冷静な対応で余計な出費を避ける!トラブル時の『内容証明』書き方出し方重要ポイント

手紙を送ったのに、相手から「もらってない」と言われたこと、あるいは「もらったけど、あなたが言うようなことは手紙に書かれていない」と言われたことはありませんか?
今でこそ電子メールやSNSでやり取りをすることが増えてきましたが、何かトラブルが起きたとき、重要なメッセージを伝える場合は文書で送ることも少なくありません。
そのような時、上のような返事が返ってきたらとても困りますよね。
特に裁判沙汰になれば、どのような文書をいつ送ったかが重要なテーマになることがあり、それについて証明するものがないと、最悪負けてしまうこともあります。
内容証明郵便とは、そのような争いを生まないよう、その名の通りまさに文書の「内容」を証明する制度です。
しかし、この内容証明、言葉は聞いたことがある方も多いと思いますが、具体的にどのような制度なのか、どのような場合に必要なのか、どうやって出すのか、といったことはあまり知られていません。
しかし、法律関係のトラブルにおいては、この内容証明は場合によっては非常に大きな効果をもたらし、うまく行けばこれだけでトラブルが解決する場合も少なくありませんので、利用しない手はありません。
本稿では、こうした内容証明郵便がどのようなものかを説明し、どのような場合に必要なのか、そしてどのように書いて、どのように出せば良いのか、重要なポイントを解説していきます。
このポイントを抑え、上手く内容証明を活用し、効率よく、スピーディーにトラブルを解決していきましょう。
目次
1 内容証明とは
1-1 概要
内容証明とは、一言でいえば、「どのような内容の文書を」「いつ郵送したか」が公に証明されることで、こうした証明がなされる郵便物を「内容証明郵便」と言います。
当たり前の話ですが、郵便局は日々膨大な郵便物を短時間で処理して送り届けなければなりませんので、いちいち届けられた手紙やハガキをコピーして保管しているわけではありません。
ですから、手紙やハガキを送っただけでは、書かれている内容はおろか、そのような郵便物を送ったという事実すら、公的に証明されるわけではありません。
しかし、内容証明郵便は、郵便局に文書の控えが保管されるので、まさに書かれている内容と、誰にいつ送ったのかを証明することができるのです。
1-2 配達証明とどう違うのか
似たような制度に、「配達証明」という制度があります。
配達証明も、その名の通り、郵便物が相手に「配達」されたことが「証明」される制度です。
内容証明と違うのは、「相手に配達されたこと」と「その日付」が証明されることであり、文書の内容や発送した日付までは証明されないことです。
1-3 内容証明は配達証明とセットで
内容証明と配達証明の特徴をまとめると以下の通りとなります。
(1)内容証明で証明できること
- 文書を送ったこと
- その文書に書かれている内容
- 送った日付
(2)配達証明で証明できること
- 相手がその文書を受け取ったこと
- 相手に届けられた日付
この通り、実は内容証明だけでは、実際に相手に文書が届けられたことまでは証明されませんので、不十分です。
内容証明郵便を出す場合は、この配達証明もセットで申請することがほとんどですので、内容証明郵便を出す場合うは、必ず配達証明もセットで申請してください。
本稿でも、特に断りが無い場合、内容証明とはこの配達証明とセットになったものを指しますので、ご了承ください。
2 どのような場合に内容証明を出すか
では、この内容証明は、どのような場合に出した方が良いのか、あるいは逆に出さない方が良いのでしょうか。
2-1 必ず出した方が良い場合
・裁判に備えて証拠を残しておく場合
(1)まず、必ず出した方が良い場合とは、「裁判に備えて証拠を残しておく場合」です。
人間同士のトラブルというのは、当事者間で解決出来なければ、裁判に発展することがあります。
しかし、裁判というのは、全知全能の神様によって行われるわけではなく、あくまで生身の人間が行うものですから、ある事実をめぐって「有ったか」「無かったか」が争いになるとき、証拠で判断するしかありません。
したがって、裁判では証拠の有無が勝敗を決することが少なくありません。
