こんにちは、錠前(@jomae_yasushi)です。
『HUNTER×HUNTER』(以下、ハンター)連載がついに再開しましたね。早速朝の通勤電車で読み込んで、もう大興奮。相変わらずめちゃくちゃ面白いですね。たった1話だけで、仕事中もずっとハンターのことが頭の片隅にこびりついて離れないくらいの勢いで夢中にさせられちゃいました。
そこで今日は、何故ハンターがこんなに面白いのか、今回掲載された第350話を具体例として使いながら、考えてみたいと思います。
※この記事はネタバレを含みます
状況設定と人物配置が巧みすぎる!
まず、枠組みの設定とその中への人物の配置がバツグンに上手いです。今回掲載された350話を例にとってみます。
王位継承争いが本格化してゆく大国カキン。人類未踏の地・暗黒大陸を目指す船の中で、14人の王子の殺し合いが始まろうとしていました。次期国王の座は船旅の中で生き残ったたった一人に与えられます。表向きは平等に扱われる王子たちですが、そこには確かな序列が存在し、上位の王子は一定の財力や権力を背景に独自の軍隊を保有する一方、幼い王子までもが王位継承争いに巻き込まれていくのでした。
〔冨樫義博『HUNTER×HUNTER』より〕
まだ赤子の第14王子ワブルの母オイトは、王子のボディガードとしてプロハンター・クラピカを雇用します。クラピカは、カキン帝国の暗黒大陸進出を監視するようハンター協会から依頼を受け、船に潜り込もうとしていました。それは、過去に虐殺され奪われた一族の眼を、人体収集家の第4王子ツェリードニヒから取り戻したいという個人的な動機に基づいた依頼承諾なのでした。
複数の組織が異なるスタンスを表明、そこに帰属する個々人の立場もそれぞれが微妙なバランスで異なっていて、これから起こるであろう戦いを予見させるには十分です。
思惑が交差し、頭脳戦・心理戦が展開される
大陸踏破を目論むカキン帝国とそれに協力するハンター一派、カキンを阻みたい先進各国とその依頼を受けたハンター協会、王位を手中に収めんとする王子と生母たち、一族の無念を晴らすことを胸に誓うクラピカ……。
自らの目的を達成しようと画策する各人の利害はぶつかり合い、高度な頭脳戦・心理戦が展開されることは火を見るよりも明らかです。状況設定とキャラ配置の妙によって説得力を与えられたそれらの戦いは、想像するだにエキサイティング。単純にパワーとパワーがぶつかり合うだけの戦いとは異なり、複雑で確かな文脈のうえに展開される戦いには、心が動かされそうになるものです。
帰属集団の志向する方向性、さらには集団に内包される個人一人一人のレベルでの思惑が幾重にも交差する様相を眼前に、読者は誰と何がどうぶつかって結果どうなるのか…という青写真をいくつも脳内に描くことを余儀なくされ、知らず知らずのうちに物語世界にどっぷり浸かるくらい引き込まれてしまうのです。
やっぱり人間関係なのね
よしながふみさんの漫画がなぜ面白いのかを書いたこちらの記事でも言及しましたが、やはり別個の人格をもったキャラクターたちがそれぞれの意思・欲望に基づいて行動し互いに関係するとき、そこに生まれるドラマが人を魅了するのだと思います。
少なくとも私は、物語のテーマやディテールが何であれ、そういうドラマがきちんと生成された作品が好きだし、これからも読み続けたいと思います。(独立した意識としての人間にあまり興味のない人は、こういうドラマを面白く感じないのかもしれないですね。そういう方の意見も聞いてみたいです)
ハンターはこのようなドラマ生成をかなり高いレベルで行っていて、だから誰がどこで何をしていようが、安定した面白さがあるんですよね。
ゴンのことはそこまで好きになれないかも?
私が異様なまでにハンターに夢中になる理由は、おおむねこんなところでしょうか。
巧みな状況設定とキャラ配置、そこから当然の帰結として導き出されるエキサイティングな知的バトルの数々。クラピカやキルアあたりの知略系キャラの人気が高いのは、ルックスのせいだけではないような気がします。
初出のキャラでも知略的オーラむんむんで己の欲望を実現するための頭脳戦を展開してくれると、ぐいっと引き込まれて一気にそのキャラのことを好きになってしまいます。第350話のオイトも、まさにその典型でした。
〔冨樫義博『HUNTER×HUNTER』より〕
この漫画のキャラの魅力というのは、そういうところから湧き上がっているものなのだと思います。
だから正直、主人公のゴンがメインのパートはあまりテンションが上がらないというか、面白くって大興奮!とはなれないことが多いです(ゴンは細やかな知略戦を繰り広げるタイプではない)。主人公はあえてそういうタイプにしてるんですかね…?
物語の読み解き方を学びたいです
余談ですが、漫画や映画の感想を書こうとするたび、己の知識の乏しさや考察の浅薄さが悔しくてぐぎぎ…となること山のごとしなので、きちんと体系的にお勉強をしてみたいと思っています。手始めに『物語の法則』という書籍をポチってみました。ハリウッドの脚本を添削する立場の人が書いた本です。いずれその内容についても記事を書ければと思います。
そんなわけで、物語を解釈するための知識に対して貪欲になっていますわたくし。時代や洋の東西を問わず、これを読むといいよ~!という書籍や記事があれば、ご教示いただけると嬉しいです。ホント、学生時代にもっと真面目に勉強しておけばよかったな~…と今頃になって後悔しています。後悔先に立たず。
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以上、ハンターの面白さについてつらつらと愚考を書きなぐってみましたが、理屈抜きに面白く、漫画特有の興奮や高揚感を味わえることは間違いない作品なので、未読の方はぜひ読んでみてください。他のどんな作品を差し置いてでも読む価値のある漫画だと私は思っています。
それでは今日はこのへんで。
さよ~
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