G7外相会合 被爆地・広島できょう開幕
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G7=主要7か国の外相会合が10日、広島市で開幕します。議長を務める日本は、被爆地での開催を「核兵器のない世界」を目指す国際的な機運を高めるきっかけにしたい考えで、岸田外務大臣は9日夜、会合終了後に発表する予定の核軍縮に関する「広島宣言」について、G7として力強いメッセージになるという見通しを示しました。
G7外相会合は、来月の伊勢志摩サミットに合わせて全国各地で行われる10の閣僚会合の最初の会合で10日、広島市で開幕します。2日間にわたって行われる外相会合は岸田外務大臣が議長を務め、初日の10日はテロや難民問題など国際的な課題への対応策を巡って意見が交わされる見通しです。
また、8年ぶりにアジアで行われることから、南シナ海での中国の軍事拠点化の動きや、北朝鮮の拉致、核や、ミサイル問題など、アジア地域の懸案についても重点的に議論されるものとみられます。
日本としては、被爆地で初めて開催される今回の会合を、「核兵器のない世界」を目指す国際的な機運を高めるきっかけにしたい考えで、今回の会合の成果の1つとして、会合終了後に核軍縮・不拡散に関する「広島宣言」を発表する方向で調整を進めています。
これに関連して岸田外務大臣は9日夜、カナダのディオン外相と会談し、「広島宣言は、核兵器のない世界に向け、核保有国と非保有国の協力の在り方を世界に示すものだ」と述べ、G7として力強いメッセージになるという見通しを示しました。
11日は、核保有国のアメリカ、イギリス、フランスをはじめ、各国の外相がそろって、広島市の原爆資料館や原爆慰霊碑などを訪れることにしていて、国際的な核軍縮の動きが停滞するなか、核保有国と非保有国がともに参加するG7として、どのようなメッセージを打ち出せるかが焦点です。
また、8年ぶりにアジアで行われることから、南シナ海での中国の軍事拠点化の動きや、北朝鮮の拉致、核や、ミサイル問題など、アジア地域の懸案についても重点的に議論されるものとみられます。
日本としては、被爆地で初めて開催される今回の会合を、「核兵器のない世界」を目指す国際的な機運を高めるきっかけにしたい考えで、今回の会合の成果の1つとして、会合終了後に核軍縮・不拡散に関する「広島宣言」を発表する方向で調整を進めています。
これに関連して岸田外務大臣は9日夜、カナダのディオン外相と会談し、「広島宣言は、核兵器のない世界に向け、核保有国と非保有国の協力の在り方を世界に示すものだ」と述べ、G7として力強いメッセージになるという見通しを示しました。
11日は、核保有国のアメリカ、イギリス、フランスをはじめ、各国の外相がそろって、広島市の原爆資料館や原爆慰霊碑などを訪れることにしていて、国際的な核軍縮の動きが停滞するなか、核保有国と非保有国がともに参加するG7として、どのようなメッセージを打ち出せるかが焦点です。
世界の核軍縮 現状は
世界では、核兵器の保有国による軍縮が停滞する一方で、核兵器が拡散する脅威は一段と高まっています。
世界各国が保有する核弾頭の数は1万5000発に上るとされ、その90%以上をアメリカとロシアが保有しています。オバマ大統領は就任早々、「核兵器のない世界」を目指すとして核軍縮に取り組む姿勢を示しましたが、その後、ウクライナ情勢などを巡って米ロ関係は冷え込み、核兵器の削減に向けた動きは停滞しています。また、この間にも核保有国のうち中国が核武装を強化していると指摘されています。
こうしたなか去年開かれた5年に1度のNPT=核拡散防止条約の再検討会議では、核軍縮の遅れにいらだつ国々が核兵器を法的に禁止すべきだと訴えましたが、核保有国が強く抵抗しました。結局、世界の核軍縮の指針ともいえる「最終文書」が採択されないまま会議は閉幕し、核軍縮を巡る厳しい現状が浮き彫りになりました。
一方、核兵器の不拡散を巡っては長年にわたって核兵器開発の疑惑が持たれていたイランが、去年、核開発を大幅に制限するのと引き換えに欧米各国が制裁を解除することで合意に達し、一定の進展が見られました。しかし、NPTからの一方的な脱退を宣言している北朝鮮は、ことし1月、国連安保理の決議を無視して4回目の核実験を強行し、安保理は先月、北朝鮮との貿易を大幅に制限するなどかつてなく厳しい制裁を科す決議を全会一致で採択しました。またNPTに加盟していないインドやパキスタンも核兵器の放棄に応じていないほか、イスラエルも核兵器の保有を続けているとみられています。
