主張
農地転用許可制度 改正であらためて問われる事務対応
改正農地法が4月1日に施行され、農地転用許可制度も改正された。一つは地方への権限移譲だ。農林水産大臣の許可をなくし、都道府県知事に農地転用の許可権限を一元化した(4ヘクタールを超える農地転用事案は農林水産大臣との協議が必要)。一定要件のもとに農林水産大臣が指定する市町村(指定市町村)の長に、都道府県知事と同様の権限を付加する仕組みも導入した。
指定市町村の制度は単に権限の移譲ではない。指定には、(1)優良農地の確保目標の設定(2)農地転用許可基準に従った適正運用(3)事務処理体制の整備が求められる。指定希望市町村にはより一層、農地の確保と有効利用への取り組みを期待したい。農業委員会も業務の適正実施のため、事務局体制の強化を含めた市町村長部局との連携が重要になる。
改正内容の二点目は、農地転用許可の事務手続きの変更だ。農地転用の許可に際しては、農業委員会が都道府県知事等に意見を送付することとし、30アールを超える農地について意見を述べる場合は、あらかじめ都道府県農業委員会ネットワーク機構(都道府県農業会議)の意見を聴かなければならないとした。30アール以下の農地転用事案は、聴くか、聴かないかは農業委員会の判断に委ねられている。
全国農業会議所では、農地転用許可制度の改正にあたり、30アール以下の農地転用事案について、農用地区域内農地や第一種農地などの優良農地は原則、農業委員会ネットワーク機構の意見を聴くとの方針を示している。地域の農地利用に影響を与えるケースが少なくないからだ。また、市町村内だけでなく広域的な観点に立って一定の目合わせの機能も重要と考える。
地方分権の推進のもとで、開発志向に偏ることなく地域経済の活性化と農地の確保・利用のバランスをいかにはかるか。農業委員会組織の農地転用許可事務への対応があらためて問われることになる。
[2016-4-15]