『スポットライト 世紀のスクープ』:多くを物語る、カトリック教会の性的虐待の暴露
Joanne Laurier
2015年12月3日
トム・マッカーシー、監督; マッカーシー、ジョシュ・シンガー、脚本
トム・マッカーシーの『スポットライト 世紀のスクープ』は、ボストン地域のカトリック教会神父による児童の性的虐待蔓延をボストン グローブが2002年、画期的暴露したものを記録する、張りつめた、準政治スリラーだ。
‘『スポットライト 世紀のスクープ』’という題名は、70人以上の地元神父が行った虐待を、教会幹部連中が長期間の組織的隠蔽を明らかにした新聞社の四人の調査グループを意味している。最近ニューヨーク・タイムズに買収されたグローブは、この報道で2003年のピューリッツァー賞を獲得した。
『スポットライト 世紀のスクープ』のレイチェル・マクアダムス、マイケル・キートンとマーク・ラファロ
マッカーシーの映画『スポットライト 世紀のスクープ』チームは、無遠慮な編集者ウォルター“ロビー”ロビンソン(マイケル・キートン)、記者サーシャ・ファイファー (レイチェル・マクアダムス)と、マイケル・レゼンデス(マーク・ラファロ)と、データ分析担当マット・キャロル(ブライアン・ダーシー・ ジェームズ)で構成されている。
『スポットライト 世紀のスクープ』は、その虐待実績が、調査を開始させる要素となった連続小児性愛者、ジョン・ゲーガン神父が、ボストン警察署から自由人として出てくる短い場面で始まる。(30年間の経歴で、ゲーガンは、少なくとも130人の子どもに淫行をはたらいた。) ボストン人ではなく、カトリック教徒でもないグローブの新編集長マーティ・バロン (リーヴ・シュレイバー)が『スポットライト 世紀のスクープ』チームに、神父による性的虐待の調査を開始するよう推進する。
抵抗するベン・ブラッドリー・Jr.編集長(ジョン・スラタリー)が、53パーセントの新聞購読者はカトリック教徒であると指摘する。しかも大司教区は、恐るべきバーナード・ロー枢機卿(レン・キャリオー)が率いる、強力なボストンの組織だ。
スタンリー・トゥッチ
だがバロン以外にも、他の“部外者”はいる。その一人が、神父虐待者に裁きを受けさせようとして、うまく行かずに苦闘しているアルメニア系の集団訴訟弁護士、ミッチェル・ガラベディアン(スタンリー・トゥッチ)だ。(“この街 … ヤンキーと、アイルランド人は、それ以外の我々を、町に所属していな気分にさせている。連中とて、我々と変わらない。子どもの扱い方を見なさい。いいかい、レゼンデス、子どもを育てるのに、村中が総掛かりになる必要があるなら、子どもの虐待にも村中が必要なんだ。”)
ボストン支配体制内部で、教会のために謝り、擁護しようとする人々を捜すのはたやすいことだ。ロビーのゴルフ仲間の一人、ジム・サリバン(ジェイミー・シェリダン)は、教会の相談役で、もう一人の親しい仲間、ピーター・コンリー(ポール・ガイルフォイルが演じる)は 教会の親善大使だ。後者は『スポットライト 世紀のスクープ』のチーフにこう言う。 “マーティ・バロンは、彼自身の狙いを持ったユダヤ人だ。奴はここの人間ではなく、いつでも立ち去れる。君は、ところが ...” 微妙な公文書は、決まったように政府書類から紛失する。
ポール・ガイルフォイルとマイケル・キートン
グローブの元々の2002年1月の暴露記事は、教会による必死の隠蔽工作に注目していた。“過去数カ月間のインタビューで、示談に関わった弁護士が、教会の主要目標は明白だ-どんな代償を払っても不祥事が公になるのを防ぐことだと述べた。
“教会の戦略に通じているある検察官は、大司教区は、犠牲者に公表したり、裁判沙汰にしたりさせないようするのに実に熱心で、奇怪な主張までしたと語った。”
調査妨害と、教会幹部や、教会支持者による言い抜けによる障害に加え、9/11の出来事で、チームの調査は一時棚上げにされた。
最終的に、「聖職者による虐待被害者ネットワーク」(SNAP)の支援を得て、ジャーナリストが勝利する(“神父があなたに注目していれば、それは重大事だ”とメンバーの一人が言う。“。神に対して、一体どうやって、いいえと言うのだろう?”).
