イラスト、漫画、アニメ、動画、音楽……さまざまなジャンルで活躍するクリエイターたちの作業環境にスポットを当てる企画「#DESKWATCH(デスクウォッチ)」。珠玉のクリエイティブがどのような環境で生まれるのか、プロのクリエイターはどんなツールを使っているのか、写真とインタビューでじっくり迫ります!

今回お話を伺うのは、TVアニメ『ギルティクラウン』のキャラクター原案や、人気音楽ユニット「EGOIST」の CDジャケットイラストなど、スタイリッシュな作風で活躍するイラストレーター・redjuiceさん。こだわりがたっぷり詰まったお手製ガジェットについても語っていただきました!

redjuiceさんのデスクを拝見すると、まず目につくのはやはり大型液晶ペンタブレット『Cintiq24HD touch』。隣には板型ペンタブレット『Intuos Pro large L』があり、それぞれモニターに繋がれています。メインの描画は液タブを使い、モニターで色味を確認しながら描くとのこと。板タブの方では、仕上げの特殊効果や色補正などを行うそうです。

しかし、机の上にはほかにも気になるものがちらほら……いったいどんな秘密兵器が隠されているのか、さっそくインタビューしてみましょう!

インタビュー:伊藤桃香(ヴィ) 撮影:関口敬文(ヴィ)

自分好みにカスタマイズしていったら、最終的にこうなりました

──作業ツールの中で、特にお気に入りのハードウェアはありますか。

欠かせないツールといえばPowerMate(※)と、自作の左手コントローラーですね。

今までたくさんの PC デバイスを試したんですが、なかなかしっくり来るものがなくて……。でもSTUDIO4℃で『ハーモニー』の仕事をしていたとき、あまりにもキーボードでの作業がツラすぎて(笑)。もう少し手への負担が少ないコントローラーを探していたんです。

※PowerMate … アプリケーションの制御・操作ができる USB コントローラー。画面やブラシの拡大・縮小など、さまざまな機能を割り当てられる。

▲redjuiceさんの作業を支えるキーアイテム。最大のポイントは取り回しのよさ!

これ、元はゲーム用のコントローラーなんです。最初は右側の持ち手部分だけカットして使ってました。でも「これ改造したらもっと使えるんじゃね?」という発想にいたりまして(笑)。
秋葉原でボタンなどのパーツを買って、はんだ付けして自分好みにカスタマイズしていったら、最終的にこうなりました。

──このコントローラーにはどんなショートカット機能を登録していますか。

下ボタンはスペースキー(手のひらツール)ですね。左がアンドゥ、右がリドゥ、上は画面回転です。斜め上はズームで、斜め下はまだ登録していません。

L ボタンには消しゴムツール、L2 ボタンにはちょっと柔らかい消しゴムツールを登録しています。ボタンを押している間だけ消しゴムツールになって、離すとペンツールに戻ります。同じ動作はキーボードでもできるんですが、大変なので……手元でゲームコントローラー感覚でできるのが、すごく便利ですね。

ちなみに赤い部分はマウスホイールです。ブラシサイズの拡大・縮小を割り当てています。

──ちなみに、改造費用は……?

ベースのコントローラーは1,500円くらいです。中にPowerMateの基盤を組み込んでいるので、それが一番高くて1万円(当時価格)くらいします。マウスホイールも IBM のけっこういいマウスを分解しているので……5,000円くらいかな。小さいボタンは1個100円くらいなので、合計で2万円いくかいかないか、ってところですね。ただし、試作品を2つほど作ったので実際はもっとかかっています。

▲左手にコントローラを持ち、凄まじいスピードでツールを操っていました。

──商品化したら、売価は3万円くらいになりそうですね。

それくらいなら出す人はいると思います。というか、僕が欲しいです(笑)。コントローラーの右半分をカットした完全版を出してくれたら買います!

──ハードウェアやソフトウェア以外に、作業中のマストアイテムはありますか。

音楽でしょうか。
基本的に、作業中はいつも聴いています。聴くジャンルはけっこう雑食で、ゲームのサウンドトラックだったりEDM だったり……昔はバンドをやっていたのでヘビメタも聴いていたんですが、作業中にヘビメタはちょっと違うかなって(笑)。

作業用プレイリストも作っていて、そこには 50 曲くらいしか入っていません。だいたいこのプレイリストで“仕事スイッチ”を入れることが多いです。

一番聴いている曲は、livetuneがカバーした『サイハテ(※)』という曲で、2000回近く再生してます。2番目もlivetuneの『ファインダー』で、3番目は supercellの『君の知らない物語』ですね。livetuneの曲だけでも1万回以上聴いてるんですが、先日それをkzさん本人に伝えたら「キモい」って言われました(笑)。

※『サイハテ』の長さは4:44。2000回聴いているとなると約158時間も再生していることに……。

▲机の下には無停電電源装置。何度かお世話になったそうで、落雷等の瞬時停電からパソコンや液タブを守ります。

“仕事モードに切り替えるスイッチ”をいくつか持っておくと良い

──目や手足を休めるために意識していることはありますか。

うーん……椅子選びが大事じゃないかと思います。
今、僕が座っているのはオカムラのコンテッサという椅子で、座りやすいです。やっぱり体に合っているというのは重要ですね。

あとは、ちゃんと寝ること
僕は目や手足より先に、首に限界がきちゃうんです。振り向けないくらい固まっちゃって。一時期は本当にひどくて、整体にもいったんですが、それでも修正しきれないくらいでした。

そのとき何がいけなかったのかというと、ちゃんとベッドで寝てなかったんですよ。会社の床で寝たり、漫画喫茶で寝たりっていうのを半年くらい続けていて……それがすごく負担になっていました。
ちゃんと布団で寝るというのは本当に大事です!

