怖い まだ帰れない 避難場所閉鎖に困惑
16日未明に起きたマグニチュード7.3の「本震」は、ダメージを受けていた熊本の街をさらに傷つけた。多くの人が亡くなり、行方不明者の捜索が続いている。週明けの18日、行政や企業、大学が活動を再開し、被災者が避難先から追われる事態も出ている。交通網の寸断で物資の供給や通勤が滞り、熊本県八代市は損壊した市役所からの移転を始めるなど、社会活動への打撃は大きい。
熊本県立大が避難場所閉鎖
熊本地震で被災した住民らが一時1000人以上が避難していた熊本県立大(熊本市東区、五百旗頭<いおきべ>真理事長)が18日正午で、「指定緊急避難場所」を閉鎖した。熊本市は同大を一時的な「避難場所」としているが、長期滞在が可能な「避難所」には指定していない。大学側は「講義再開の準備のため閉鎖はやむをえない」としているが、震度6強の地震からわずか2日後の閉鎖に多くの住民が困惑。17日夜以降、多くが近くの避難所などに移転したとみられるが、18日正午現在約20人が残っている。
災害対策基本法などによると、災害時に住民が避難する場所には、一時的な避難を想定した「避難場所」と長期滞在する「避難所」の2種類があり、一部は避難場所から避難所に移行することもできる。市は2013年、同大と指定緊急避難場所として利用する協定を結んだが、避難所に移行できる対象にはしていない。
同大は14日深夜の地震以降、大学の体育館やロビーなどを避難場所として提供し、19日まで休講を決めた。当初は学生や周辺住民ら約300人が避難し、16日未明の強い揺れを受け、一時1000人以上が滞在した。
避難場所の運営は、学生がボランティアで担当し、食糧配布や部屋の見回りなどを実施。高齢者や障害者に配慮して部屋を分けるなどの工夫もしてきた。しかし、講義再開の準備が必要なことや、避難場所を運営する学生の負担が大きいため大学が閉鎖を決めた。同大の仁木徳子事務局長は「大学だけで避難所を運営するには限界もある。事情を理解してほしい」としている。
東区の無職、川瀬さおりさん(44)は「余震も怖くて帰れない。ずっと避難できると思っていた。どうしていいかわからない」と話している。
同市危機管理防災総室は「避難場所の閉鎖は聞いていない。長く運営してもらいたいが、市の判断だけで運営できる市立小中学校などと違い、県立大学なので継続か閉鎖かなどの判断は任せざるを得ない」としている。【山本愛】