震源東へ連鎖の懸念 3断層に沿い多発
14日の熊本地震を上回るマグニチュード(M)7・3を観測した16日未明の地震は、強い揺れを引き起こし、九州に甚大な被害をもたらした。熊本地震について政府は15日、日奈久(ひなぐ)断層帯(約81キロ)の北端付近が引き起こしたと判断。ところが16日の地震は、熊本県の阿蘇外輪山から宇土半島付近に延びる布田川(ふたがわ)断層帯(約64キロ)のずれだと専門家はみている。その後、震源域は北東側に大きく移動してきており、地震が次の地震を呼ぶ連鎖が懸念されている。
気象庁は、マグニチュードが大きい16日午前1時25分の地震を「本震」と位置づけ、熊本地震をその「前震」に格下げした。
本震をもたらした今回の震源は、日奈久断層帯北端の北側を東西に走る布田川断層帯にのっている。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「16日の地震は、熊本地震をきっかけに布田川断層帯が約30キロにわたってずれたことによる地震だ」と指摘する。
震源の深さは約12キロと浅い。マグニチュードも「九州の内陸部地震ではこの100年で最大だった」(福岡管区気象台)ことが、各地の被害を大きくした。
さらに、その後の地震は特徴的な動きを見せている。15日までは熊本地震で震度7を記録した熊本県益城町が余震の主な震源域だったが、16日未明の本震以降の地震の震源域は、同県阿蘇地方、大分県など北東方向へ移動し始めている。
気象庁は熊本、阿蘇、大分の3地域の地震は「それぞれが活発」として別の地震活動と分析する。
大分県には別府湾につながる別府-万年山(はねやま)断層帯があり、高知大の岡村真特任教授(地震地質学)は同断層帯に沿ってさらに東に震源域が移る可能性も指摘する。「今後、豊後水道を震源とする地震も起こり得る。1596年の『慶長豊後地震』では別府湾沿岸で多数の死者を出した記録がある」と話す。同断層帯の先には、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)もある。
もともと、別府湾から阿蘇山などを経て長崎県の雲仙に至る区間は、地盤間の溝(別府-島原地溝帯)が走っているとされる。溝を境に南北方向に引っ張る力が岩板(プレート)にかかり、この地域にある活断層が「横ずれ」と呼ばれる動きを見せるのはこのためだ=イラスト参照。
古村教授は「地溝近辺ではこれまで、大きな揺れがなくエネルギーがたまっているエリアが多い。地震が次の地震のきっかけになる連鎖が起きる可能性は否定できない」と注意を促す。
今後の地震活動は終息していくのか。
鹿児島大の井村隆介准教授(地質学)は「今回は、本震の後に余震が続いて終息していく一般的な『本震余震型』のパターンではない」と指摘。2日前から前震が確認されていた東日本大震災(2011年)のような「前震本震型」だとみる。その上で、「今回の地震が本震なのかどうかはまだ分からない。これまで以上の大きさの本震が今後あるかもしれず、地震は1~2カ月続くことも考えられる」とみている。
=2016/04/17付 西日本新聞朝刊=