犠牲者、帯状地区に集中…益城町
震度7を記録した熊本地震で死亡した9人のうち8人が、熊本県益城(ましき)町役場に近い長さ約3キロの帯状地区に集中していることが分かった。発生後、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が作製した全壊棟数の推定分布図で「最も被害が大きい」と指摘された地区と重なる。局地的に大きな揺れに見舞われ、古い家屋が倒壊したとみられる。
犠牲者が見つかった住宅の多くには、築数十年で重い瓦屋根の木造という共通点がある。死因は圧死や窒息死で、多くが建物の下敷きになったとみられる。
この地区の南側には、布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯が走る。同研究所レジリエント防災・減災研究推進センターの藤原広行センター長は「被害が多く出ているところは断層帯に近く、地盤が良くなく、古い建物がたくさん建っていたことが読み取れる」と指摘する。
推定図は全国の震度計と強震計▽地盤の揺れやすさ▽建物の造りや築年数−−から被害程度を予測するシステムで作製された。
被害集中地区を訪れると築数十年の木造住宅が重い屋根瓦が載る2階部分が1階を押しつぶすように崩れていた。そばの真新しい住宅はほとんど無傷のままだ。町役場付近では、いたるところでマンホールが地表よりも上に飛び出し道路は隆起。古い家屋が倒れ込んで道をふさいでいる地点もある。8人が犠牲となったのは町役場付近から西へ延びる県道に沿った地区だ。
地震で傾いた自宅前に会社員の橋本静雄さん(59)が座っていた。瓦屋根の築130年の母屋は柱が折れ、床が抜けている。車庫と倉庫は原形をとどめていない。付近の新しい住宅の多くがガラス破損など応急手当てができる被害だったのとは対照的だ。古い家は土台が弱いと分かっていたが「地震が起きるとは思わなかった」と、耐震工事を検討しなかったことを悔いた。「この辺りは瓦屋根の築70〜80年の家が多い。台風じゃ、びくともしなかったのに今回やられちゃった」
千葉大大学院の山崎文雄教授(都市防災工学)は「台風の被害が多い九州などは風害対策としては屋根が重い方が良い。だが、地震はまったく逆で屋根が重いと耐震性が低くなる」と指摘している。【吉川雄策、山田麻未、深津誠】