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「女の子」を愚弄した秋元康を<断罪>する  『glee』が私たちに教えてくれたこと

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『glee/グリー シーズン1』(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)

『glee/グリー シーズン1』(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)

アメリカの人気テレビドラマ『glee』でひときわ印象的な場面がある。将来ブロードウェイ・スターになると公言し、glee部(合唱部)でも堂々リードボーカルをとるヒロイン・レイチェルが、純朴ハンサムジョック(体育会系)のフィンを巡って、学校一の美人でチアリーダーのクィンと争う場面だ。

クィンはレイチェルを「フィンのことは諦めなさい、あなた都会に出てスターになるんでしょ。あなたには才能があるじゃない、キャリアと男、二つを同時に得るなんてできないのよ。一つを手に入れたら片方は諦めなきゃいけないの」と説得しようとする。

このクィンを演じる女優が、HKT48の新曲『アインシュタインよりディアナ・アグロン』の中で歌われているダイアナ・アグロンである。

「アインシュタインよりディアナ・アグロン
テストの点以上 瞳(め)の大きさが気になる
どんなに勉強できても 愛されなきゃ意味がない
スカートをひらひらとさせて グリーのように」
(HKT48「アインシュタインよりディアナ・アグロン」より)

「女の子は可愛ければ頭空っぽでいい」と歌うこの曲がいま、「女性差別だ」として炎上している。余談ではあるが、なぜかメディアでは一貫してディアナ表記になっているが正しい発音はダイアナだ。よってこの記事内でも以後、彼女の名前はダイアナ表記で通すこととする。

世間の期待を内面化した「優等生性」を持つクィン

「 “ディアナ・アグロン”という別の誰かがいるのか?」と思うくらい、この曲は『glee』というドラマとも、ダイアナ・アグロンという女性の実態とも全くかけ離れていた……というよりまさに180度反対のものであった。またその歌詞の根底にある女性差別的な発想、そして若い世代への教育的視点の欠如に、gleek(gleeのファンの意)のみならず多くの人たちが怒りを示した。

『glee』は2009年にドラマのヒットメーカーであるライアン・マーフィーが脚本、プロデュースしたミュージカルドラマだ。米国のFOXが放送すると瞬く間に若者中心に人気に火がつき、全世界に波及した。使用される楽曲が現在のヒットチューンのみならず、懐かしの曲がアップテンポにアレンジされていたり、世代の異なる他アーティストの曲とマッシュアップして物語に盛り込まれていることから、人気は子供世代に留まらず親世代、大人世代にも広まっていった。

この作品のアメリカドラマ史上における革命的な点は、なによりも出て来る登場人物のDiversity(多様性)にある。これまでの青春群像劇というと、見目麗しい白人男女が中心だったが、マッキンリー高校glee部“New Directions”メンバーはアフリカ系、ヒスパニック、アジア系、車椅子に乗った身体障害者、プラスサイズ(ぽっちゃり体型)の男女、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーによって構成され、レギュラーの脇役にはダウン症の少女もいる。つまりこれまでの青春ドラマには存在しないことになっていた、しかし現実にはちゃんと存在するマイノリティたちが物語の中心にいるのだ。

しかもそれまでの映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』やドラマ『SATC』における、ヒロインをかいがいしく導き助ける妖精のような役割しかもたないゲイ友だちの描写と違って、このドラマにおけるマイノリティたちはそれぞれに自我を持って自分の利益のために行動するのだ。『glee』以降はアメリカドラマにおける登場人物たちの人種的多様性、そしてジェンダー描写の幅は格段に広がり、飾り物のような存在ではないマイノリティがメインのキャラクターとして登場するのが普通のことになった。

プロデューサーのライアン・マーフィーはマイノリティを主役に据えることによって、社会の抑圧を、そしてこの社会における人々を画一化させようと縛りつける空気をあぶり出し、「そこから自由になろう」と見る人を喝破する。その際、世間の規範をあらかじめ取り込み、完璧にそれに応えようとしている存在がクィン(ダイアナ・アグロン)なのである。このドラマにおいて彼女の美貌とは非凡さや特権的地位ではなく、「世間に求められるものを完璧に応じようとする彼女の優等生性」を表しているにすぎない。

(注:ここから激しくネタバレをしていますので、気になる方はどうぞ本編シーズン3までをご覧になってからお読みください)

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コメント

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7 :
2016年04月15日 19:29

そもそもこの歌詞のコンセプトってなんなの?
HKTってのはこういう感じなの?
この歌詞を否定する歌を作るための前フリならわかるけど。
そうじゃないなら、3流SF映画のディストピア政府が作る歌詞みたい。
今2016年だけど、こんな1920年位のバカな奴が書くような歌詞を影響力がある大物が書くってヤバくね?
あと、スルーはできないでしょ。こんなん。
早め早めに意義を唱えなきゃ、沈黙は肯定って捉えてどんどん嫌な方に流れるに決まってんじゃん。

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6 :
2016年04月15日 19:12

そう。
秋元嫌いだよね。

いつだったろう。
「我々(構成作家には?かなぁ)、身分や収入の保証がない」とか。

よく言うよ。
おニャン子でまず一稼ぎし、高井をつまみ食い。
とんねるずと蜜月、そして今、AKB関連。

もういい歳こいたジジィは、さっさと年金貰うまでもなく、隠居せいな。

返信
5 :
2016年04月15日 17:13

「AKBが嫌い」じゃなくて
「秋元康が大嫌い」なんだよ。

返信
4 :
2016年04月15日 17:04

触れない方がいいよ。

秋元でしょ? どうせ炎上商法狙いだって。騒いだら、あの男の思うツボ。スルーが正解だと思うよ。

返信
3 :
2016年04月15日 16:54

こういう歌詞っていろいろあると思うけどね

「AKB嫌い病」な人達もあいかわらずだね笑

返信
2 :
2016年04月15日 16:28

HKTのファン層に女は少ないんだろうか。
これをファンのおっさんが喜ぶ少女アイドル像だと秋元氏が思っているからこういう歌詞を書いているんだろうな。
ドルオタのおっさんたちもバカだと思われていることを怒ったほうがいいと思う。

彼の発言を全面的に擁護するわけじゃないが、この間炎上した赤枝議員のキャバクラ発言は「教育をないがしろにして漠然とキャバクラへ進み、知識のないまま子供を生んだりするから義務教育をしっかりしたい」という趣旨だったと思う。ほんと、高校に行くのも大事だけど、中学で性教育やジェンダー教育をもっとしっかりやってほしい。下品とか隠すべきこと、自分で知ることなんていうのは大間違いで、年をとっても知る機会がないままの人も多いと思う。大事な教育をしてほしいな・・・

長文書いて思ったけどここで叫んでも届かないな・・・・

返信
1 :
2016年04月15日 16:06

幼さを売るアイドルを作ってるんだからしょうがない。
気づいた人達で変えてこう!

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