テルマエ・ロマエ II
2014年05月09日
恐れ多くも世界一優秀な民族を標榜するローマ帝国の、身のほど知らずな愚か者たちの鼻っ柱をこれでもかとヘシ折ったのも記憶に新しいところだ。
しかし、あれからまだわずか2年というのに、古代ローマ人たちは、まだ己の低劣さを理解していないようだ。
そこで、偉大なる我らが【平たい顔族】はローマ帝国にトドメを刺して、厚顔無恥極まりない彼らの反骨心を粉砕するべく、「テルマエ・ロマエ」の続編を創作することを決意した。
そして遂に、このたび、「テルマエ・ロマエII」が完成の日の目を見ることになった。
今度こそ【平たい顔族】こそが世界の頂点に立つにふさわしい神国であることをローマ人に叩き込んでやろうぞ。
今頃ローマ人どもは恐怖のあまりに座りションベンしながら眠れぬ夜を過ごしているであろう。
慈悲深い我らが【平たい顔族】とは言え、ここは厳格なる父性を持ってローマ人を啓蒙せねばなるまい。
これも世界平和のため。
さあ、ローマ人よ。 目ん玉をおっぴろげて見るがよい。 耳をかっぽじって聞くがよい。
これが偉大なる我らが【平たい顔族】の、テルマエ文化の神髄だぁぁぁ!
ローマ帝国のテルマエ技師として、第一線で活躍しているルシウス。
ストイックな職人気質は我ら【平たい顔族】も大いに敬意を表するが、所詮は彫りが深いだけのローマ人だ。
2年前も勝手に我が国に一人でやって来て、好き勝手に騒いだ末に帰っていったが、彼がきちんと我らの崇高なる文化をローマ帝国の君主に伝えたのかは甚だ疑問である。
まだまだ我らの啓蒙が足りないと見える。
だからこそ今一度、ルシウスに我が国までご足労願って、偉大なる我らが【平たい顔族】の本気度を見せつけるのだ。
【ローマ人のための、平たい顔族テルマエ文化講座】
『お相撲さん』
さしものローマ人も、いきなりビックリしただろう。
【平たい顔族】には、このように【太った顔】も割といるのだ。
体質や生活態度にもよるが、ルシウスが初めて出くわした彼らは“仕事”として、頭のてっぺんからつま先まで己の手によって太らしている。
彼らこそが我らが【平たい顔族】が誇るグラディエーターなのだ。
と言っても武器を持って闘うことはしない。 あくまで生身の体一本。
相手に打撃を与えるのもグーではない。 パーだ。
直径4m55cmの円の中で、ぶつかり合いながら相手を倒したり、円の外へ出せば勝ちとなる。
無駄な血を流す必要はどこにもない。 我らが【平たい顔族】はまことに平和的な民族なのだ。
身体の能力の優劣を競う文化は、勝った負けたが全てではない。
心技体を鍛錬し、人間性を向上させることが、よりよい社会への発展と貢献につながるのだ。
頭に黒いズッキーニだと?
