手狭になっている国立公文書館の建て替え構想が、ようやく動きだしそうだ。

 政府はこのほど、国会近くに衆院が所有する2カ所の建て替え候補地についての調査結果を公表した。これを踏まえ、衆院議院運営委員会の小委員会が候補地を決めるが、十分な広さが確保できる憲政記念館の敷地が有力視されている。

 皇居外苑のいまの国立公文書館本館の延べ床面積は1万2千平方メートル弱。米国やドイツの公文書館の10分の1にも満たず、2019年度には書架が満杯になる見通しだ。

 また、所蔵する憲法の原本や古文書などを傷めずに常時展示するための空調や保安設備も整っておらず、政府が建て替え構想の具体化を急いでいた。

 憲政記念館を解体し、公文書館と一体で建て直せば、4万平方メートル以上の床面積が確保できるという。予算の制約はあろうが、国民が歴史的な資料に親しめ、研究者の利便性も高まるような施設としてほしい。

 一方、立派な施設でも中身が伴わなければ意味がない。

 行政機関の文書作成や管理のルールを統一し、歴史的価値のある文書は公文書館に移すことを定めた公文書管理法が施行されてから5年がたつ。

 ルールに基づく文書管理は一応の軌道には乗ったようだ。ただ、行政の意思決定過程を検証できるようにするという、法の目的にかなった運用がされているかは疑問が残る。

 最たる例が、憲法9条の解釈変更にあたって内閣法制局内でつくられた「想定問答」の扱いだ。法制局は公開対象となる行政文書ではないというが、多くの専門家も指摘するように、この主張は理解できない。

 行政文書にあたるかどうかを内部の当事者だけで判断できる現状では、ほかの省庁でも似たような事例が横行していると疑われても仕方がない。

 有識者による公文書管理委員会が出した制度見直しに向けた報告書は、外部の学識経験者らの協力を得て、文書管理が適切かどうかを評価・検証する試みを検討すべきだと求めている。

 将来的には各省庁に知識と権限をもつ専門職員を置くことが望ましいが、当面の対応として第三者が関与できるような制度の見直しは不可欠だ。

 公文書は国民共有の知的資源であるとうたう公文書管理法は、与野党の政治家のリーダーシップがあって制定された。

 現状の改善は、官僚任せでは難しい。国民の側に立った政治の後押しが必要だ。