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騎士様の使い魔 作者:村沢侑

専属侍女の憂鬱(レイド×エル)

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騎士様の使い魔【本編あらすじ】

番外編は、本編を読まないとわかりにくい部分がありますので、ざっくりですがあらすじを書きました。
レイド様はライトの上司、エルサーナはライトの姉で王妃の専属侍女。
二人は過去付き合っていましたが、何年も前に事情があって別れていて、現在は付き合っていません。それを前提に、番外編をお読みください。
私は物心ついたときには孤児院にいた。
贅沢は出来なかったけど、優しいシスターが愛情を込めて面倒を見てくれて。
もうすぐ成人の17歳になる私は、やっと働けるようになる。これで孤児院に恩返しできると思った矢先に、おつかいに出た時に町のゴロツキに攫われた。
そいつらを雇って私を攫ったのは、魔女。私には魔力があるらしく、使い魔にするために攫ってきたのだそうだ。
満足に抵抗もできないまま呪いの首輪をはめられて、たちまち私は猫の姿に。黒い髪と緑の目、その私の元々の姿と同じ、緑の目の黒猫に。
呆然としてる暇もなかった。すぐに魔力の使い方を教えられて、少しでも抵抗したり失敗したりすると、魔法でお仕置きをされる。嫌で嫌でたまらないのに、魔女の首輪の呪いのせいでどこにも行けない。
でも、意外と早く開放された。魔女が捕まったから。
王様に呪いをかけていたんだって、ライトが言ってた。

ライトは、ライトリークと言って、騎士団の騎士様なんだそうだ。魔女を捕まえて、私を拾ってくれた人。

魔女は死んだけど、呪いの首輪は外れなかった。呪いも解けない。だから、私は猫のまま。
行き場のない私を、ライトが飼ってくれることになった。最初は不安だったけど、ライトは私のこと、すごくたくさん世話してくれた。だから、すぐに不安はなくなった。それに、ライトはそれはもう綺麗な人なんだ!
少し長めの金茶の髪に、少しタレ気味の濃いブラウンの瞳。私を見て笑う顔はとっても甘くて、まるで王子様みたいだ。この国の本当の王子様は、偉丈夫って感じで、ちょっと私が思ってたような王子様っぽくはなかったけど。
ライトが私を飼ってくれるようになってから、もう3ヶ月。その間に、私はすっかりライトを好きになってしまっていた。
だって、私は元々年頃の女の子だもの。あんなに優しくて素敵な人が傍にいて、好きにならないわけがない。
私をひょいっと抱き上げる大きな手。あごの下をくすぐる、無骨だけど優しい指。夜は一緒のベッドで眠る、その寝顔や、匂いや、体温。思い出すだけでドキドキする。
遊んでくれてるときは、恥ずかしくなるくらいに私に触れる。とろけそうな顔で何度も口にキスをくれるし、仰向けにひっくり返されて、ふかふかのお腹に顔を埋めてぐりぐりされたり、マッサージするように体のあちこちを優しく撫で回される。それも、『かわいい。君が好きだよ。愛してる。大切だ』なんて甘い言葉のオプション付きで。猫に本気で言ってるとは思えないけど、もう胸の奥が熱くって切なくって、心臓が壊れそう。これが、人間の姿の私にだったらいいのにって、泣きたい気持ちで思う。
私をひょいっと抱き上げる大きな手。あごの下をくすぐる、無骨だけど優しい指。夜は一緒のベッドで眠る、その寝顔や、匂いや、体温。思い出すだけでドキドキする。
遊んでくれてるときは、恥ずかしくなるくらいに私に触れる。とろけそうな顔で何度も口にキスをくれるし、仰向けにひっくり返されて、ふかふかのお腹に顔を埋めてぐりぐりされたり、マッサージするように体のあちこちを優しく撫で回される。それも、『かわいい。君が好きだよ。愛してる。大切だ』なんて甘い言葉のオプション付きで。猫に本気で言ってるとは思えないけど、もう胸の奥が熱くって切なくって、心臓が壊れそう。これが、人間の姿の私にだったらいいのにって、泣きたい気持ちで思う。
少しでも近くにいたくて、ライトが自室にいる時の定位置は、ひざの上。お仕事や読書をするときもあるから、邪魔しないように丸まって、ライトの気配を全身で感じる。それが、私の幸せの時間だった。
猫の姿でもいい。
戻れなくてもいい。
ライトの傍に、いられるなら。


そう思ってた。
…それなのに。
それなのにっっ!!

「なんで人間に戻ってるのぉぉ~っ!?」
絶叫する首元で、首輪に下がった鈴が、ちりん、と小さく鳴った。

ああ、そりゃあ嬉しいわよ。呪いをかけた張本人は死んじゃって、誰にも呪いは解けなくなった。もう人間には戻れない、そうあきらめて、泣いた夜もあった。
自由にならない手足で、うまく使えない口で、言葉の通じないもどかしさで、この3ヶ月ずっとストレスがたまってたんだから!
黒いつややかな毛皮ではなく、久しぶりに見る肌色。
ぷにぷにの肉球と、最近やっと出し入れに慣れてきた爪ではなく、少し荒れた五本指。
軽やかに飛ぶことは出来なくなったけれど、少しだけ自慢だった細い足。
それがやっと返ってきて、嬉しくないわけがない。

それが、浴槽のお湯の中、裸のライトに抱かれた膝の上でなければね!!

そうしておいしくいただかれてしまった私に、ライトは「ごめんね」と寂しそうに笑う。
「…最初から、俺はアーシェが呪いをかけられた人間だってわかってた。あの女がかけた呪いは、たいしたものじゃない。俺でも解ける程度の変化の術だ。はっきり言うと、今まで猫になっていたのは、俺が変化させてたから」
私を帰したくなくて、ライトは私を猫に変えて、自分のそばに置いたのだ。
あの、人間に戻れないと思ったときの絶望を、慟哭を、ライトは見ていたはず。だって、その時に私を抱きしめていてくれたのは彼なんだから。それが、全て彼の嘘だったなんて。でも。
私が今まで、猫好きなんだなとしか思ってなかったあれやこれやのじゃれあいは、私が人間だと認識した上、溢れ出すほどの下心でもってなされていたことだと知って、私は絶叫した。
「へっ、へっ、変態っっ!! ライトのバカ~っ!!」

ライトは、私を専属侍女にしてくれた。まだ就職が決まっていなかった私は、一もにもなく飛びついた。そして、さらわれてからやっと孤児院に帰れることになった。
もちろん、お城に上がることになったことの報告と、引っ越しの準備も兼ねて。
だけど、そうして城から下がっている間に、なんとライトは王様に私を猫に変えていた罪を告白してしまった。
同意なく人間に変化(へんげ)の術をかけ、姿を変えることは犯罪だ。ライトは謹慎となり、罪を裁く審判にかけられることになった。
だけど、自分一人がいなくなればすべて丸く収まるなんて思ったら大間違いよ! 私を好きにさせておいて、やるだけやってポイだなんて、ぜーったいに許さないんだから!

「私、だまされてなんかいません! 同意の上です! 私はただ、猫になってアルバイトをしてただけです! だって私、ライトの使い魔だから!」

審判は無事終わり、私は間もなくライトの専属侍女になって、騎士団で働き始めた。
新しい日常にはまだ慣れないけれど、居心地が良くて、何よりライトがそばに居てくれる。

ここが、私の居場所。私はここで、生きていく。
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