調査担当者にとって貴重な支援となるのは、元神父で、現在は心理療法士のリチャード・サイプ(リチャード・ジェンキンスの電話の声)だ。彼は性犯罪者神父に関する専門家で、連中は貧しく弱い人々の中から犠牲者を捜そうとすると説明する。サイプは、彼の調査が、教会神父の少なくとも6パーセントが、犯罪者であることを示していると言って、ジャーナリストに衝撃を与える(“認識可能な精神医学的現象”).
教会の腐敗と悪行の深さと規模が、グローブや、『スポットライト 世紀のスクープ』著者たちのあらゆる当初のためらいに打ち勝ち、事実をあばくため、彼らの多くはカトリック信仰を放棄した。
マッカーシーの『スポットライト 世紀のスクープ』はウォーターゲート・スキャンダルに関する『大統領の陰謀』(1976年)や、タバコ産業を暴露する『インサイダー』(1999年)の伝統につながる、止められない勢いのある思わず引き込まれる作品だ。アメリカ映画産業として素晴らしい作品だ。『スポットライト 世紀のスクープ』の出現はハリウッドのスキャンダル暴露能力が完全に放棄されたり忘れ去られたりしていないことを示唆している。
これまでの貴重な仕事に、『ステーション・エージェント』(2003)や『扉をたたく人』(2007)や『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』(2011)がある監督は、プロジェクトに心から献身的な強く結びついたアンサンブル・キャストをまとめあげた鋭敏な職人だ。キートンとラファロは魅力的で、トゥッチは、高貴で、献身的で、教会の人的巻き添え被害を容赦なく暴く担当者として特に傑出している。
俳優から監督に転じた、マッカーシーは、偉大な視覚的スタイリストとはいえず、『スポットライト 世紀のスクープ』は多少ありきたりで、単調な感がある。何よりも、映画を効果的にしているのは、演技と俳優同士の相性だ。更に、理性的な映画『スポットライト 世紀のスクープ』は、アニメや特殊効果が支配的な業界で際立っている。
映画の強みの一つは、カトリック教会の階層制が、ボストンの政治的、社会的構造の不可欠な要素であることを示している点だ。教会は、労働者階級国民を服従させ、抑圧するイデオロギー的かなめの一つとして機能している。
性的虐待スキャンダルは、決してボストン地区独自のものではない。映画の後書きで、神父による性的虐待が発覚したアメリカや世界中の何百もの都市のリストが示される。
虐待の組織的な性格に関し、WSWSは2002年にこう書いた。“聖職者メンバーによる性的虐待を巡る危機は、制度としてのカトリック教会の、心底から反動的で時代錯誤的な性格を明確に示している。腐敗して偽善的なぜいたくな暮らしをする幹部連中が罪と悪について説教し、産児制限と堕胎に反対し、同性愛を痛烈に非難し、検閲や知的抑圧を熱烈に擁護し、世界中で権力者と組んで、大抵は何千万人もの人々の人生を惨めなものにしている。
“性的虐待の痛み、危機、犠牲者の苦悩、神父の悲惨や性機能障害、教会幹部の無神経さといったあらゆる点が、慣習と信仰が、人間の基本的欲求に矛盾していて、必然的に、最も不健康な心理的-性的雰囲気を生み出す病んでいる組織であることを示している。カトリック教会の本質的存在が、現代社会と相いれないのだ。”
カトリック教会報道当時、ボストン・グローブは、は素晴らしかった。いくつかのインタビューで、マッカーシー監督は、進みつつある新聞の終焉と、それに伴うインターネットの隆盛を嘆いている。
