小田邦彦
2016年4月8日09時46分
メダル候補の五輪出場が消えた。男子バドミントン界期待の星、桃田賢斗(けんと)選手(21)。先輩の田児賢一選手(26)と競い合い、国際大会で高額賞金を手にしてきた。
21歳の桃田選手にとって5歳年上の田児選手は、憧れの存在だった。
田児選手の母の(旧姓米倉)よし子さんは女子ダブルスの世界的な元選手で、「(田児選手も)ハイハイのころからラケットを握っていた」と関係者は言う。埼玉栄高時代の2006年にアジアジュニア選手権を日本人として初めて制覇し、07年は世界ジュニア選手権で準優勝。「10年に1人の逸材か、それ以上」と評され、12年ロンドン五輪にも出場した。
日本バドミントン協会の関係者は、田児選手について、「『お山の大将』のような存在で、いつも後輩たちを引き連れている印象」と話す。
後輩の一人、桃田選手にとって、田児選手の存在がより身近になったきっかけは、11年3月の東日本大震災だった。当時、桃田選手は福島県立富岡高校の1年生。学校が福島第一原発から20キロ圏内だったため使えず、関東地方のNTT東日本の練習場に赴き、田児選手から技術を学んだ。高校卒業後はそんな先輩を慕って、NTT東日本に進んだ。
2人が打ち込むバドミントンは日本では人気競技とまではいえないが、国際大会は華やかで賞金も高い。
世界バドミントン連盟のHPによると、世界のトップ選手が回るツアー「スーパーシリーズ(SS)」は年間12戦あり、それぞれの大会の賞金総額は、30万ドル~90万ドル(約3270万~約9810万円)。世界有数の生命保険会社が、スポンサーになっている。
7日に更新された最新の世界ランクで2位にまで上がった桃田選手は、SSの年間成績上位8人が集まって毎年12月に行われる「SSファイナル」を昨年、日本の男子シングルス選手として初めて制し、8万ドル(約872万円)の賞金を手にした。ファイナルの前のSS2大会でも優勝した昨年の獲得賞金は、少なくとも約19万ドル(約2071万円)に上る。
日本バドミントン協会によると、賞金総額の10%は日本協会が取り、残りの90%は所属チームなどを通じて選手に分配されるが、「90%のほとんどが選手自身に渡っていると思う」(日本協会関係者)。また2人のようなトップレベルの選手には、文部科学省所管の日本スポーツ振興センター(JSC)から強化費も出ており、桃田選手には昨年度90万円、田児選手には一昨年度に240万円が支給されていた。
近年、田児選手がけがに苦しんだこともあり、2人の実力は逆転していた。(小田邦彦)
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