さらに、イスラム過激派組織が勢力を伸ばすなか、核兵器や核物質がテロリストの手に渡れば、大惨事につながりかねないという懸念もあり、先月ワシントンで開かれた核セキュリティーサミットでは、各国の首脳が核物質を厳しく管理していく重要性を確認しました。
世界各国が保有する核弾頭の数は1万5000発に上るとされ、その90%以上をアメリカとロシアが保有しています。オバマ大統領は就任早々、「核兵器のない世界」を目指すとして核軍縮に取り組む姿勢を示しましたが、その後、ウクライナ情勢などを巡って米ロ関係は冷え込み、核兵器の削減に向けた動きは停滞しています。また、この間にも核保有国のうち中国が核武装を強化していると指摘されています。
こうしたなか去年開かれた5年に1度のNPT=核拡散防止条約の再検討会議では、核軍縮の遅れにいらだつ国々が核兵器を法的に禁止すべきだと訴えましたが、核保有国が強く抵抗しました。結局、世界の核軍縮の指針ともいえる「最終文書」が採択されないまま会議は閉幕し、核軍縮を巡る厳しい現状が浮き彫りになりました。
一方、核兵器の不拡散を巡っては長年にわたって核兵器開発の疑惑が持たれていたイランが、去年、核開発を大幅に制限するのと引き換えに欧米各国が制裁を解除することで合意に達し、一定の進展が見られました。しかし、NPTからの一方的な脱退を宣言している北朝鮮は、ことし1月、国連安保理の決議を無視して4回目の核実験を強行し、安保理は先月、北朝鮮との貿易を大幅に制限するなどかつてなく厳しい制裁を科す決議を全会一致で採択しました。またNPTに加盟していないインドやパキスタンも核兵器の放棄に応じていないほか、イスラエルも核兵器の保有を続けているとみられています。
さらに、イスラム過激派組織が勢力を伸ばすなか、核兵器や核物質がテロリストの手に渡れば、大惨事につながりかねないという懸念もあり、先月ワシントンで開かれた核セキュリティーサミットでは、各国の首脳が核物質を厳しく管理していく重要性を確認しました。
米国務長官 広島訪問のねらい
10日から広島市で始まるG7=主要7か国の外相会合で、アメリカの閣僚として初めてケリー国務長官が被爆地、広島を訪れることについて、アメリカ政府は「核兵器のない世界を目指すオバマ政権の姿勢を示すものだ」として、核軍縮に向けた機運をいまいちど高めるきっかけとしたい考えです。
核兵器のない世界を理想に掲げるオバマ大統領は、2010年に当時のルース大使をアメリカの駐日大使として初めて広島の平和記念式典に派遣し、その後も、高官による広島や長崎への訪問が続いています。
こうしたなか、G7の外相会合に合わせて今回、ケリー長官が閣僚として初めて広島を訪れることについてアメリカ政府は、自然な流れのなかで訪問を実現できるよい環境だと考えているとみられます。
ただ、アメリカ国内には今も、原爆投下は戦争の早期終結のために必要だったという意見が根強く、アメリカ政府は、今回の訪問が原爆投下の正当性の議論につながることを懸念しています。このため今回の訪問については、過去の原爆投下について議論するものではなく「第2次世界大戦で戦死したすべての人々を追悼するものであり、核兵器のない世界を目指すオバマ政権の姿勢を示すものだ」と強調しています。
残りの任期が1年をきっているオバマ政権としては、今回のケリー長官の広島訪問を通じて、核兵器のない世界という理想は変わっていないことを強調し、核軍縮に向けた機運をいま一度高めたい考えです。
核兵器のない世界を理想に掲げるオバマ大統領は、2010年に当時のルース大使をアメリカの駐日大使として初めて広島の平和記念式典に派遣し、その後も、高官による広島や長崎への訪問が続いています。
こうしたなか、G7の外相会合に合わせて今回、ケリー長官が閣僚として初めて広島を訪れることについてアメリカ政府は、自然な流れのなかで訪問を実現できるよい環境だと考えているとみられます。
ただ、アメリカ国内には今も、原爆投下は戦争の早期終結のために必要だったという意見が根強く、アメリカ政府は、今回の訪問が原爆投下の正当性の議論につながることを懸念しています。このため今回の訪問については、過去の原爆投下について議論するものではなく「第2次世界大戦で戦死したすべての人々を追悼するものであり、核兵器のない世界を目指すオバマ政権の姿勢を示すものだ」と強調しています。
