【会社人間は悪くない】
前回、「就社は、ひとつの会社にだけしか出来ませんけど、株主になるのなら、どんな会社のオーナーにでもなれます」ということを述べました

(オレはこの会社に勤めて、そこで大いに会社に貢献することで、自分も大きくなってゆく……)

そういう自分のキャリアパスに対するイメージを抱くのは、ごく自然なことだし、そう考える事は、何の問題もないと思います。

つまり「会社人間」ですね。

僕自身も「会社人間」だったし、社会に出たばっかりの若者が、親のすねをかじるのではなく、自分でちゃんとおカネを稼ぎ、自立するということはとてもempowering(=ちからを得たと実感すること) です。

それ自体は、とっても素晴らしいことだと思います。

しばらくの間は「会社人間」になり切って、仕事に没頭するというのも良いでしょう。

【でも会社人間にも準備は必要だ】
ただ、それとは別個の、「私的な準備」というものも、ある時点で必要になってきます。

その「私的な準備」とは、つまり資産形成であり、これはなるべくキャリアパスから切り離しておくべきだと思います。

およそ最初から(失敗しよう!)と願いながら新社会人になる若者は居ないでしょう。

同様に、会社だって(潰れよう!)とか(従業員を冷遇しよう!)ということを経営目標に掲げる経営者は居ないと思います。

でも本人の意に反して会社の経営は悪化するし、リストラや左遷が起こるのです。

新聞を見れば、昔は「あそこなら堅い!」と言われた名門企業が、まるで蚊取り線香を嗅いだ蚊のように、力なくポトポト落ちてゆくニュースを、毎日目にします。

その背後には、何千人もの社員の人生設計が狂ってしまうということが起きているのです!

なぜ企業は失敗し、サラリーマンは左遷されたり、窓際族になったり、リストラされるのでしょうか?



その理由のひとつは、世の中の変化のペースが速すぎることによります。だから企業が環境変化についてゆけないのです。

たとえば半導体です。

僕が社会人になった頃(1980年代前半)、半導体は花形産業で、日本のシェアはぐんぐん伸びていました。

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しかしこんにち日本の半導体産業は斜陽化しています。

1995年にネットスケープが新規株式公開(IPO)されて以降、急速にインターネットが普及しました。ネットの普及はテクノロジーの栄枯盛衰のサイクルを早めました。

残念ながら日本はその流れの中で明らかな「負け組」として、あらゆる高付加価値産業分野でグローバルシェアを落としているのです。

このような巨視的な見方は、会社での日々の業務からは、なかなか得にくいと思います。でも株式投資をしていれば、前回説明した「社畜の視点」ではなく「オーナーの視点」で世の中を見る態度が身につくので、リスクに早く気がつくことができるようになるのです。

繰り返すと、世の中にはリスクが溢れています。

だから自分のキャリアパスが、自分の頑張りとは全く無縁の、もっと大きな力や、時代の流れによって台無しにされることが、あなたの社会人としての人生の中で一度や二度は、必ず起こるのです。

だから自分のキャリアパスとは別個の、「私的な準備」が必要です。

その「私的な準備」とは、つまり資産形成であり、これは自分のキャリアパスから切り離しておいてください。そうでないとリスクヘッジにならないからです。


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