以前、記事で救急隊員の耳が聞こえない人への対応についてチラっと書きましたが、これに対してすごく反響がありお問い合わせを多くいただきました。ありがとうございます。
救急車の呼び方が書いてあるのはコチラ
救急隊員の耳が聞こえない人への対応についてはコチラ
また、茨城県や栃木県で大規模な水害があったこと、被災者のご無事をお祈りしております。
そしてこれに関して、「災害時の避難とかってどうなっているの?」というお問い合わせもあったので、今日はこれを書いてみます。
聞こえない人の災害対策はどうなっているの?
耳が聞こえない人(高齢難聴なども含む)の中には、一人暮らしをしている人や家族全員耳が聞こえないという家庭も珍しくありません。
また、聞こえるご家族と暮らしている方でも、24時間聞こえる方がそばにいるわけではありません。
そのため、どんな人でも自分の身を守るために災害対策は必要になってきます。
なお、2006年以降全ての住宅・アパート・共同住宅などに火災警報器設置が義務化されています。
→参考URL
しかし、一般的に売られている災害対策のためのグッズは「音」中心なので、耳が聞こえない方々(高齢難聴なども含む)の中にはそれを使うことができない方もいます。
そういう方々のために、特別にそういう方々のために作られているものがあります。
そして、光・文字・振動(バイブ)で災害発生のお知らせをしてくれます。
★高齢者など耳が遠くなった方々にも有効です。また、「日常生活用具の給付」として申請可能なものの場合は、市町村の障害福祉課などに行く必要があります。
様々な住宅用火災警報器
無線タイプ、煙式。日本消防検定協会認定商品。(日常生活用具の給付対応)
これは天井や壁につけるもので、この他に腕時計型や携帯型、光の壁掛け型、枕の下にセットするバイブと連動して警報が鳴るものです。
※市町村の条例によっては熱式タイプは認められていないものがあるため、煙式の方が多いようです
ケーブル接続タイプ(日常生活用具の給付対応)
匂いで知らせるタイプ(日常生活用具の給付対応)※県による?)
このような日常生活用具の給付対象となっているものの購入は、まずご自分が住んでおられる地域の市役所(区役所)の障がい者支援課に行って手続きする必要があります。
ただし、市町村民税所得割額が46万円以上(市町村によって金額が違うかも)の世帯は対象外になります。もう一つ、介護保険の適用を受けることができる方は介護保険制度が優先されるようです。
その他(日常生活用具の給付対応なし)
これは給付として認定しているものではないので、普通に購入する必要があります。
なかなか普及しない火災警報器
他にも様々なものがあるようですが、残念なことに聴覚障害者用の火災警報器は本体だけで2万いくものも多く、また更に付属品(4-5万ほど)も買うとなるともっとかかってしまうということで躊躇している方も多く、普及はまだまだのようです・・
でも、今は厚労省の統計によると、およそ1000人に3人が聴覚障害者(=日本全体でおよそ36万人)、日本医師会によると高齢難聴も含む聴覚障害者はおよそ1000万人以上とされています。
もっと多くの方々にこの機器の存在を知っていただき、使っていただけたらもっと値段も安くなって買いやすくなるのでは・・・と思っています。
なのでもしよろしければ、高齢難聴や事故などで聞こえにくくなってしまったご家族・知人などがおられましたら、この福祉機器を教えてあげていただけると嬉しいです(^^)
聞こえない人の避難対策はどうなっているの?
阪神大震災、東北関東大震災に引き続き、各地で集中豪雨など大きな災害が相次いでいます。
その都度、その地域の方々は避難生活を強いられてきました。
そういう時、聞こえない人たちはどうしていたの?というお問い合わせについてちょっと調べてみました。
※残念ながら阪神の時の情報はあまりなかったので、3.11以降を中心にまとめていきます。
3.11、逃げ遅れた聴覚障害者
NHK調査によると、岩手・宮城・福島3県の聴覚障害者はおよそ3800人。そのうち、津波が来た地域に住んでいた聴覚障害者は何人いたのかは分かりませんが、亡くなられた方は約80人だと言われています。
そしてこの聴覚障害者の死亡率は健常者を含めた全体の死亡率の2倍だということが分かりました。
どうして逃げ遅れたの?
