【 非常用発電設備法定点検 】
非常用発電機の機能を維持し、非常時に適切に運転させるには、保守管理を適切に行わなければいけません。
発電機の保守点検は、建築基準法、消防法、電気事業法によって規定されていますので、これに準拠しつつメーカーが示す必要な点検・修繕を行う必要があります。
建築基準法による規定
建築基準法では「建築士」「建築設備点検資格者」により、6 ヶ月~ 1 年の周期で点検を
行い、特定行政庁への報告が必要です。
外観、性能の確認を行います。
定期報告違反をした場合、罰金を課せられることがあります。
消防法による規定
消防法では、「消防設備士」「消防設備点検資格者」により、特定防火対象物の場合1 年周期、それ以外の場合は3 年周期で点検を行い、点検結果報告書と点検表を作成しなければいけません。
点検報告違反をした場合、同様に罰金を課せられることがあります。
電気事業法による規定
電気事業法では、非常用発電機を設置するものが、電気主任技術者が作成する保安規定に準じて点検を行います。
一般的には、建築基準法や消防法、または変電設備の点検に合わせ、1 年に1 回程度の点検に含むこととします。
電気設備を適正に運用するための点検なので、日常点検、定期点検、精密点検を実施し、異常がないことを確認しながら使用することになります。
保安規定違反をした場合は、経済産業省より技術基準適合命令が罰則として課せられるおそれがあります。
【 非常用電源設備の法令点検に関する罰則規定 】
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電気事業法 |
技術基準に適合していないと認められる発電設備の設置者
(電気事業法 第40 条) 技術基準への適合 又は 使用制限 |
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建築基準法 |
検査報告をしない者 又は 虚偽の報告をした者
(建築基準法 第101 条) 100 万円以下の罰金 |
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消防法 |
・点検報告をしない者 又は 虚偽の報告をした者
(消防法 第44 条 第11 号) ・上記従業者等の法人 (消防法 第45 条 3 号) 100 万円以下の罰金 又は 拘留 |
※消防法では施設管理者のみならず、建物の所有者、オーナーにも刑事罰が課せられます。
「新宿歌舞伎町ビル火災」以降、各種法令が強化
(総務省消防庁・違反是正センター、新宿歌舞伎町雑居ビル火災にて) (「平成14年消防白書」引用)
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違反是正の徹底
消防署による立入検査の時間制限撤廃や、措置命令発動時の公表、建物の使用禁止命令、刑事告発などの積極発動により違反是正を徹底することとした。
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罰則の強化
違反者の罰則は、従来の「懲役1年以下・罰金50 万円以下」から「懲役3 年以下・罰金300 万円以下」に引き上げられた。
また、法人の罰則も、従来の「罰金50 万円以下」から「罰金1 億円以下」に引き上げられた。
〈両罰規定〉
従業者(法人の代表者、法人の代理人、法人の使用人、人の代理人又は人の使用人など)が、事業主(法人又は人)の業務について違反行為を行った場合、違反行為をした従業者を罰するとともに、事業主も罰することを定める規定です。
直接の行為者でない事業主が罰せられる理由は、事業主に従業員の選任、監督などについての過失があったと推定されるためです。
なお、事業主は、必要な注意を尽くしていたことを証明できないかぎり罰せられることになります。
(消防法 第45 条)
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防火管理の徹底
防火対象物点検報告制度が創設され、年1回は有資格者(防火対象物点検資格者)による入念な点検と報告が義務づけられました。
【 消防法令強化 改正履歴と経緯 】
【 消防法における非常用発電設備に関する法令の強化履歴 】
消防法(昭和23 年7 月24 日 法律 第186 号)は、「火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害に困る被害を軽減し、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資すること」(1 条)を目的とする法律である。
昭和36 年消防法施行令の制定により、消防用設備等の規制が全国的に制度化されました。
しかし、その維持管理については明確な基準がありませんでした。
こうした中、昭和47 年の千日デパート(死者118 名・負傷者81 名)、昭和48 年の大洋デパート火災(103 名が死亡、124 人が重軽傷)等の大惨事が起きました。
これら災害拡大の原因のひとつとして、消防用設備等の機能不良や管理不適等による使用不能などの自主管理の不備が指摘されました。
そして、消防用設備等の保守の徹底を期するため、点検報告制度が法律化され、昭和50 年4 月1日から施行されました。(消防法 第17 条の3 の3)
現状
平成23 年東日本大震災において多くの非常用発電機が正常に作動しませんでした。
平成7 年阪神・淡路大震災の際にも20% 以上の非常用発電機が正常に作動しませんでした。
このような現状を受け、消防庁を中心に点検基準の強化等の検討会が行われています。
南海トラフ巨大地震・首都直下型地震等の対応した
消防用設備等のあり方に関する検討部会
老朽化した自家発電設備・消化ポンプ等への対応
●自家発電設備
「年に1 回総合点検の際に30% 以上の負荷運転を行う」とする点検を「設置後30 年を経たものに対して行う点検として定格負荷で60 分運転して異常がないこと」と強化する検討。
(平成25 年度検討)
●自家発電設備
長時間設置されると、シリンダー内にスス等の汚損が溜まることから、分解点検や高負荷運転により機能を確認する必要がある。
設置後30 ~ 40 年程度の長期間を経過したものについては、点検を行うことが望ましいが、点検を行うべき時期について十分なデータが得られていない。
一方、高負荷運転については、大型の疑似負荷装置を要する場合があり、また、営業時間中の長時間の点検は困難であるといった指摘もある。
また、分解点検については、分解のためのクレーンの手配や、分解するためのスペースの確保が困難であるといった指摘もある。
点検に係る負担にかんがみ、今後、点検を行うべき時期についての調査分析を行い、結果が得られ次第、点検基準の強化を図ることが考えられる。
消防用設備等は火災時に重要な役割を果たすものであり、その劣化対策に関しては、関係団体と連携して、各消防設備等の経年劣化、事故等の状況を十分調査するとともにその状況を踏まえた、点検基準のあり方について具体的な検討を進める必要がある。
(平成25 年度検討)
【 消防法における罰則規定一覧(予防分野) 】
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消防法に基づく法令に違反した者に対する罰則規定
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・防火対象物に対する措置命令に違反した者 (使用禁止・停止・制限等、第5 条の2 項違反)※1 |
第39 条の2 の2 3 年以下の懲役 又は 300 万円以下の罰金 |
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・防火対象物に対する措置命令に違反した者 (改修、移転、除去等、第5 条1 項違反)※1 |