残りの任期が1年をきっているオバマ政権としては、今回のケリー長官の広島訪問を通じて、核兵器のない世界という理想は変わっていないことを強調し、核軍縮に向けた機運をいま一度高めたい考えです。
アメリカと原爆
アメリカでは広島と長崎への原爆投下について「戦争の終結を早め、多くのアメリカ兵の命を救った」などとして、正当なものだったという認識が根強くあります。1995年には首都ワシントンにあるスミソニアン博物館が、広島に原爆を落とした「エノラ・ゲイ」や、広島と長崎の被害について展示することを計画しましたが、退役軍人の団体やアメリカ議会などから「日本が戦争の被害者のような印象を与える」などと激しい反発が起き、展示は中止に追い込まれました。
一方で、時間の経過とともに、アメリカ国民の意識は徐々に変化しているという指摘もあります。去年、アメリカのシンクタンクが行った調査では、「原爆投下は正当だった」と答えた人が56%と依然、過半数に達しているものの、15年前と比較すると7ポイント低下したことが明らかになりました。
また、2009年に就任したオバマ大統領は、「核兵器のない世界」を目指す姿勢を打ち出し、核軍縮への機運を高めました。そして、翌年の2010年には、当時のルース大使をアメリカの駐日大使として初めて広島の平和記念式典に派遣しました。ルース大使は長崎の式典にも出席したほか、後任のケネディ大使も広島と長崎の式典に出席するなど、政府高官の訪問が続き、今回、アメリカの閣僚としては初めてとなるケリー国務長官の訪問につながりました。
一方で、時間の経過とともに、アメリカ国民の意識は徐々に変化しているという指摘もあります。去年、アメリカのシンクタンクが行った調査では、「原爆投下は正当だった」と答えた人が56%と依然、過半数に達しているものの、15年前と比較すると7ポイント低下したことが明らかになりました。
また、2009年に就任したオバマ大統領は、「核兵器のない世界」を目指す姿勢を打ち出し、核軍縮への機運を高めました。そして、翌年の2010年には、当時のルース大使をアメリカの駐日大使として初めて広島の平和記念式典に派遣しました。ルース大使は長崎の式典にも出席したほか、後任のケネディ大使も広島と長崎の式典に出席するなど、政府高官の訪問が続き、今回、アメリカの閣僚としては初めてとなるケリー国務長官の訪問につながりました。
核軍縮以外の焦点
欧米各国は、フランスのパリやベルギーのブリュッセルで大規模なテロ事件が相次いだことを踏まえて、テロや過激主義への対策を喫緊の課題として話し合いたい考えです。具体的には、シリアやイラクを拠点とする過激派組織IS=イスラミックステートに対する軍事作戦の現状や、テロ組織への資金の流れを断つ方策、さらに内戦が続くシリアの安定化をいかに進めていくかなどテロ対策を包括的に協議するとみられます。
また、アジア太平洋地域の安全保障を重視するアメリカは、中国が南シナ海で軍事的な活動を活発化させている問題についても議論したい考えです。アメリカ政府は、中国の習近平国家主席が去年9月、オバマ大統領との首脳会談のあと、南シナ海を軍事拠点化しないと明言したにもかかわらず中国軍が活動を続けていると不満を強めていて、各国の外相と懸念を共有するねらいがあるとみられます。
このほか、欧米各国は、国連安全保障理事会の決議を無視して、核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮やウクライナ情勢など地域情勢についても意見を交わしたい考えです。
また、アジア太平洋地域の安全保障を重視するアメリカは、中国が南シナ海で軍事的な活動を活発化させている問題についても議論したい考えです。アメリカ政府は、中国の習近平国家主席が去年9月、オバマ大統領との首脳会談のあと、南シナ海を軍事拠点化しないと明言したにもかかわらず中国軍が活動を続けていると不満を強めていて、各国の外相と懸念を共有するねらいがあるとみられます。
このほか、欧米各国は、国連安全保障理事会の決議を無視して、核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮やウクライナ情勢など地域情勢についても意見を交わしたい考えです。