実際に津波から逃げて助かった聴覚障害者の話によると、
・津波警報が聞こえなかった
・周りが走っているのを見て、地震が起こったから確認しに家に戻っているのだろうと思っていた
この2点が多かったようです。
亡くなられた方々はおそらくそれが原因で逃げ遅れてしまい、津波に巻き込まれてしまったのが多いのではと思います。
このうちの「津波警報が聞こえなかった」というのは大きいです。家に警報機はあれど、まさか外にまで持ち歩いていくわけにはいかないし・・。
そして助かった方々は皆さん、口をそろえて「近所の人が教えてくれた」「家族が家にまで来て連れて行ってくれた」と言っています。
そして、避難所に行ってはじめて「津波が来た」ことを知った人もいるようです。
やはり、地域とのコミュニティ、また、近所の方々の理解も大事になってくるようですね。
こういう被災地の聴覚障害者の状況を広めるため、映像作家今村彩子さんという方が実際に被災地に出向いて様々な耳が聞こえない方々をインタビューし、それをもとに「架け橋 きこえなかった3.11」という映画を制作し放映しました。
今村氏のスタジオHP
映画のPRサイト
今村氏のインタビューコラム
この映画からも様々なことが分かるかと思いますので、もしよろしければ是非手にとってみてください。STUDIO AYAというサイトから購入ができます。
避難警報などの警報メールの落とし穴
少し話はそれますが・・
今はiPhoneなどのスマホ普及と大震災の教訓を生かして、エリアメールや警報メールがスマホに届くようになりました。これにより、外出時でも警報が分かるから安心なんじゃない?と思う方もいると思いますが・・・実はこんな落とし穴も。
宮城県大崎市も茨城と同じく町が浸水。ニュースによると夜中から朝にかけて浸水したらしい。 携帯に届く避難警報はバイブもあるが、寝てる時は気づかない。(私は。)聴覚障害者用の目覚ましバイブ機械があるので、避難警報が携帯に届いたら目覚ましバイブ機に転送してバイブが鳴るようにできたら。
— ねここ (@mm_satou) 2015, 9月 11
これは私のTweetです。
確かに皆さんが持っている携帯やiPhoneなどに届くエリアメールや避難警報などは、外出時に気づくことが出来てとても良いのですが・・・気になることがあります。
・iPhoneなどの携帯を常に持っていないと気づかない
・寝ている時は分からない
常に持っていればバイブで気づくことが出来ますが、持っていない時は全く気付きません。
また、上記に色々とまとめた火災警報器との連携もありません。
(※住宅用火災警報器はあくまでも家の中での火災発生時のものなので)
そのため、携帯を持っていない時や寝ている時は全く分かりません(^^;
寝ていてもバイブで気づくことができる方もいますが、私は寝ているとバイブでも分かりません(泣)
なので、夫(耳が聞こえる方です)や家族に起こされて初めて気づいた時なんかはぞっとします・・・。
携帯などに警報メールが届いたら同時に住宅用火災警報器などにも届いて、バイブや光が鳴るようにできたらもっともっと嬉しいなぁと思います。
これは今後の技術の進歩にぜひとも!期待したいところです。
避難所での生活はどうなっていたの?
