告発を受けた警察がすぐには動かず「近日中に会長を呼ぶ」と対応したのも、面白い。早く示談してくださいよ、つまり「有銭無罪」への布石だろう。
「ナッツ姫事件」は、まさしく同じ社内でのパワハラだったが、ナッツ姫が運輸省の事情聴取を受けることになると、大韓航空グループの社長たちが何人も運輸省に押し掛けた。そして、トイレの清掃作業員を呼びつけて「お嬢様がお使いになるかもしれないから、もう一度掃除をしろ」と命じた。
清掃作業員が運輸省の雇員なのか、出入りの業者なのかは分からない。ただ、作業員が大韓航空グループの社長たちの指揮命令を受ける立場にないことは明らかだ。
しかし、作業員は掃除を終えたばかりなのに、改めて掃除をした。“両班様たち”のご意向には逆らえない−そんな社会的風潮、すなわち法律に基づかない今日の身分制度が機能しているからだ。
“現代の両班様たち”に接する韓国人にとっては、まさに「ヘル・コリア」(地獄の韓国)に違いない。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。