ブラジル、イタリア、メキシコ、ウルグアイの強豪国を相手に0勝4敗、失点13。メディアは「守備陣の崩壊」を嘆いた。守備陣とは、基本的に最終ラインと守備的MFの6人を指すが、前にも述べた通り、フィールドプレイヤーを攻撃陣と守備陣とに分けて捉える考え方はサッカー的では全くない。

 攻撃陣とは前のウルグアイ戦でいえば柿谷曜一郎、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司の4人になるが、日本の守備は、これに守備的MF2人を加えた6人のボールの奪われ方に懸かっている。彼らがよい奪われ方をすれば「守備陣」への負担は軽減するが、悪い奪われ方をすれば増大する。

 13失点を許した直近の4戦は、悪い奪われ方が目立った試合と言うべきである。そのしわ寄せが「守備陣」の崩壊に繋がった、と。改善の余地は「守備陣」より「攻撃陣」の方がはるかにある。前の選手がよいボールの奪われ方をすれば、後ろの選手は楽になる。問われているのは、攻撃のバランス。

 そうした視点でモノを考えたとき、とりわけ声を大にして言いたくなるのは、香川真司のポジションイングだ。かねてから述べていることだが、これはハッキリ言って酷い。ここまでポジション感覚が欠如した選手も珍しい。

 逆サイドで待てないのだ。ボールが右サイドにあるとき、左サイドにいられない。ボールを欲しがり、真ん中付近(1トップ下あたり)まで移動してしまう。結果、左サイドの高い位置に誰も選手がいなくなる時間が多くなる。

 その瞬間、マイボールから相手ボールに攻守が切り替れば、日本の左サイドは危うい状況になる。左サイドバック(たとえば酒井高徳)1人で、相手の攻撃を受けなければならなくなる。それではまずいと、守備的MFのひとりである遠藤が外に出て行けば、今度は真ん中がスカスカになる。日本の左サイドバックは、積極的に前で出られない専守防衛を強いられる構造になっている。相手のつけ込む隙はそこにある。

 だが、香川の動きはいっこうに改善されない。注意を受けている様子さえ見られない。以前、香川のポジショニングはあれでいいのかと問われたザッケローニは、かつて「彼には左サイドからカットインするプレイに期待している」と述べているが、香川の実態は、最初から中に入ってしまっている。カットインする動きでは全くない。

 それを見逃してしまっている監督も問題だが、本人にもそれと同じくらい、いやそれ以上に責任がある。本人だって少なからず罪悪感は抱いているはずだ。実際、先のブラジル戦やマンUでの試合等においては、割と抑え目にしている。分かってはいるのだろう。

 けれども、ついやりたくなってしまう。活躍できない試合ほど、その傾向がある。サイドより真ん中の方がよいプレイができると考えているからだ。言い換えれば、サイドに居心地の悪さを覚えるからだ。

 しかし、彼のプレイエリアの適正が、必ずしも真ん中のエリアにあるとはいえない。

 少なくとも1トップ下の適正では、本田圭佑には劣っている。

 本田は左利きだ。しかしながら、彼は多くの左利き選手のように、見るからに左利きの選手だというボールの持ち方をしない。中村俊輔や、かつての名波浩のように、柔道や相撲で言うところの「半身」の体勢でボールを操作しない。身体の真ん中にボールをセットし、次の瞬間、右に行くか左に行くか、わかりにくい体勢をとる。

 さらに、相手ディフェンダーに背中にしてプレイすることもできる。身体を預け、ポストプレイに及ぶこともできる。マルチにプレイすることができる。

 それに引き替え香川は、見るからに右利きであるようなボールの持ち方をする。進行方向は8割方右。動きを読まれやすい欠点がある。それを俊敏性さでカバーしているわけだ。