──作業中にやってしまうクセはありますか。例えば、ついTwitter を開いてしまうとか。

それみんなやるでしょ(笑)! まぁだからこそ、そういうことをしないよう工夫しています。

例えば Google ハングアウトを使って、知り合いの作家さんと繋いだりとか。チャットや通話はしないんですが、お互い監視状態になることで「仕事をしているぞ」っていう雰囲気を高めます。
どうしてもひとりだけでやるとだらけちゃうので……。

ほかにもUstreamやTwitchといったサービスを使って、不特定多数の方に配信しながら作業し たりもします。誰かに見られながら描くというのは、すごくテンションが上がりますね。

▲ちなみに redjuiceさんのペン芯は……なんと竹ひご。ご自身で削って最適なサイズにしているそう。

──集中し始めると、どれくらい連続で作業しますか?

自宅だと16時間くらいが限度です。漫画家の方なんて、3徹とか普通にするからすごいですよね。 僕も『ギルティクラウン』のキャラデザの時は、スタジオにこもって2徹くらいはしましたが……。

あ、もちろん合間合間にちゃんと食事はとりますよ。ブドウ糖をとらないと、頭が働かなくなっ てしまいますから。

──集中するために意識していることはありますか。

作業を始めたら集中力は上がります。これは当たり前のことなので、むしろ「作業を始める前に ダラダラしないこと」が一番大事かな。

僕の場合、スイッチになるのは音楽であったり Googleハングアウトであったり……。そういう“仕事モードに切り替えるスイッチ”となるツールを、いくつか持っておくと良いかなと思います。

僕も栄養剤や強壮剤などを飲んだりもしますが、ああいったものは直接的な効果はないんですよね。それよりも、作業パターンを作る、ということが大事です。

フルデジタルで描くとしても、紙と鉛筆はあった方がいいです

──室内環境などは、特に不満はありませんか。

室内は……本棚が欲しいです。もうほとんどいっぱいで、新しい本がなかなか買えないんですよ。コミックは電子書籍なんですが、資料系はやっぱり紙媒体がいいんです。
ほかの環境については、長年かけて理想の作業環境を構築してきたので、特に不満はないですね。

……あ! 左手コントローラーの完全版は欲しいですね(笑)。

▲さまざまな資料やポーズ集で埋め尽くされた本棚。

──これから作業環境を構築しようとする人へのアドバイスはありますか?

パソコンはノートでもデスクトップでもいいです。ソフトウェアも何でもいいし、ペンタブレットも液晶・板型どちらでもいいと思います。……ぶっちゃけ、機材は何でもいいです(笑)!

ただ、フルデジタルで描くとしても、紙と鉛筆はあった方がいいです。スケッチブックとかコピー用紙とか、紙に描くという習慣はつけておいた方がいいと思います。
それが一番練習になるんじゃないかな。

特にデッサンやドローイングは、板型タブレットで描くと、ペン先とキャンバスに距離感があるというか……脳へのフィードバックが正しくされていない気がします。
液晶タブレットで描くならそれでもいいかもしれませんが、やっぱりできるだけ紙とペン先を見ながら、紙の感触を感じながら作業する、というのが大事だと思うんです。

▲写真は redjuice さん愛用の消せる青鉛筆。

──最後に、最近の活動について教えてください。

最近発表になったものだと、『Project Itoh』ですね。書籍『虐殺器官』、『ハーモニー』、『屍者の帝国』の新装版カバーイラストと、劇場版アニメのキャラクター原案を手がけました。

ハーモニー』、『屍者の帝国』の劇場版はもう公開されて Blu-ray や DVD が発売中ですので、ぜひお買い上げいただければと思います。劇場版『虐殺器官』も鋭意制作中ですので、よろしくお願いします!

あと 4 月から放送開始のアニメ『甲鉄城のカバネリ』の主題歌をEGOIST(※)が担当するので、そのジャケットイラストを 1 枚描きました。こちらもチェックしていただければと思います。

※EGOIST … アニメ『ギルティクラウン』のヒロイン・楪いのりを中心とした、架空の音楽ユニット。『ギルティクラウン』だけに留まらず、さまざまなアニメ作品の主題歌を担当している。

──ありがとうございました!

▲デスク横には、redjuice さんのお仕事関係のフィギュアがずらり。

作業デスクは、クリエイターの個性そのもの!

所狭しと並ぶ書籍やフィギュア、圧倒的存在感を放つモニタや液晶タブレット。 そんな redjuiceさんのデスクで最も印象に残ったのは、やはり自作の左手コントローラーでした! 自分ではんだ付けをしたり、パーツを分解して基盤を組み込んだりするのはなかなかハードルの高い作業ですが、より良い環境を求める場合、ある程度のカスタマイズは避けて通れない道かもしれませんね。

けれど何よりも大切なのは、パソコンにしろデバイスにしろ椅子にしろ、“自分に合っている”ということ! プロのクリエイターは、自分の性格や作業スタイルに合わせた環境づくりに余念がありません。だからこそ、デスクにはクリエイターの個性が表れます。

この連載では、そんな個性の塊であるデスクをウォッチし、クリエイターたちの素顔に迫っていきます。
引き続き、次回もお楽しみに!

redjuice
  • redjuice
  • 高知県出身のイラストレーター・デザイナー。
    supercell、livetuneとのコラボレーションで話題となって以降、漫画・イラスト雑誌への寄稿、アニメ・ゲームのキャラクターデザイン、キャラクターフィギュアの原案などで活動中。「Project Itoh」全作品(『屍者の帝国』『ハーモニー』『虐殺器官』)のキャラクター原案を担当。


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