これまでに「株って、なんなの?」ということと「会社人間にも会社とは別の準備が必要だ」ということを説明しました。

今日は、ぶっちゃけ「なぜ株なのか?」という疑問に答えたいと思います。

僕に言わせれば、皆さんが株をやるべき理由は「儲けるためにやる!」という動機が真っ先に来るべきです

よく「投資は社会に貢献する」とか「投資をすれば経済の仕組みがわかる」などの副次的なメリットを挙げる人がいます。

それは間違っていないと思いますが、「ゼニ儲けするんだッ!」という決意をさておいて、そういうきれいごとを最初に持ってくると、中途半端な投資家にしかなれないと思います。

「投資で社会に貢献する」というのは立派なプロの投資家の方々が持つべき矜持なのであって、我々下々の投資家は、まずカリスマ投資家、ウォーレン・バフェットの次の言葉を心に刻むべきでしょう。

第1のルールは損をしないことだ。第2のルールは、第1のルールを片時も忘れない事だ!
The first rule is not to lose. The second rule is not to forget the first rule.


それじゃ、一体、株って儲かるの? ということが気になります。

1965年以降、こんにちまでのS&P500指数(=アメリカを代表する株価指数です)のリターンは、配当込みで年率9.8%でした。

銀行にお金を預けても、最近は低金利なので殆ど利子は付きません。するとこの年率9.8%というリターンは、キラキラと輝くお星様みたいな、夢みたいな話です。

ここで悪いお知らせがあります。

確かに過去の実績は「年率9.8%」だったかも知れないけれど、それは未来もそうであるということを保証しません。

つまり一寸先は闇であるということ。

また「年率9.8%」というのは、「均してみると、そういう結果だった……」というだけであり、実際はそれよりもリターンが高い年もあれば、ボコボコに凹む年もあるということです。

皆さんは(今日は調子が悪いので会社に行きたくない)とか(風邪ひいた)とか(今日は生理日だ)とか、自分の体調ひとつですらUP & DOWNの連続だと思うのです。株式市場だって所詮、人間の営みに他ならないので、ルンルンの日ばかりじゃなく、スネた日や、パニックに陥る日もあるのです

自分の投資した企業が業績を落としたり、倒産するリスクもあります。

株式市場には、老獪な投資家や、目にも止まらぬスピードでトレードするすばしっこい連中や、へそ曲がりで意地悪な空売り筋などの曲者がウヨウヨしています。

僕が30年、株をやってきてつくづく感じることは、株式市場はジャングルであり、毎日がサバイバル・ゲームだということです。

あ、それから株式市場の参加者は、プロになるほどナイスじゃない人が多いです。そういう僕も、嫌な性格してますけど(笑)

だから(自分は一生懸命考え抜いてこの投資判断に至った。だから間違うはずがない!)というようなキモチを抱いたとたんに瞬殺される……それが株式市場というところです。

予定は全て崩れ、目論みは全て外れる。

そういう不運の連続と折り合いを付けられる人で、それでも根気強く自分なりの手法を磨ける人だけが株で成功すると思います。

つまり株式市場は不平等で、きまぐれで、無慈悲だ……ということ

(そんなに辛いのなら、そもそもなぜ投資するの?)

皆さんは、そう思うでしょう。

その理由は、株式投資から得られるリターンは、たとえばサラリーマンをやっていて毎月貰えるお給料とは違う性格のリターンをもたらしてくれるからです。




お給料は毎月、同じ金額がコンスタントに入ってきます。これはとてもありがたいことです。

でも株式のリターンは上にかいたようにデタラメです。損することも多いです。でもたまに儲かることもあります。

その収入のパターンは、毎月コンスタントに入って来るお給料のパターンとは、かなり違うということ。

もちろん、毎月、確実に入って来るお給料は、最強です!

でもそのお給料にも弱点があります。それはどんなに背伸びしても、逆立ちしても、お給料の伸びは、たかが知れている! ということです。

言い換えればお給料は定規でゆるやかな右肩上がりの直線を引いたようなカタチでしか伸びないということです。(最近は、会社によっては横ばいという場合もあるでしょうが)

それに対して投資から上がってくるリターンはクネクネと波打ったパターンになっているわけです。

この(直線)+(クネクネ)という組み合わせを、是非、皆さんに実行して頂きたいのです。

つまり収入は単線よりも複線の方が良いし、おカネの儲かり方は多様な方が良いのです。

そのようなクセ(return characteristics)の違う投資を組み合わせることで、一方がダメになった時(=たとえばどうしても会社が自分に合わなくて、転職しなければいけなくなったとき)に「もうひとつの収入源」が一時的にそれを補う……というようなバランスが保てるのです。

(なるべく堅い方が良い)

と考えて、たとえばあなたの投資資金を全て預金や国債に投資するというやり方は、間違っています。

なぜならそれでは十分に性格の違う、異質なリターンが産めないからです。

第1回で「株を買うということは、事業のオーナーになることを意味する」と言いました。事業のオーナーはボスであり、下々のモノどもを働かせ、その上がりをピンハネする立場に居ます。これは良い事です。

つまり「おカネに働いてもらう」ということの意味は、たとえばフェイスブック株を購入すれば、スタンフォード出てフェイスブックに就職した社畜どもの「汗と涙」の結果として生み出された利益、その果実を、株主のあなたが取る! ということなのです。

この「その企業の将来の利益の一部を株主としてそれは自分のものだ! と主張できる権利」こそが株主の特権というわけです。

すると、その会社の利益が伸びれば伸びるほど、「それはオレ様のものだ!」と主張できる特権の価値は上昇します。

その反対に、その会社の業績がどんどん悪くなると「その利益はオレ様のものだ!」と主張できる特権の価値は下落します。

そしてその会社が倒産してしまえば、株主には何も返って来ません。つまり株券は紙切れになります。つまり全損です。

(つづく)

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