そして、裁判では、「いつ、どのような内容の手紙を送ったのか」が争いになり、それについて証拠の裏付けがあるかが重要になるケースがあります。
(2)代表的なのは「時効」が関係する場合です。
例えば交通事故に遭ってその加害者相手に損害賠償を請求する場合、その損害賠償を請求する権利は、「損害及び加害者を知った時」から3年で時効が成立するという法律があるので、3年間何もしないでいると、せっかくの損害賠償をする権利が消えてしまい、もう何も請求することができません。
しかし、3年が経過する前に相手に請求した事実があれば、時効はストップさせることができ、そこからさらに新しい時効期間が進み始めるので、権利が消えてしまうことはありません。
そこで、3年経つ前に、賠償を請求する文書を相手に送ることになりますが、単に手紙やハガキを送るだけでは、上記の通り、内容までは証明されませんので、いざ裁判で「本当にあなたが賠償を請求する内容の手紙を送ったのか」が争いになった場合、「証拠が無い」とされ、その請求した事実が認められないことになり、時効成立で権利が消えたことにされてしまいます。
つまり「敗訴」です。
内容証明は、こうした事態を防ぐための「証拠」として必要となります。内容証明であれば、あなたがいつ、どのような内容の文書を送ったのか、それが相手にいつ届けられたのかが証明することができるので、上記のような事態になることは無いのです。
なお、余談ですが、内容証明で請求する行為は、正確には「催告」という行為であり、その後6か月以内に訴訟提起等の手続きを取る必要がありますので、ご注意ください。
逆に言えば、3年経過ギリギリ直前に内容証明を送ることが出来れば、その後3年が経過しても、内容証明が届けられた日から6か月以内に訴訟を提起すれば、時効はストップさせることができます。
(3)他には、例えば不動産を貸しているにもかかわらず、借りている人が賃料を払わないので、解除したい場合にも必要です。
通常、賃貸借契約の解除は、いきなり行うことはできず、「催告」といって、まずは相当期間内にきちんと義務を履行するよう求めることが必要で、それでも相手が従わない場合に初めて契約の解除ができます。
したがって、上の例でいえば、「○○日以内に滞納している賃料○○万円を支払ってください」と申し向けることが必要ですので、そうした事実の証明のために内容証明が必要となります。
勿論、これらの例だけではありませんので、現に抱えているトラブルにおいて、内容証明郵便が必要かどうか、できれば弁護士等の専門家に相談してみた方がいいでしょう。
2-2 場合によっては出した方が良い場合
・相手がプレッシャーを感じ、こちらの要望に従ってくれそうな場合
内容証明郵便は、郵便局が書留で送りますので、郵便局員が直接宛先まで送り届けに行きます。
また、内容証明郵便は、文書そのものに「内容証明であること」を示す押印がなされますので、内容証明であることは一目でわかり、通常の手紙に比べてかなり仰々しいものとなりますので、受け取った方はかなり印象に残ります。
ですので、場合によっては、相手はこちらの「本気度」を感じ、素直に要求に従ってくれる場合がありますので、そうしたことが期待できそうな場合は、内容証明は有効な手段になります。
もっとも、相手がそうした行動に出てくれるかどうかは、当然ながらそのトラブルがどういうものか、相手がどういう人間か、といった種々の事情によりますので、必ず出した方が良いとは言いきれません。その点はご注意ください。
2-3 出さない方が良い場合
- 相手と円満にやり取りしたい場合
- 逃げられてしまってはまずい場合
(1)内容証明郵便は、上記の通りかなり仰々しい態様の文書ですので、受け取った方がプレッシャーを感じて素直に要求に従ってくれる場合もあれば、逆に感情を逆なでしてますます態度を頑なにしてしまう場合もあります。
ですので、もしこちらが、2-1のように裁判に備えて特に証拠を残しておく必要も無く、また相手となるべく円満に解決したいと望んでいる場合、あるいはまずはこちらの意見を伝えて様子を見たいだけの場合には、逆効果となる場合もあります。そうした場合は、むしろ内容証明郵便は出さない方が良いでしょう。
(2)また、相手がこちらの行動を察知し、逃げてしまう場合にも、出さない方が良い場合があります。
例えば相手にお金を請求する場合、仮に裁判で勝訴をしたとしても、相手がそれに従って払ってこなければ、こちらは強制執行をする必要があります。
