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 九州電力が、東日本大震災後の原発停止以降、フル稼働させてきた火力発電設備を休ませている。川内原発(鹿児島県)が再稼働し、電力の供給に余裕が出てきたからだ。老朽化した設備にムチ打って動かしてきたが、先送りしてきた修繕を本格化させる。

 JR佐世保駅から車で30分、入り組んだ海岸沿いに相浦(あいのうら)発電所(長崎県佐世保市)はある。重油を燃やして発電する石油火力だ。1号機は運転開始から42年、2号機は39年が経つ。出力は計87・5万キロワット。

 11月中旬に取材で訪れると、1、2号機とも止まっていた。ボイラーの外壁にはサビが目立つ。「東日本大震災後はフル稼働してきたが、今は一服している」と星裕所長。原発の再稼働後は、電力需要の急増に備える「待機」状態にある。

 石油火力は比較的早く発電を開始でき、需要の変化に柔軟に対応できる長所がある。一方で燃料コストが高く、通常は電力需要が多い夏や冬に動かす「ピーク電源」として使われる。

 だが、原発停止後は役割が一変。相浦発電所の稼働率は10%前後から80~90%に高まった。九電は、廃止を予定していた別の火力発電設備まで「現役復帰」させ、故障の不安を抱えながら電力供給を続けてきた。

 九電の石油火力は、相浦や豊前発電所(計100万キロワット)など4カ所あり、いずれも原発再稼働後は出番が減っている。コストが安い石炭や液化天然ガス(LNG)を燃料とする設備は動かしているが、火力全体の発電量は1年前の同じ時期から3割近く減少した。

 火力の燃料費の増加は、経営も圧迫してきた。火力発電所では2年ごとのボイラー点検などが義務づけられているが、九電は震災後、コスト削減の一環で多くを先送りしてきた。だが、原発再稼働で収支が改善しているため、15年度下半期に8カ所27基の火力発電設備のうち、7カ所10基で定期点検を行う予定だ。(長崎潤一郎)

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