よく気がついたな。 ローマ人も少しは進歩したようだ。
頭にズッキーニを乗せれるのは一人前のグラディエーターだけなのだ。
最近では、売り出し中の「遠藤」という若きグラディエーターが遂にズッキーニを頭に乗せることができて本人は相当喜んでいた。
『バスクリン』
偉大なる我らが【平たい顔族】が考案・発明した画期的な魔法の粉だ。
この粉末をテルマエの湯の中に適度な量だけふりかける。
少々湯の色が変化するが、心配はいらない。
そのお湯につかってテルマエのひとときを過ごせば、あら不思議。
仕事の疲れが吹き飛び、体はポカポカ。
血行を促進させ、お肌もスベスベ。
たちどころに健康な肉体へと体調をリセットできてしまうのだ。(効果には個人差があります)
どうだ、驚いたか、凡庸なるローマ人よ。
なぜ、緑色かというと、精神の緊張を和らげてリラックス効果をもたらす色が緑色なのだ。
まあ、他にも色の種類は豊富ではあるが、何から何までテルマエの癒しの道を極めることに日々の精進を怠らない我らが【平たい顔族】の英知の象徴「バスクリン」の名をしかと胸に刻むがよい。
『マッサージ・チェア』
我が国の各地にある公衆テルマエには、一ヶ所に一台は必ず設置されているのが、マッサージ・チェアという疲労回復装置だ。
人間は疲労がたまると筋肉が硬くなって血管を圧迫し、血行不良を起こして体がこるという症状が出る。 こりをほぐして、すみやかに疲労を取り除くために、偉大なる我らが【平たい顔族】が開発したのがこの装置なのだ。
一見何の変哲もない、少々立派な座椅子に、ただ黙って座るだけ。
すると首、肩、背中、腰、太もも、ふくらはぎに至るまで、なんとも心地よい振動が椅子から伝わり、体のこりを揉みほぐしてくれるのだ。(効果には個人差があります)
もう気づいただろう、ローマ人よ。
そう。 その通りだ。 椅子の中には鍛錬に鍛錬を重ねた奴隷が一人待機しているのだ。
その奴隷は最速で1秒間に2000回の連打から、筋肉に柔らかみを与える魔法の手揉みが出来る超人なのだ。
『足つぼマット』
これはズバリ、痛みに耐える訓練装置だ。 だが他の要素もある。
テルマエとは関連性が薄いと言えなくもないが、これは何を隠そう、偉大なる我らが【平たい顔族】の心身強化を目的とした健康器具である。
人間の足の裏には多くのツボが集中している。
ここを刺激すれば五臓六腑の中の消耗箇所が判明すると同時に、滋養強壮をもたらしてくれるのだ。(効果には個人差があります)
やり方はサルでも出来る。 この足形の上に裸足で乗っかるだけだ。
ただし、日ごろから暴飲暴食など不摂生を極めてる無精者には地獄の痛みが待ち受けているので覚悟せねばならない。
『温泉リゾート』
テルマエ好きである我らが【平たい顔族】の湯文化は、「健康ランド」や「スーパー銭湯」などの派生レジャーを生み出した。
もはや、近所の親父が濡れタオルを頭にのっけて、あっつい湯に首までつかっているという、まるでお湯の上に生首が浮いているような光景だけがテルマエの象徴ではなくなったのだ。
現在の我が国には老若男女が共にテルマエの場を共有し、テルマエを娯楽として楽しむ施設がたくさん存在する。
これは非常に喜ばしいことだ。
彫りは深いが脳の溝は浅いローマ人には理解が及ぶまい。
だが、娯楽施設だからといって、湯船で泳ぐクソガキ、いや無作法な御子様がたまにいるのは古代も現代も同じである。
温水プールのスライダーは本来、罪人を処罰するために作られたものだが、湯船で嬌声を発しながら遊びたい女子供のストレスを発散させる目的で主に使用されている。
『移動式露天風呂』
自然の風景を観ながら屋外でテルマエを堪能するのはひとつのロマンである。
手間ひまを惜しまなければ、大抵の場所でそれも可能な仕組みのテルマエがこの薪ストーブを使用した簡易テルマエだ。
ヒノキ製の樽風呂に、水道配管し、薪を燃やして湯を沸かす。
自然を目で楽しみ、外の美味い空気を吸いながら、あったかい湯につかるというこの風情。
そして湯につかりながら歌を唄えばなおよし。
偉大なる我らが【平たい顔族】が生んだ大スター、北島三郎の名曲「与作」(作詞・作曲:七澤公典)が、より露天風呂の心地を盛り立ててくれるだろう。
ちなみに、北島三郎殿は【平たい・・】ではなく、【彫りの深い顔族】ではないのかという疑惑が持ち上がっているが、それは大きな問題ではない。
