東日本大震災以降、サプライチェーン(供給網)の強化に動いてきた産業界が再び試練に見舞われている。トヨタ自動車は熊本地震の影響で部品供給が滞り、稼働を停止する工場を全国に広げる。小売りや外食でも輸送網の寸断で一部の店舗の閉鎖が続く。前回の震災の教訓を生かせるかどうか、企業は正念場を迎えている。
2011年の東日本大震災で大規模な減産を強いられた教訓を生かし、トヨタなど自動車メーカーは、複数の部品メーカーへの発注や在庫の積み増し要請など、サプライチェーンの強化に取り組んできた。
実際、前回の教訓を生かした動きもある。ルネサスエレクトロニクスは自動車向け半導体を生産する主力の川尻工場(熊本市)を14日から停止中だが、生産停止が長引けば別工場での代替生産を始めることを検討する。
東日本大震災で同社の茨城県にある主力工場の一つが被災し、3カ月弱の間全面停止した。自動車メーカーなどは大きく影響を受けたため、災害対策の強化を進めてきた。被害状況の確認に時間がかかっており、現時点で生産再開のメドは立っていないが、在庫も積み増しているといい、安定供給に全力を注ぐ。
ソニーも熊本県菊陽町の半導体工場の稼働を14日から停止している。同工場はカメラやスマートフォン(スマホ)向けの画像センサーの主力生産拠点。15日には再開準備を進めていたが、16日未明の「本震」とされる揺れで、早期の再開は難しくなっている。
人的被害はなく、建屋の損壊も見られないが、余震の影響で工場内の様子はまだ十分確認できておらず、生産再開のメドは立っていない。同工場で生産する部品は納入先も多く、停止期間が長引けば、影響が広がる可能性もある。
小売りや外食にも影響が広がる。イオンは17日、熊本県と大分県にあるグループのスーパーなど27店を休業。イオン熊本店(熊本県嘉島町)など一部店舗では16日に引き続き、店舗前の駐車場で食品や水の販売をした。
イオンは震災の発生当初から九州地方のグループの拠点から被災地への応援や支援物資を送っている。ただ、道路の被災により、思うようには運べない状況だ。
コンビニエンスストアではローソンが17日、熊本県の全141店中約3割の店を休業した。80店が休業していた16日に比べ営業店舗は増えたが、夜間はいまだ半分の店で営業できない状況が続いているという。
ファミリーレストラン最大手のすかいらーくでは震災後に一時、熊本・大分両県の27店のうち15店で営業を休止。17日時点でも熊本県内の9店で営業を見合わせている。