いじめている、いじめた君へ とある排除活動執行者の末路
第1話 排除活動実行犯の最後
いじめている、いじめた君へ とある排除活動執行者の末路
@antiyutori
第1話 排除活動実行犯の最後
高校時代集団で排除活動を行った人間は少なくともいるであろう。
発案担当か実行担当 少なくともどちらか いや両方だった可能性もある。
簡単に言えば「イジメる側」。
これはそういう人間が辿るべき末路であり言われるべき言葉を描いたモノである。
藤川 翔悟 31歳
文系で商社に勤めて海外に行く事もあるエリートの底辺ビジネスマン。
小学生だった頃から演技をするのが得意だった彼はリア充に上手く取り入って寄生して甘い汁を吸い続けた。
調子に乗っていた彼は酷かった。
試験一週間前に話しかけてきた奴を強制的に坊主にしてクラス全員を巻き込む形で責任を分散させるというカスだった。
相手が仕返しで何かしたら逆ギレも辞さない徹底的だった。
彼はスクールカーストの中で社会的上位にいられる自分が勝者である事は確実だった。
だがそれは高校卒業と同時に終わりを迎えた。
全く新しい環境になれば当然自分への評価も変わる。
寄生できなくなりその他大勢へと落ちた自分自身を彼は認めざるを得なくなった。
そして同窓会があった。
高校の同窓会は一年の中で彼が唯一「人間らしく」振る舞える機会。
だが今回は違った
高1~高3にかけて行っていた態度をよく思わない人間がいたのだ。
よりによってそれは彼の当時の仲間であった大宮 聡だった。
「藤川、高校時代ヤンチャなフリしてたよな。」
「大宮、それはお前だろ。」
普通なら笑いながら言っていたであろう。
だが大宮は笑っていなかった。
冷たい目で藤川を見ていたのだ。
「佐藤を知ってるか?」
「いたかな?」
「ああいたよ。お前が散々“今はまだ友達じゃない”とかいってその場で背を向けたりした彼だよ。」
藤川は面食らっていた。
大宮は確かにその場にいた。本来ならばそいつも同罪。なぜなら大宮もその場でニヤついていたからだ。
「何が言いたいんだよ?」
「お前って心狭いだけの背伸びしてたんだなーって思ってたね。俺が何でニヤついていたかわかるか?
彼がそうされてるのをみて笑ってたんじゃないよ。お前を嘲笑していたんだよ。子供っぽくてね。」
「何だと!?」
「いつから一人でいたらダメとか仲間がいれば強いとかになったんだ?誰が決めた?
一人でいちゃいけないとか最低でも二人でとかその方がおかしいとは思わないのか?」
大宮の眼に自分への哀れみがあるのに気づいた藤川は大宮の顔をにらんだ。
それは友情とはかけはなれた怒りだった。
「はっきり言う。あの時のお前は彼未満だ。」
(俺が佐藤未満だと?あの小柄なブサイクでオタクで運動音痴でコミュ障レベルな彼未満!?)
「俺ね彼の性格をよーく考え直してみたんだ。誰かがあーだこーだいってたけどね
彼は絶対“他人からされない限りしない”んだよ。大義名分も正当性もない行動はとらない。」
「俺が悪いっていうのか!?」
「ああそうだよ。彼はこの場にはいない。ただ俺がもし彼ならお前の行動をあげつらってるね。
お前彼が時折お前の後ろにいてにらんでたの気づかなかったのか?怒りで拳を振り上げてる事に
気がつかなかったのか!?」
「あいつそんな事していたのか。」
「普通は気づくね。言っておくが今回俺がお前にこう言ってるのに彼は関係無いぞ。
お前を再評価した時に行動を振り返ったら自然と結論に至った。」
藤川は逃げるように言い訳してその場を後にした。
数か月後 藤川は彼女に真の自分を見せた。
今まで自分は演じ続けていたのだ。
演じる事しか上手くない彼は当然フラれた。
(これが結婚までいかなくてよかった)
『普通は気づくね』
大宮の言葉が脳裏を巡った。
それが背伸びしていた自分への彼からの嫌味である事は明白。
結婚は諦めた藤川は仕事にまい進した。
10年後結婚適齢期を過ぎまだ独身である彼に届いたのは高校時代の友人からの結婚式への招待状。
その知らせは連続して舞い込んできた。
藤川は気づいた。
高校時代のグループの内独身は自分だけという事に。
一人。皆とは違う。蚊帳の外。
(違う…俺は佐藤とは違う!うわあ!)
藤川は無意味に机を叩いた。
ポンと音がした。
(なぜだ…なぜ自分だけ!)
藤川は気づいてはいなかった。演技ではなく真に性格が一致する者しかできない事に。
それは彼が高校時代思い描いたリア充のイメージだという事に。
藤川は佐藤に謝る事にした。
高校のクラスの名簿から実家へ連絡してアポイントメントをとった。
一か月後 藤川は佐藤と会った。
「藤川…」
「佐藤 ごめんな。俺は高校時代調子に乗ってた。終わってるよな。ちょっとつるむ奴がいるからって自分が強いと思ってた。」
「今頃気づいたのか?」
佐藤は笑った。
「ああ。」
沈黙が流れた。
「今何歳だ?」
「41歳。」
「そういう事じゃないよ。なんでその歳になるまで気が付かなかった?もう手遅れだよ!」
「うっ…」
「あの時期どんだけお前を殴りたかったか考えようね。やったら退学だからしなかっただけだよ。」
「それ程だったのか。」
「ああそうだよ!もういい!お前が何を考えて謝りに来たのかわからないけどお前と話す意味等もう無い!」
佐藤は椅子を蹴るとその場を後にした。
後には机の上で頭を抱える藤川だけが残された。
10年後
51歳となった藤川はうつ病を発症し首を吊った。
遺体はアパートの管理人が発見した。
彼の墓の前で佐藤と大宮は再会。
花を供えて去って行った。
完