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紙屋研究所


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2016-04-17 小児性愛者を「合法的に手助け」する人形の議論について

小児性愛者を「合法的に手助け」する人形の議論について

 この問題。

小児性愛者を「合法的に手助け」する人形の製造は是か非か〜BuzzFeed Japan記事への賛否両論 - Togetterまとめ 小児性愛者を「合法的に手助け」する人形の製造は是か非か〜BuzzFeed Japan記事への賛否両論 - Togetterまとめ

 原理的にはあまり難しい問題はない。

 まず、こうしたドールが小児性愛者を「合法的に手助け」するかどうかは、本筋の論点とは思われない。結論的にいえば、小児性愛者の欲望を助長し、反社会的傾向を促進することがありえないとはいえないからだ(もちろん、欲望を解消し「合法的に手助け」することもありうる)。

 しかし、基本的には規制すべきではない。

 なぜか。


 実写児童ポルノ子どもを描いたポルノコミックの関係と同じである。

 直接の被害者がいない以上規制はできない。

 ごく粗くいえば、実写児童ポルノには、被写体となる子どもがいるので人権侵害がはっきりするが、子どもを描いたポルノコミックには現実の子どもは原則的に出てこないので、人権侵害ではない。


 「子ども全体の人権を侵害する」というような論点がありえる。その論点は無視してよいものではなく、十分傾聴に値するものだと思うが、虚構は一般的に人によい影響も悪い影響も与える。「人間を何百万人も殺すような戦争を『いいもの』と感じるおそれがある」といって戦争賛美小説を規制したり、ウヨク的なマンガを取り締まったりすることはよくない。


 虚構を愛でることは、誰かを傷つけていたり、暴力的にふるまっているおそれがある。そういう自覚は必要だし、批判をうけたら、よく考えるべきものなのだ。ぼく自身もポルノコミックを読み、快楽を「享受」する側に身をおいているが、「ポルノコミックは女性への侮辱だ」という批判に対して「これは虚構だ。何が悪い?」とだけ返すのはあまりにも無自覚な行為だ。



 異性愛者も、同性愛者も、小児性愛者も、「同じ」性嗜好の一つだとぼくは現時点で考える。そういう把握が批判されることもあることは一応承知しているが。

 まず、この3者がどんな嗜好をもつかは自由である。

 しかし、たとえば「相手強姦してはいけない」というのは外形的な、共通したルールである。最初の自由は、公共の福祉から考えて、他人の権利を奪わない範囲で尊重されるべきである。

 同じように「子どもをセックスの対象にしてはいけない」というのも共通したルールである。*1子どもは性的な自己決定が不十分な恐れがあるからだということが社会合意になっている。

 「同性をセックスの対象にしてはいけない」または「異性をセックスの対象にしてはいけない」という共通ルールを設けることも可能である。しかし、それは社会合意になっていない。


 本人がどういう性嗜好を持つかではない。

 対象となる相手人権などが具体的に侵害されるかどうかが問題で、その人権を保護するために規制がかけられる。

 仮に「強姦性愛者」という、強姦でしか性的に興奮できない人がいるとしたら、そういう嗜好をもつこと自体は自由だが、実際に強姦に及べば処罰されるのと同じである。


 ただ、今思考実験として例にあげた「強姦性愛者」について「そういう嗜好をもつこと自体は自由だが、実際に強姦に及べば処罰されるのと同じ」とぼくはのべたけども、そういう切り分けが現実にはできるのかは不安になるというのはわかる。

 ヤコブ・ビリング『児童性愛者』(解放出版社)を読むと、冒頭に「デンマーク児童性愛愛好者協会」の潜入の様子が描かれている。子どもには手出ししない、というタテマエながら、実際にはどうもそうでないという話が随所に出てくる。切り分けなどできないのではないか? こういう不安があることもすごくよくわかることなのだ。

児童性愛者―ペドファイル

 だから、原理的には実にすっぱり割り切れることのはずなのだが、この記事の最初に紹介したtogetterにおいて規制の必要を説く人たちの不安にどう応えるのかは、考えねばならない問題だといえる。

*1:「子ども」の年齢的線引きには議論があるにせよ。

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