しかし、強制執行は、こちらが相手の具体的な財産(預金口座や給与)を把握し、それを差し押さえるなどの行為をしなければ実現しないので、家族も仕事もない相手が財産を全て隠して逃げてしまった場合は、もはや打つ手がありません。
こうした相手が、内容証明によって逃げてしまう場合には、むしろ出さない方が良いでしょう。これも、そのトラブルがどういうものか、相手がどういう人間か、といった種々の事情によりますので、慎重に考える必要があります。
3 内容証明の書き方
3-1 書く内容
まず、書く内容については、勿論、場合によりけりですが、以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
(1)当事者本人をはっきり書くこと
内容証明は、2-1で述べたように、裁判に備えて証拠として残しておく場合がありますので、誰の、誰に宛てたメッセージなのかをはっきりさせる必要があります。
あだ名や略称ではなく、きちんと本名を書くようにしましょう。
また、内容証明は、代理人を通じて出したり、あるいは相手の代理人宛てに出すこともありますが、その場合であっても、「○○代理人 ○○」といったように、誰の代理人なのか、本人は誰なのかを明記する必要があります。
(2)事実関係や理由をはっきり書くこと
同様に、証拠として使うことが予定されている以上、裁判官等の第三者でもわかるような内容にする必要があります。
単に要求事項だけ書くのではなく、背景となる事実関係や理由もしっかり書きます。
例えば貸したお金の返済を請求する場合、その貸金の貸付日付、金額、返済期限を明記し、「返済期限を過ぎても返さない」という事実も書く必要があります。
「相手も分かっているのに、何を今さら」と思われるかもしれませんが、こうした事実を改めてはっきり書くことによって、いざ裁判になったときでも裁判官によく内容を把握してもらうことができます。
また相手に対しては改めて自分の行為やその問題点を認識させることにもつながります。
(3)品位を欠くような表現、脅迫的な内容は書かないこと
内容証明に限った話ではありませんが、いくらトラブルで対立している相手であっても、感情的になって罵詈雑言を浴びせたり、品位を欠くような言葉遣いをしたり、あるいは「要求に従わないと相手や相手の関係者に危害を及ぼす」などの脅迫的な内容を書いてしまえば、うまく行く交渉もうまく行きません。
それどころか、もし裁判でそのような内容証明が逆に相手から証拠として出されてしまえば、こちらにとって非常に不利になることも考えられます。
内容証明を出すということは、かなり相手に対して腹に据えかねている状況ということでしょうから、気持ちはわかりますが、そこはぐっと堪えて冷静になることが必要です。
3-2 書式
次に書式についてですが、内容証明は、字数や行数等の書式がある程度決まっています。下記のURLで詳しい説明が載っていますので、参照してみてください。
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/use.html
いろいろルールがありますが、一番注意する必要があるのが、文字数と行数です。これは以下の3パターンのうちいずれかに合致することが求められていますが、これに合致しないと、郵便局で受け付けてもらえませんので、ご注意ください。
- 1行20字以内で、1枚26行以内
- 1行13字以内で、1枚40行以内
- 1行26字以内で、1枚20行以内
パソコンのワープロソフト等で作成する場合は、書式をこれに合致するよう設定すると良いでしょう。
3-3 押印
さらに、文書には差出人の押印が必要です。これは実印でなくとも構わず、三文判で大丈夫です。
また、2頁以上にわたる場合は、頁と頁の間に割印も必要です。
3-4 通数
書面自体は以上の通りに作成しますが、1通だけではなく、同じものを3通用意してください。
内容証明郵便は、相手に送付する用、郵便局保管用、差出人の控え用の3通必要なのです。
4 内容証明郵便の出し方
次に、内容証明郵便の出し方を解説します。
4-1 用意するもの
(1)文書3通
通数、書式、押印の仕方が上記の通りになっているかどうか事前に確かめましょう。
(2)封筒
