2016-04-17 弱き者、汝の名は被災者
災害にデマはつきものなのか
熊本地震のニュースを見ていて、気になったんだが、NHKのヘリからの中継で、
「これから、望遠レンズでズームします」
「少しお待ちください、あちらの現場に望遠レンズでズームします」
としつこく、しつこく言っていて、そんな、望遠使うのなんて、当たり前のことなんだから、なにをいちいち断っているのかと思っていたんだが、思い当たったのは、熊本地震が起きて、取材がはじまった後にTLで見た、NHKのあるアカウントのつぶやきだった。
「ヘリへの要望は現場へ伝えました」
毎度のことだが、ツイッターには「報道ヘリのせいで救助が遅れた」や「自衛隊のヘリを報道ヘリが邪魔した」というデマが流れていて、あーあと思っていた。おそらく、NHKなど報道各社のアカウントは、この手のデマを信じた方々に絡まれていたのだろうね。
NHKのヘリのカメラマンにしてみれば、超望遠で狙う技術が発達したから、かつてのように救助の現場へ近づくことは減っているのは常識なんだろうと思う。また、中継を見ていた限り、被害の全体像が分からない地域を把握するような撮影をしていた。感動の救助風景みたいなものは無理には狙わないんだと思う。
しかしながら、それを繰り返し言わないと、自分がそれを知らないだけなのに、しつこく抗議する人たちがいるんだろうなぁ。
なんだろうね、この視野の狭さは。
今日も今日とて、スマホを見ていた娘が
「マスコミの車が駐車スペースにいたせいで、被災した人が車を止められなくて、ごはんもらえなかったんだって、ひどいね」
と言ったので、たしなめておいた。
「ネットで見たことを軽々しく信じない方がいいよ」
「リツイートして、みんな怒っているよ。ひどい、ひどいって」
「だったらなおさらだよ。その人たちはネットだけ見て言ってる可能性大だから。その人らが現場で見たわけじゃないだろ?」
それでも不満そうな顔をしていたので説明をした。
「もしも、現場でそれを見た人がいるならば、そこで、邪魔な車を運転してきた奴に声をかけて、どかせばいい。被災した人たちだってそれぐらいできるし、黙ってはいないと思うよ」
「現場、現場って……そこにいた誰かがつぶやいたのかもしれないでしょう?」
「常識的に考えたら、そこにいた誰かは、それを見たら、つぶやく前に、文句を言いに行って、その車をどけただろうね。それをしなかったのはどうしてなんだろう? 現場に行ってみれば、そのぐらいのこと、みんなできるよ。いい大人なんだから。あのね、困ったことが起きたら、そのままにしないのが普通なんだよ。困っている人は、自分から動いて、それを改善しようとする。困ったことをした人も、怒られたり、批判されたら、次はしないように気を付ける。それが普通なんだよ」
「ふーーーん」
「納得できないかもしれないが、そうやってデマを信じるのは、その現場にいる人たちを信じていないってことなんだと、お母さんは思うな。避難している人らがまったく無力で、なすがままにされていると思うのは、ネットでしか見てない奴の驕りだわ。以前に怒られたり、非難されたら、その経験を共有して、次はしないと気を付けるのが、常識的な大人たちだわ。なにか起きれば、それを受けて、人はその状況に合わせて適応する。社会とはそういう有機的な反応で成立しているもんで、困ったことが起きても、なにも動けず、助けを待っているなんて思うのは、助ける側の思い込みだわ」
しかし、なんだろうね、これは。
まるで何もできないように扱われるしんどさ。なんてのは、想像つかないかな。
人はよき方向に向かって、どうにかしようとするもんだ。なんてのは、想像つかないのかな。