僕には二人息子が居ます。ひとりは大学生、もうひとりは大学を卒業し、社会人になったばかりです。

最近、息子たちから「とうちゃん、株って、どういう仕組みなんだよ?」と質問されました。

(ほいきた、そりゃ、俺様の専門だぜ!)とテンションを上げたのですが……社会経験がほとんど無い若者たちに、株式投資を説明するのは結構、骨が折れます。

そこで全くの初心者にもわかるように「株の極意」を解説するシリーズを始めてみる気になりました。

【株って、何?】
株とは或る事業のオーナーシップを証明する証書です。

オーナーシップ(Ownership)とは、すなわち「所有している」ということです。「俺がオーナーだ!」と言うときのOwnerと同じです。

オーナーは、主(あるじ)であり、究極的なボスであり、そのビジネスの所有者です。サラリーマンは「雇われの身」ですが、オーナーは「雇う側」です。

なぜ株式投資の話をするのに、こんなことから説明を始めるか? と言えば、「雇われの身」と「雇う側」では世界の見え方が違うからです。

つまり社畜の視点とオーナーの視点は違うということ。

たとえば就活をするとき、「やっぱり○○銀行は給与水準が高いから、あそこを第一志望にしよう!」とか「○○商事は就職人気ランキングで高いランキングを保っている」ということを気にするわけですが、これらは全て飼われる側、つまり社畜の視点です。

フェイスブックの就職試験は難関です。だから僕などがノコノコ面接に行っても瞬殺で落とされるでしょう。

フェイスブックの社員は美味しいストック・オプションを貰うために働いているわけで、それはつまり社員も「株主になること」を目指していると言えます。

ところが、この究極の目標は、なにもフェイスブックに就職しなくても実現できます。つまり株式市場でフェイスブック株を買うことでリベンジできるのです。

皆さんはこれを(馬鹿げた溜飲の下げ方だ!)と思うかも知れません。

しかし人生というものは、色々なしがらみや、ちょっとした偶然、行きがかり……そういったものに左右されがちです。

いまやっている仕事を天職と感じている人が居たならそれは幸せなことだけれど、そういう風には思えない立場に置かれた人もいるでしょう。

(自分は今、たまたまこういう仕事をやっているけれど、自分の関心領域や能力は、もっと広い)と感じている人も多い筈です。

就社は、ひとつの会社にだけしか出来ませんけど、株主になるのなら、どんな会社のオーナーにでもなれるのです。

つまり株式投資の大事な効果のひとつとして、いま自分がやっている仕事を犠牲にしなくても、余った時間で、もうひとりの自分の自己実現ができるということがあるわけです。



サラリーマンの目線が「どのくらいお給料払ってくれるの?」とか「有給休暇、消化させてくれるの?」などに行くのに対し、オーナーはヒト、モノ、カネなどの経営資源を投入した際、それがどのようなリターンを生むか? という発想をします。

つまり株主としての「目利き力」があれば、仮にフェイスブックに就職できなくてもフェイスブックの飛躍で儲けることができるのです。

【株券】
さて、株とは或る事業のオーナーシップを証明する証書だと言いましたが、普通、それは株券のカタチをとります。たとえば下はウォルト・ディズニーの株券です。

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なお実際には株券は混蔵保管といって証券会社がそれを預かる場合が殆どです。

小さなビジネスの場合、ひとりのオーナーがそのビジネスの100%を所有している場合が多いですし、数人のビジネス・パートナーが資本を持ち寄って会社を立ち上げる場合もあります。3人が均等に出資して出来た会社なら、利益は3等分……といった具合です。

しかし株式を取引所に上場しているような企業の場合、たくさんの株を出しています。その株の総数のことを発行済み株式数といいます。

米国の機関投資家、とりわけバリュー系の投資家は、ある銘柄の話に入る前に、必ず「発行済み株式数は、何株?」ということを確認してきます。つまり訓練された人間ほど、この「分け前」という視点を重視するというわけです。

例えばウォルト・ディズニーの場合、発行済み株式数は17億株です。だから皆さんがディズニー株を1株買ったとしたら、あなたはディズニーの17億分の1のオーナーになるということです。

この、(自分は株主になることでディズニーというビジネスの何分の1の事業を分け合っているんだ)という感覚を、大事にしてください。

ディズニー株はいま98ドル55¢で取引されていますが、去年の一株当たり利益は4ドル90¢でした。

つまりあなたが98.55ドル支払って手に入れた株は4.90ドルの利益を稼いだのです。その利益の一部は、直接株主に配当というカタチでキャッシュバックされます。去年のディズニーの配当は1ドル81¢でした。

言い換えればあなたが払ったおカネのうち、1.84%は、もう株主還元で戻ってきた……そういう風に考えるべきなのです。


(つづく)

大学生・新社会人のための株式入門 第2回 キャリアパスが台無しになるような事件に遭遇することに備えよ!