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熊本地震と東北太平洋沖地震等を比べてみてわかったこと【2016年4月18日時点】

科学
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はじめに

「東北地震と熊本地震の違い」という検索ワードで拙ブログを訪れて下さった方がいました.2016年4月15日のエントリでマグニチュードと震度についてごく簡単にまとめた中に,震度7が観測された国内4つの地震のマグニチュードを記載しました.でも,それ以外には何も書いてないのできっと知りたい情報はなかったものと思われます.

 

browncapuchin.hatenablog.com

 

そこで,本エントリでは執筆時点における熊本地震の傾向を,東北太平洋沖地震(2011年3月11日に東日本大震災を引き起こした地震)および1995年以降,日本で震度7が観測されたほかの2つの地震も含め,比べてみました.

 

熊本地震と東北太平洋沖地震は地震のメカニズムが違う

◆熊本地震(本震および余震)の震源は九州の内陸部です.

熊本地震は,下の図の大陸プレート(内陸地殻)内地震に該当します.「大陸プレート内に力が加わることによって生じる地震」とのことです.

プレートとは地球の表層にある硬い板のような岩盤のことをいいます.この岩盤は動いており,プレート同士で押し合っています.このため,プレート内部には力が加わっていて「ゆがみ・ひずみ」が溜まっています.溜まった力に岩盤が耐えきれなくなると新たな断層ができたり,これまでにできた断層が動いたりして大地が揺れるのだそうです.

大陸プレート内に力が加わることによって生じる大陸プレート(内陸地殻)内地震は,内陸型地震とか直下型地震,あるいは陸域の浅い地震と呼ばれるタイプの地震です.
オレンジの×印で発生した地震がそうです.

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(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E9%9C%87#/media/File:Types_of_earthquakes_ja.pngを一部改変)



◆東北から関東にかけての本州太平洋側には太平洋プレートと呼ばれる海洋プレートがあります.

太平洋プレートは東北地方が乗っている陸プレートと接しています.

でも,ただ接しているわけではなく,太平洋プレートは図の白い矢印の方向(本州側)に移動し,日本海溝に沈み込んでいます.沈み込むときに,大陸プレートも一緒に引きずり込みます.しかし,大陸プレートはいつまでも引きずられているわけではありません.

大陸プレートは,海洋プレートの沈み込みに引きずられるのに耐えられなくなると跳ね上がります.

東北地方が乗っている大陸プレートが跳ね上げられるようにして起こったのが東北地方太平洋地震
(参照:気象庁 | 地震発生のしくみ)です.

図のプレート境界型地震とされているものです.

図の白枠の中の×で発生した地震がそうです.


熊本地震は内陸型地震,東北太平洋地震はプレート境界型地震
なのです.

両者の地震のメカニズムの違いを反映してのことと思いますが,熊本地震によって発生した地震の震度と回数を示した図では,比較対象として内陸型地震である1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)や2004年の新潟県中越地震を例にあげています(気象庁発表資料http://www.jma.go.jp/jma/press/1604/16g/kaisetsu201604161530.pdfのp.4を参照ください).

 

熊本地震は震源が浅い傾向にある,のかもしれない

熊本地震と東北太平洋沖地震は,地震のメカニズムが異なるので比較することにあまり意味はないかもしれません.

そこで,1995年の兵庫県南部地震以後の大地震の震源地,マグニチュード,最大震度,震源の深さをあげておきます(東北太平洋沖地震のみモーメントマグニチュードを記載).

1995年1月  兵庫県南部地震  M7.3 震度7 震源の深さ16km
2004年10月新潟県中越地震  M6.8 震度7 震源の深さ13.1km
2016年4月  熊本地震     M7.3 震度6強 震源の深さ12km
2011年3月  東北太平洋沖地震 M9.0 震度7 震源の深さ24km(参考)


熊本地震で発生した震度5弱以上の地震についてのデータはこちらです(熊本地震 (2016年) - Wikipedia).それによると,2016年4月14日21時26分頃〜16日16時2分頃までに発生した震度5弱以上の地震は14回

そのうち,震源の深さが
10km:9回
11km:1回
12km:1回
20km:2回
ごく浅い:1回,でした.

ごく浅いを0kmとすれば,
熊本地震の震源の深さの平均は10.9kmです.

この結果を他の内陸型地震と比較したいのですが,兵庫県南部地震では震度5弱以上の余震が観測されていません(http://www.jishin.go.jp/main/chousa/95dechy/p02.htm).

そこで,新潟県中越地震と比較してみます.

新潟県中越地震では,震度5強の地震が本震含め約5週間の間に20回発生しています(気象庁|震度データベース検索にて地震の発生日時を2004年10月23日〜2004年11月30日,最大震度5弱以上に指定).

震源の深さは0km〜48km,
新潟中越地震の震源の深さの平均は12.95kmです.

現時点での比較は禁物なのですが,熊本地震はもしかしたら震源の深さがより浅いタイプの地震なのかもしれません.なお,マグニチュードと地盤の性質が同じなら,震源が浅いほうが地表の揺れは大きくなります.

震度5弱以上の余震の回数が多いように思うけど

昨日(2016年4月17日)のニュースで,熊本地震では震度5弱以上の余震が14回も起きている,と言ってました.

ニュースの影響かもしれませんが,熊本地震は強い余震がとても多い印象があります.

そこで,同じ内陸型地震である新潟中越地震と熊本地震について,どちらも本震あるいは発端となった地震から約48時間以内に発生した震度5弱以上の地震を比較してみました.

 

熊本地震のデータの出典はこちらです(熊本地震 (2016年) - Wikipedia),
新潟中越地震のデータの出典はこちらです(気象庁|震度データベース検索にて地震の発生日時を2004年10月23日〜2004年11月30日,最大震度5弱以上に指定)

 

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地震発生から約2日以内に限ると
熊本では震度6弱以上の地震が7回も発生しています.

なお,東北太平洋沖地震の本震・余震データはこちらになります(http://www.data.jma.go.jp/s

 

vd/eqev/data/2011_03_11_tohoku/i5.pdf).これによれば,本震発生2日以内の震度5弱以上の余震は,5弱が11回,5強が2回,6強が1回でした.

少なくとも,地震発生から2日以内に震度6弱以上の強い揺れをもたらす余震は,これまでの巨大地震より多かったと考えてもさしつかえないかもしれません.


熊本では,4月17日以降は震度5弱以上の地震はないようです(4月18日17:36現在).

とはいえ,余震の心配は尽きません.新潟中越地震では,本震から2ヶ月後たっても震度5弱の余震が発生しました.

1日も早く地震が終息することを願っています.

ではまた・・・