動物でヒト臓器作製許せる? 京大iPS研が意識調査
受精卵から発生過程にある動物胚に、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を混ぜて「動物性集合胚」を作る研究について、京都大iPS細胞研究所(サイラ)の藤田みさお准教授と澤井努研究員らが一般市民に意識調査を行っている。iPS細胞でヒトの臓器を動物の体内に作る研究をどこまで認めるか、宗教や倫理観なども踏まえて尋ねる。藤田准教授は「年内に結果をまとめたい。幅広い議論の材料にしてほしい」と話す。
動物性集合胚の研究は、胚の状態から個体を誕生させ、医療に応用するまでの過程がある。現在、ヒト細胞を混ぜた動物性集合胚は発生初期の受精後14日まで作製が認められているが、子宮に戻して発生をさらに進める研究を認めるか、政府などで議論が続く。研究を認める過程に関する市民の意識を詳細に尋ねる調査は初めてという。
調査では市民500人にインターネットを通して26項目の質問に答えてもらう。主に、特定の臓器を作れなくしたブタの胚にヒトiPS細胞を注入する研究を題材に、社会としてどこまで許容するべきかについて意見を聞く。選択式で、ヒトとブタの細胞が混ざった胚を作る▽ヒトの臓器を持ったブタを誕生させる▽ブタの体内にある臓器をヒトに移植する-の3段階で立場を確認する。
一方、自分や家族の細胞の提供可否も質問。動物実験への考えや信仰する宗教に関する問いもあり、背景にある価値観を確かめる。研究員約300人にも同様の調査を実施予定で、市民の意識と比較検討する。
再生医療の研究の進展を背景に、政府は動物性集合胚研究の規制を緩和する方針を打ち出している。今年1月までの約2年間、文部科学省の専門委員会で科学的側面から課題を検討し、今後は倫理的な観点からの議論に移る。
澤井研究員は「動物性集合胚の研究への規制は、諸外国でもばらつきが生じている。市民感覚を反映すればよいものでもないが、より多様性のある議論にするための材料になれば」としている。
<動物性集合胚> 受精卵から始まる動物の発生過程で、ヒトiPS細胞などを注入したもの。現在の技術では、iPS細胞の特定臓器への分化を完全にはコントロールできないため、誕生した個体には、ヒトと動物の細胞が予想外の形で混ざり合ってしまう懸念がある。
【 2016年04月15日 14時07分 】