彼の昔かたぎのリベラリズムから、監督はいくつかのことを無視している。もしマッカーシーが、なぜ人々、特に若者が、ボストン・グローブやニューヨーク・タイムズのようなマスコミに背を向けつつあるのかを知りたければ、『スポットライト 世紀のスクープ』で触れられた“他の”重要な出来事のマスコミ報道、2001年9月11日、テロ攻撃と、それに関連した出来事を考えるだけで良い。アメリカ・マスコミは、9/11自爆攻撃を真面目に調査することを拒否し、中東や他の場所での戦争、膨大なNSAスパイ、警官による殺人や、国民に対するあらゆる陰謀や攻撃を、とめどなく正当化している。主要新聞社やテレビ局は事実上、ペンタゴンとCIAの延長になっている。
清廉潔白な記者は、主要マスコミでは実にまれで、通常、政治的に最も微妙な話題で仕事をするよう派遣されることはない。ともあれ『スポットライト 世紀のスクープ』は単刀直入で面白く、魅惑的な演技で駆り立てられる映画だ。
記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2015/12/03/spot-n03.html
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通った幼稚園、確かプロテスタントだった。周囲の子どもも大半同じ幼稚園だった。賛美歌を歌ったり、クリスマスを祝ったりしたことをかすかに覚えている。歌の断片ならまだ覚えている。とはいえ、素朴な祖先崇拝以外、全く宗教心皆無。仏壇に水、お茶、線香、ろうそくを備えておわり。墓参りには行く。ということで、宗教組織に関する個人的な興味は皆無。
『宗教消滅 資本主義は宗教と心中する』島田裕巳著を再読。全く宗教界を知らないので驚くことばかり。あの映画「禁じられた遊び」宗教(カトリック)が主題だったというのにびっくり。本では触れられていないが、試写会で見た「汚れなき悪戯」もそうだったろう。
良い映画のようなので、公開にあわせ?記事を思い出し翻訳。まだ見ていない。
九州地震、20万人もの方々が避難しておられるという。自動車で夜を過ごした方々は本震からは救われたのだろうが、エコノミー症候群が心配。
テレビ報道を見ていると、南海トラフ地震と関係がありますか、とアナウンサーが専門家に質問していた。「現場から離れる」という考え方もあると、専門家がおっしゃっている。『南海トラフ地震』200ページに「地震が怖ければ海外にゆく」という見出しがあった。今の不気味なひろがりように、ますます霧島噴火を扱った『死都日本』を思い出している。
「日奈久断層帯では、活動が南西側に動いている」とニュースでいった気がする。日奈久断層帯とは違う市来断層帯というものの近くにあるのが九州電力川内原発だというが、本当に大丈夫だろうか。何が先手だろう?先手をうつなら、原発停止だろうに。わざわざ事故を待っている自爆テロ国家に思えてくる。
孫崎享氏のtwitterにびっくり。戦争法案懐柔宣伝が本当の狙いだろう。宗主国軍の任務は侵略戦争・占領。自然災害支援ではない。もし、力が足りないために助けを頼んだのなら、オリンピックは返上だろう。
米軍支援、米軍星条旗新聞、「匿名条件の米国官僚によれば、日本政府が国務省に支援要請した」匿名そりゃそう。恥ずかしい事なんだから。世界で震災に見舞わる国は多いけど、米軍に助けて頂戴と災害国側から言う国ってそうないんじゃない。先ずは自力で頑張る。それでも支援をすると言ったら考える。
まともな国でも、まともな支配者でもなく恥ずかしい傀儡。ニュースを見ると、惨事をオスプレイ宣伝に使うのだ。選挙で勝つためなら、何でもする。
中谷元防衛相は17日夜、熊本地震の被災地支援に関し、在日米軍が海兵隊所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイで18日から救援物資を輸送すると発表した。防衛省で記者団に語った。
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