刑事専門弁護士の弁護士法人代表の岡野武志です。
昨日のドラマ発表報道の反響がすごすぎて、松本潤さんの人気を再認識しました。2016年は一度くらい「松潤すぎる弁護士」と呼ばれてみたいと密かに心の中で願っている、私は38歳のおじさんです。
ところで、ドラマのタイトルにもなっている「99.9%」。これは日本の刑事司法における有罪率を示しています。つまり、一度事件が起訴されてしまうと、どれだけ無実を訴えても「99.9%」の人が有罪になってしまうということです。
考えたら恐ろしいですね。
いったい実際に99.9%の有罪の壁を乗り越えたケースとは、どのような事件なのでしょう。
ちょうど昨日、とあるテレビ番組で私たちアトム法律事務所が実際に取り扱った「99.9%の有罪の壁を乗り越えた事例」が取り上げられ、ネット上でもたくさんの反響があったので、そちらをご紹介したいと思います。ご覧になられた方も多いのではないでしょうか?
〈詳しくはこちら〉
http://www.fujitv.co.jp/unb/contents/160225_1.html
当時事件を担当したのは、赤堀順一郎弁護士。今はアトム法律事務所から独立し在籍していませんが、非常に親身な弁護活動を行う頼りがいがある弁護士でした。
赤堀弁護士が取り扱ったガソリンスタンド冤罪事件。本ブログでも「99.9%の有罪の壁を乗り越えた事例」としてご紹介したいと思います。
1本の電話から始まった冤罪事件の弁護活動
2013年4月に、アトム法律事務所のウェブサイトを通じて「逮捕された夫の無実を証明してほしい」という1本の電話が入りました。
面談相談のあと、初回接見とその後の刑事弁護活動を主任弁護士として担当したのは、4か月前に入所したばかりの赤堀順一郎弁護士でした。
逮捕された夫Aさんの容疑は、車上荒らしによるクレジットカードの窃盗と、不正に入手した他人名義のクレジットカードを利用したガソリンの窃盗容疑でした。
初回接見後にAさんの無実を晴らす活動を開始
赤堀弁護士がAさんと接見したところによると、Aさんは他人名義のクレジットカードを利用して給油したことは一切なく無実だという話でした。
赤堀弁護士は、すぐさま取調べに対する完全黙秘と供述調書の作成拒否を指示し、アリバイ証拠を集める活動を始めることになりました。
赤堀弁護士は、事件の現場となったガソリンスタンドに足をはこびました。しかし、Aさんが逮捕される根拠となった防犯カメラの映像はすでに残っておらず、有力な手がかりを得ることはできませんでした。
捜査機関の証拠内容
捜査機関は、クレジットカードの利用履歴に基づき、犯人が不正に給油した時刻を午前5時39分と把握していました。
ガソリンスタンドの防犯カメラ映像に残った時刻表示から、これに最も近い時間帯(午前5時42分)に給油していたのがAさんだったのです。
必死の弁護活動もむなしく、Aさんは逮捕から42日目にガソリンの窃盗容疑で起訴されてしまいました。このとき、赤堀弁護士の脳裏に「99.9%」という高い有罪率がよぎりました。
アリバイ証拠の発見

すると、なんとガソリンスタンドから約6.4km先にある高速道路の入り口において、午前5時40分の利用履歴を確認できたのです。
この瞬間、ついにAさんのアリバイ証拠が赤堀弁護士の眼前に明らかになったのです。
その後、赤堀弁護士はガソリンスタンドの防犯カメラの表示時刻に約8分の遅れがあることを突き止めました。実際には、Aさんは午前5時34分に給油していたことになります。
さらに、赤堀弁護士はガソリンスタンドの本社と交渉を重ね、事件当日の売上げ記録の開示を受けることに成功しました。その中には、午前5時34分に現金で支払ったとするAさんの購入履歴があったのです。
公訴取り消し後の念願の釈放
赤堀弁護士は、検察官にこれらの無実を証明する数々の証拠があることを連絡した結果、検察官は裁判所に公訴取消し請求を行い、その日にAさんは釈放されました。
これで、Aさんの無実がようやく世間に知れることとなりました。Aさんは、逮捕から85日間を経て、ようやく家族と再会することができたのです。
99.9%の壁を見事に乗り越えた貴重な実例として、テレビ番組でも放送されたため、当ブログにおいてもご紹介させていただきました。