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上咽頭がんと闘う歌手・和田光司さん(1)「5年生存率は40%」

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 アニメ「デジモンアドベンチャー」の主題歌で知られるアニメソング歌手の和田光司さん(40)が、上咽頭がんとの2度の闘いを経て、2013年秋から活動を再開した。転移したがんに放射線治療を施しながらステージに立つ。和田さんの「余命40年を目指す」生き方とは?(メディア局編集委員 鈴木美潮)

和田光司(わだ・こうじ)さん

 1974年1月29日生まれ。京都府出身。8月29日に「アニメロサマーライブ2014」(さいたまスーパーアリーナ)に出演する。10月11日には下北沢GARDENでソロライブも。詳細は公式サイト:http://solidvox.jp/index.html



「余命40年を目指す」と和田さん(撮影・高梨義之)

退屈だった入院中に書いた絵本「見えない明日と向き合った113の思い」


「地区大会から全国大会までを体験できるオリジナル高校野球盤ゲームを作りました」

 ――がんと診断されたのは?

 「2003年、デジモンシリーズに関わったアニソン歌手と声優が総出演する大きなライブを4月に控えていた時でした。耳が詰まって、右耳に水がたまった。近所の病院でみてもらったところ中耳炎と診断され、水を抜かれた」

 「水を抜いても抜いても何度もたまるので、大きな病院に行きました。そこでも中耳炎と言われたんですが、その時、首にしこりが二つあったんです。ついでにと思い、医者に話しました。医者が「大丈夫だと思うけれど、一応調べてみよう」と言うので、検査入院をした。ところが、2週間後、思いも寄らない検査結果が出ました。悪性で、首の後ろのしこりはリンパ腺に転移したもので、原発は鼻の後ろにありました。病名は上咽頭がん。手術をすれば顔半分がなくなるとのことで、取り除くことはできませんでした」


 ――その「宣告」をどう受け止めましたか。

 「言われた瞬間、『死』を思いました。歌を続けるかどうか、考える余裕はなかった」


 ――医師からはなんと?

 「『5年生存率は40%』と言われました。5割もなかったんです。それが死の恐怖に拍車をかけました。『その40%になってください』と言われたことは今でも鮮明に覚えています。すぐに入院を勧められましたが、ライブが終わるまで先延ばしして、4月のステージ上で活動休止を宣言し、闘病生活に入りました」


 ――なぜ自分が、という思いはありましたか。

 「なぜ、というより、『じゃ、どうしようか』と思っていました。死ぬことは恐怖ですが、どんなに拒否しても誰にでも訪れる。それなら、闇の中でふさぎ込んで生きていくのはもったいない」

 「闘病中に思ったことをつづり、絵本を作ったのですが、その本の最初に記した言葉が僕の病気に対する思いの軸であり、支えであり、伝えたい思いです。『泣いて治るなら泣いていましょう。落ち込んで治るなら落ち込んでいましょう。それで治るならそうするでしょう。そうでないのなら、できるだけ笑い、楽しく生きてみましょう』と」

 「闘病生活は退屈なので、気を紛らわそうと、絵本だけでなく、地区大会から全国大会までを体験できるオリジナル高校野球盤ゲームを作りました。データがノートにまとめてあってサイコロを振ってゲームをする本格的なものです。このゲームに登場する投手を主人公にした小説まで執筆したんですよ。看護師さんには勉強熱心な患者と思われていたらしいです」(続く)

 
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