差出人及び受取人の住所氏名を記載した封筒が必要ですので、計2通必要となります。相手が複数の場合は、その相手の数の分と自身を含めた数が必要です。
(3)料金
内容証明郵便の料金は、以下の通りです。
①郵便の基本料金 + ②内容証明の加算料金 + ③一般書留の料金 + ④配達証明の加算料金 +(⑤速達で出す場合は速達の料金)
内容証明の加算料金は、430円ですが、2頁以上にわたる文書の場合、2頁目以降、1頁につき260円がさらに加算されます。
その他、①基本料金や、②一般書留の料金、③配達証明の加算料金、⑤速達の料金は、重さや書留の種類により変動しますが、下記のURLで一覧表が載っていますので、ご参照ください。
http://www.post.japanpost.jp/fee/simulator/kokunai/option.html
ただ、郵便局に行けば、料金を計算してくれますので、その場で確認して払うようにすれば大丈夫です。
4-2 郵便局へ提出
必要なものを揃えたら、郵便局の窓口に行きます。内容証明を受け付けてくれる窓口がありますので、そこへ行きます。
そこで、配達証明や速達証明を付けるかどうか聞かれますので、配達証明だけは必ずつけるようにしてください。速達は急ぐ必要があれば付けるようにした方が良いでしょう。
その後、郵便局員が、文書の書式等の条件を満たしているかチェックしますので、ある程度待たされることになります。
チェックが終われば、料金を示されますので、料金を支払ってください。
これで完了です。
後は、後日、相手に内容証明が届けられれば、配達証明として、いつ届けられたのか通知が来ます。
4-3 電子内容証明
以上が内容証明郵便の提出方法ですが、これは差出人が自分で文書や封筒を用意する一般的な方法です。
これに対し、「電子内容証明郵便」という、パソコンの操作だけで内容証明郵便を提出できる制度もあります。以下のURLをご参照ください。
https://www.post.japanpost.jp/service/enaiyo/index.html
ここにある通り、クレジットカード登録や料金後納の手続きをとる必要があり、書式や料金体系もやや異なっておりますが、パソコンの操作だけで済みますので、郵便局に行く必要もなければ、文書や封筒を用意する必要もありません。
かなり時間が短縮でき、非常に便利です。
日常的に内容証明郵便を扱うところ、例えば法律事務所などでは、この電子内容証明郵便を利用しているところが増えています。
可能であればこの電子内容証明郵便を利用することをお勧めします。
5 その他のポイント
5-1内容のチェック
内容証明郵便は、一度出してしまうともう後からキャンセルすることはできませんので、出す前にもう一度内容をチェックする必要があります。
通常の方法で出す場合、郵便局の人が事前にチェックしますが、これは書式等の形式的なところをチェックするだけですので、当然ながら内容の当不当、誤字脱字といったところまではチェックしません。
また、電子内容証明郵便で提出する場合も、書式が合わない場合は、送信できない等の措置がとられますので、そこは気づくことができますが、同様に内容の当不当まではチェックできません。
提出する前に、二度、三度と見直して間違いのないようにしましょう。
5-2 時間の確保
通常の方法で出す場合、郵便局の人が書式や押印の有無等をチェックしますので、そのための時間がかかります。
通常は10分程度であることが多いようですが、文書の分量や郵便局の混み具合によっては、数十分あるいは1時間くらいかかることもあり得ますので、郵便局に提出に行くときは時間に余裕を持っていくようにしましょう。
6 おわりに
いかがでしたでしょうか。
冒頭で書いた通り、今は電子メールやSNSでメッセージをやり取りすることが増えたとはいえ、同じ内容でも、メール等より正式な文書の方が、良くも悪くも受け取った側が重みを感じることが多く、まだまだ文書や書面の持つ効力は侮れないものがあります。それが内容証明となればなおさらです。
書き方や出し方にいろいろと注意点はありますが、内容証明は、使いこなせれば、トラブルの解決においては、かなり有効な手段となります。
ここで書かせていただいたポイントを抑え、あなたの抱えるトラブルが一日でも早く解決されることの助けになれば幸いです。