『ウォシュレット』
偉大なる我らが【平たい顔族】が世界を驚かせた最先端技術。
マドンナやウィル・スミスがひれ伏し、2年前にはルシウスをエクスタシーのるつぼに叩き込んだトイレットの最終進化形態である。
再び我が国を訪れたルシウスにはあらためて、ウォシュレットの凄さを体感していただく。
2年前の時はフタの開閉から音楽演奏、肛門洗浄まで、壁裏に隠れた奴隷たちによる贅の限りを尽くしたおもてなしに、さぞや度肝を抜かれたであろう。
だがウォシュレットの魅力はまだまだそんなものではない。
排便時にいきむと、どうしても腸内に溜まったガスまで噴出してしまうのは仕方がないのだが、なにぶん臭いものは臭い。
しかし心配無用。 ウォシュレットにはちゃんと脱臭の機能まである。
床下に配置された奴隷たちが死に物狂いで屁を吸いこんでくれるという、まさに究極のおもてなし。
ありがたいが、人として妙な敗北感を味わうことになるだろう。 まあ気にしなくともよい。
[ ビデ ]というボタンがある。 男子は手を触れてはならない。
[ ビデ ]を押したら通常の肛門洗浄とは微妙に外れたポイントに水が噴射される。
別に害があるわけではないので、やってみれば理解できるはずだ。
そう。 タマの裏だ。 玉乃浦親方だ。(蟻の門渡りとも言うが)
この玉乃浦親方に水流が直撃すると、人によってはしばらく違う世界へ行く者もいる。
だがウォシュレットはそんな使い方をするためにあるのではない。
と言うよりも人の道を外れている。 玉乃浦親方も水責めなど本望ではない。
[ ビデ ]は婦女子の聖域と心得たもれ。
『ラーメン&餃子』
偉大なる我らが【平たい顔族】の食文化に国境はない。
好き嫌いを言わない良い子の集まりである我が国は他国の食文化を積極的に採り入れ、さらに独自の研究を重ねて我が国なりのアレンジを加えて、実にバラエティに富んだ料理の数々を輩出してきた。
単なる胃袋の慰めを超越して、もはやスタンダードと化した“味わうことを楽しむ料理”は枚挙にいとまがない。
その代表格が「ラーメン」と「餃子」だ。
どちらも唐の国が発祥であるが、偉大なる我らが【平たい顔族】はオリジナルをリスペクトしながらも自由なる独創性を持って、一大カルチャーに発展するほどの食べ物へと昇華させたのだ。
もはや各地で戦争が勃発するほどである。
四の五の言わずにまずは食してみるがよい。
パンばっかり食べていた古代ローマ人とても、舌と頬っぺが泣いて喜ぶほどの美味しさを知るであろう。
まあ、どれも元は小麦粉だが。
ローマ人の口に合うであろうか。 特に餃子などはローマ人にとっては飽きるほど食ってきた焼きパンのように見えて、食欲は沸かんだろう。
別に無理に食えとは・・・
うんまっ!
そりゃよかった。
いかがだったかな、ルシウス。
そなたの国では今、近隣諸国との平和共存路線と、侵略による領土拡大路線の意見がぶつかって政治が混乱しているようだが、なんとか丸く収まることを我らが【平たい顔族】も祈っておるぞ。
そして、我が国で学んだテルマエ文化を大いに参考にして、ハドリアヌス帝の望むテルマエの一大理想郷建設に勤しんでくれたまえ。
それにしても、この活動写真だが、ひとつ注文をつけるのなら、『浪越徳次郎』のパロディ(本作に出てくる名前は徳三郎)、『白木みのる』、『松島トモ子』など、若い人には、特に子供にはさっぱり分からんだろう。
どの世代をターゲットにしたのかチトあやふやではあるな。
カルチャーギャップのコメディはネタには事欠かないが、あちこちに飛び過ぎてしまうと本来のテーマが薄っぺらくなってしまうものだ。
この活動写真も反則スレスレだが、まあ十分楽しませてもらったな。
最後にいいセリフあったなぁ。
「そなたとの出会いが、私の宝。」 それ、使っていいかな?ルシウス。
「命を惜しむより、成すべきことに命をかける。」
それ、韓国の沈没船の船長に言うたれよ。
♪ 草津よいとこ一度はおいで~
お先にお湯いただきました~
「賢人のお言葉」
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
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