第39 条の3 の2 2 年以下の懲役 又は 300 万円以下の罰金 |
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・防火対象物に対する措置命令に違反した者 (第5 条の3 第1 項違反)※3 |
第41 条 1 年以下の懲役 又は 100 万円以下の罰金 |
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・防火管理業務適正執行命令に違反した者 (第8 条第4 項違反)※3 ・防災管理業務適正執行命令に違反した者 (第36 条第1 項において準用する第8 条第5 項違反) |
第41 条 1 年以下の懲役 又は 100 万円以下の罰金 |
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・消防用設備又は特殊消防用設備等の設置命令に違 反した者 (第17 条の4 第1 項違反)※2 |
第41 条 1 年以下の懲役 又は 100 万円以下の罰金 |
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・防火管理者選任命令に違反した者 (第8 条第3 項違反)※3 ・防災管理者選任命令に違反した者 (第36 条第1 項において準用する第8 条第3 項違反)※3 |
第42 条 6 月以下の懲役 又は 50 万円以下の罰金 |
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・屋外の火災予防措置命令に違反した者 (第3 条第1 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・立入検査を拒否等した者 (第3 条第1 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・防火対象物の特例認定の表示に係る虚偽表示除去・消印命令に違反した者 (第8 条の2 の3 第8 項において準用する第8 条2の2 第4 項違反) ・防災管理点検の表示に係る虚偽表示除去・消印命令に違反した者 (第36 条第1 項において準用する第8 条の2 の2第4 項違反) ・防火対象物点検の表示及び管理点検の表示に係る虚偽表示除去・消印命令に違反した者 (第36 条第5 項において準用する第8 条の2 の2第4 項違反) |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・消防用設備等又は特殊消防用設備の維持命令に違反した者 (第17 条の4 第2 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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消防法の規定に違反した者に対する直接の罰則規定
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・防火対象物点検の表示に係る虚偽表示をした者 (第8 条の2 の2 第3 項違反)※3 ・防災管理点検の表示に係る虚偽表示をした者 (第36 条第1 項において準用する第8 条の2 の2第3 項違反)※3 ・防火対象点検及び防災管理点検の表示に係る虚偽表示をした者 (第36 条第5 項において準用する第8 条の2 の2第3 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・防火対象物点検の特例認定の表示に係る虚偽表示をした者 (第8 条の2 の3 第8 項に「おいて準用する第8 条の2 の2 第3 項違反)※3 ・防災管理点検の特例認定の表示に係る虚偽表示をした者 (第36 条第1 項において準用する第8 条の2 の2第4 項違反)※3 ・防火対象点検の特例認定及び防災管理点検の特例認定の表示に係る虚偽表示をした者 (第36 条第5 項において準用する第8 条の2 の2第3 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・防火対象物品の表示違反 (第8 条の3 第3 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・消防用設備等又は特殊消防用設備等の検査受忍義務に違反した者 (第17 条の3 第2 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・防火管理者選任届出義務に違反した者 (第8 条の2 項違反) ・防災管理者選任届出義務に違反した者 (第36 条第1 項において準用する第8 条第2 項違反) |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・圧縮アセチレンガス等の貯蔵又は取扱届出義務に違反した者 (第9 条の3 第1 項(第2 項において準用)違反) |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・消防設備士の工事整備対象設備等の着工届出義務に違反した者 (第17 条の14 違反) |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・防火対象物点検報告義務に違反した者 (第8 条の2 の2 第1 項違反)※3 ・防災管理点検報告義務に違反した者 (第36 条第1 項において準用する第8 条の2 の2第1 項違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・消防設備等又は特殊消防用設備等設置届出義務に違反した者 (第17 条の3 の2 違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・消防設備等又は特殊消防用設備等設置届出義務に違反した者 (第17 条の3 の3 違反)※3 |
第44 条第1 項 30 万円以下の罰金 又は 拘留 |
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・防火対象物点検の特殊認定を受けた防火対象物の管理について、権限を有する者に変更があった場合の第8 条の2 の3 第5 項による届出を怠った、当該変更前の権限を有する者 |
第46 条の6 5 万円以下の過料 |
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・防災管理点検の特殊認定を受けた防火対象物の管理について、権限を有する者に変更があった場合の第8 条の2 の3 第5 項による届出を怠った、当該変更前の権限を有する者 |
第46 条の6 5 万円以下の過料 |
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・総理大臣の認定を受けた特殊消防用設備等又は設備等設置維持計画について軽微な変更をした場合の第17 条の2 の3 による届出を怠った、当該変更前の権限を有する者 |
第46 条の6 5 万円以下の過料 |
(注1)
※1 ~ 3 については、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第45 条各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各条文の罰金刑を課する。
※2 … 3,000 万円以下の罰金
※3 … 各条文の罰金
(注2)
共同防火管理協議事項作成命令(第8 条の2 第3 項)及び共同防災管理協議事項作成命令(第36条第1 項において準用する第8 条の2 第3 項)については、罰則規定なし。