されたコンセプトはフェーズ2へと進み、今度は2年の開発期間と50万ドルが与えられる。

 2016年4月には、フェーズ1を通過した13のコンセプトが発表されたので、このうちいくつか紹介していこう。

【参考記事】リッチな人々の火星移住は近い

【参考記事】宇宙飛行士の若返り飲料の意外な中身

 Aerospace社のSiegfried Janson氏が提案したのは「Brane Craft」という膜状の宇宙船。機体が軽いため出力重力比が極めて高く、エレクトロスプレー(イオン液体に電圧をかけて噴射するエンジン)を使えば、地球低軌道を出発し、火星の衛星フォボスに着陸、さらに地球の低軌道に戻ってくることも可能だという。推進剤は2枚の膜の間に貯蔵される。

 Brane Craftの用途として考えられているのは、地球低軌道上のデブリ(宇宙ゴミ)の除去だ。Janson氏は、Brane Craftを使うことでデブリを極めて安価に掃除できると考えている。

 一方、NASA Ames Research CenterのLynn Rothschild氏が提案しているのは、微生物を使った宇宙でのリサイクル手法だ。

 現在、宇宙では、エレクトロニクス機器が壊れたら代わりの機器を地上から打ち上げるしかない。Rothschild氏のアイデアは、この使用済み機器から「バイオアーバンマイニング」によって金属を抽出して、再利用しようというもの。

niac_rothschild.png

Lynn Rothschild氏が提案している微生物を使った宇宙でのリサイクル手法


 廃棄された家電製品などのゴミに含まれる有用資源は「都市鉱山(アーバンマイン)」と呼ばれるが、微生物の力によって都市鉱山を利用する手法をバイオアーバンマイニングという。人工的に強化された微生物を使ってエレクトロニクス機器を分解し、銅などの資源を抽出。これをインクとして使い、新しいエレクトロニクス機器を印刷技術によって作ろうというわけだ。

 いずれもトンデモなコンセプトに聞こえるかもしれないが、すでに存在する技術をベースに発案されており、実現可能性が高いとNASAによって判断されたものである。

 さて、数年後に実用化されているのは、どのコンセプトだろう?

ニュース速報

ビジネス

ECBは「ゾンビ銀行」に対処すべき=ドンブレト独連

ビジネス

モルガンS、第1四半期利益は前年比54%減 トレー

ワールド

「イスラム国」、収入・支配地域人口30%減 新税導

ビジネス

アングル:下げ渋るドル/円、介入警戒・日銀緩和の思

MAGAZINE

特集:日本経済と禁断の金融政策

2016-4・26号(4/19発売)

マイナス金利も効かず、日本市場から脱出を図る外国人投資家 アベノミクスの次の一手は究極のバラマキ政策になるか

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    最強の味方のはずのビルがヒラリーの足手まとい

    妻の選挙戦を助けるはずのクリントン元大統領が次…

  2. 2

    大卒の価値が徐々に低下する日本社会

    高い学歴に見合った仕事が少ない「オーバーエデュ…

  3. 3

    世界最悪のタックスヘイブンはアメリカにある

    法人を引き寄せて他州の税収を吸い取ってしまうブ…

  4. 4

    ジカ熱は小頭症の原因とCDCが断定

    小頭症だけではない。ジカウイルスは胎児にさまざ…

  5. 5

    20代で資産10億、「アイデア不要論」を語る

    15歳で起業、一度は一文無しになりながらも、2…

  6. 6

    ビール職人が麦芽にとことんこだわり、丁寧につくりあげた! 手間ひまかけたオーガニックなビールが登場

    手間と時間をかけてつくるこだわりのオーガニック…

  7. 7

    機密のベールを脱いだ北朝鮮の核開発プログラム、情報開示の真意は?

    「北朝鮮脅威論」の神話を国内外に作りあげるプロ…

  8. 8

    荒れる米大統領選の意外な「本命」はオバマ

    共和党の醜い舌戦のおかげで人気回復のオバマがい…

  9. 9

    北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

    会議に秘密警察が乗り込んできて連行――恐怖政治…

  10. 10

    挑発行為に隠された北朝鮮の本音

    ベルリンの秘密会合で驚きの提案が──平和協定を…

  1. 1

    テレビ報道の自由と中立性はどう確保したらいいのか?

    新聞や書籍に特段の「中立性」は求められません…

  2. 2

    「ケリー広島献花」を受け止められなかったアメリカ

    今週11日、G7外相会議で広島を訪れたアメリ…

  3. 3

    パナマ文書で注目を浴びるオフショア市場、利用するのは悪くない?

    オフショアファンドやオフショア生命保険を利用する…

  4. 4

    ナチスの戦犯アイヒマンを裁く「世紀の裁判」TV放映の裏側

    2000年に日本でも公開されたイスラエル出身のエ…

  5. 5

    北海道新幹線は、採算が合わないことが分かっているのになぜ開通させたのか?

    〔ここに注目〕JR北海道の経営母体 北海道…

  6. 6

    拒食症、女性器切断......女性の恐怖・願望が写り込んだ世界

    写真は、とりわけ優れた写真家の写真は、音楽に非常…

  7. 7

    ロシアの新たな武力機関「国家親衛軍」はプーチンの親衛隊?

    4月5日、ロシアのプーチン大統領は、同国の武力機…

  8. 8

    危うし、美術館!(6):中国の検閲に加担した広島市現代美術館

    美術館をめぐる論考は、前回の「危うし、美術館!(…

  9. 9

    パナマ文書の嵐をやり過ごす共産党幹部の「保護傘」

    今から1年前、ある匿名の人物が一千万件を超すパナ…

  10. 10

    「パナマ文書」問題がアメリカでは大騒ぎにならない理由

    パナマの法律事務所モサック・フォンセカが作成…

  1. 1

    九州で強い地震相次ぐ、熊本で最大震度7 少なくとも9人死亡

    14日夜から九州地方で強い地震が相次ぎ、最初…

  2. 2

    韓国総選挙で与党大敗、朴政権の「レームダック化」指摘する声も

    13日投開票された韓国総選挙は、朴槿恵大統領…

  3. 3

    第1四半期の中国GDP伸び率、前年比+6.7% 予想と一致

    中国国家統計局が15日発表した第1・四半期の…

  4. 4

    アングル:中国人の爆買い担う「代購」、政府が取り締まり強化

    中国は、海外から発注された商品に対する税金を…

  5. 5

    日産自、セレナなど約72万台リコール バックドアの不具合で

  6. 6

    著名人巻き込む「パナマ文書」の衝撃、各国政府が調査開始

    租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律…

  7. 7

    北朝鮮、中距離弾道ミサイル発射に失敗、米軍も確認

    韓国の聯合ニュースによると、北朝鮮は「ムスダ…

  8. 8

    「パナマ文書」、中国当局が報道規制 記事削除や検索制限も

    パナマの法律事務所から機密の金融取引文書、い…

  9. 9

    監視委、クレディ・スイスにきょうにも処分勧告=関係筋

    証券取引等監視委員会は15日、クレディ・スイ…

  10. 10

    人民元の行き過ぎ望まず、成長率6.5―7%に自信=中国人民銀副総裁

    中国人民銀行(中央銀行)の易綱副総裁は、人民…

Book Lover’s Library
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

パックンが斬る、トランプ現象の行方【後編

STORIES ARCHIVE

  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月
  • 2015年12月
  • 2015年11月