さて、3.11の津波で無事逃げることができて避難所で生活することになったとしても。。避難所でも聴覚障害者は様々な問題があったようです。
・食料の配給アナウンスが聞こえなかった
・医者の往診や無料散髪などの避難所の放送が分からなかった(手話通訳者が避難所に来た時にたまたま医者の往診などの放送があり、それを通訳してもらった時に「そういう情報を今まで全部逃していたのかと思うとビックリしたし怖くなった」と言っておられた方もいます)
・避難所に必ず通訳者がいるわけではないため、周囲とのコミュニケーションが難しかった
(筆談したくても紙やペンがなくて困ったりなどもあったようです)
・避難所に置いてあるテレビは字幕や手話通訳のワイプ画面もなく情報が分からなかった
・ラジオの場合はもっと分からなかった
・補聴器の電池の配給がなく、補聴器の電池切れで困った
・避難所ではみんなピリピリしているため、大きな音を立てると睨まれたりしたが、自分では自分が立てている生活音が聞こえないため、いつもビクビクしていた
・・などなど。
3.11の時も、仙台市の聴覚障害者協会や手話通訳者の方々は震災後、あちこちの避難所を周り「聞こえない人はいるか」探しまわり、どこの避難所に聞こえない人が何人いるかの把握に苦労したそうです。
そして、把握できた避難所には毎日のように聴覚障害者協会の人と通訳者が出向き、色々と通訳したり、話を聞いたりして状況把握のために動いたそうです。
このことは上記、今村さんの映画にも盛り込まれています。
聞こえない方々へのフォローでこれがあれば助かると思うこと
このように、聞こえない方々が避難所で困ったことを生かして、今後は各地の避難所で下記のようなフォローができるようになってもらえたら嬉しいなと思うことを書いてみました。
①テレビは字幕放送もできるようにする(字幕表示もできるリモコンも用意する)
※今のデジタル化されたテレビでは、リモコンの設定次第で字幕が表示されるようになります。ただし字幕を嫌がる方々も多いので、字幕を表示する時は前もって避難所にいる方々に話しておいたほうが良いかもしれません。できれば手話通訳者がいる時に手話通訳者から話しておいてもらえるとスムーズかも。
ちなみに・・・日本のテレビはまだまだこんなに遅れています!
最大の情報源であるテレビでは、字幕や手話通訳が重要だ。欧米ではかなり多くの番組に手話通訳が付いている。また、お隣の韓国でも放送法を改正し、聴覚障害者の支援を義務づけ、2016年までに字幕は100%、手話は5%の達成目標を定めた。
一方、日本のテレビでは総放送時間の4割強に字幕が出るが、くわしく内容を追える手話通訳付きはNHK教育放送が2%ほどで、他はほとんどなく、「努力目標」にすらなっていない。
引用元→東日本大震災、聴覚・視覚障害者の死亡率は2倍 避難所でも大きなハンディ負う : J-CASTニュース
日本でも早くテレビでの字幕や手話ワイプの普及が広まって欲しいです。
また、字幕や手話ワイプはON/OFFが自由にできるようにすれば、不要な方も必要な方も公平に楽しめるのではないでしょうか。
②筆談できるものを用意する
※手話通訳者がいつでもいるわけではないので、誰でも自由に筆談できるようにすると助かります。紙やペンだけでもOKですが、他にも繰り返し使える筆談グッズもあるので参考にしてみてください。 また、避難所は時々真っ暗になることもあります。そういう時は筆談しても見えなくなってしまうので、懐中電灯もそばにあると嬉しいです。またこれは発達障害者やショックで声が出なくなった方々などにも有効な場合があります。
ケガをした、または紙やペンがないなどで筆談できない場合は、空文字(空中に指で文字を書く)または床や手のひらなどに指で文字を書くなどして聞こえない人に伝えていただくこともできます
③配給や医者往診などのアナウンス時は、アナウンスだけでなく掲示板に張ったり、直接声をかけて知らせたりする
※できれば直接声をかけて頂けると一番助かります。高齢者の方にも必要ですね。
④聴覚障害者の中には軽い難聴の方、手話が出来ない方もいるので、どういう方法でコミュニケーションを取れば良いのかをまず相手に確認する
※障害の程度や重さなどによって、筆談が必要な方、手話が必要な方、また大きい声が必要な方など求めることはバラバラです。そしてもし相手が「手話が必要」と言ってきても、こちらが手話が出来ない場合は筆談、または身振り手振りで話してもらえるとありがたいです。
参考までに、全日本ろうあ連盟などから出ている「避難所での聴覚障害者への支援のマニュアル」も載せておきます。一度目を通して頂けると嬉しいです(^^)
全日本ろうあ連盟サイト
障害のある方への生活支援サイト
リンク→障害者からのお願い「大地震(災害)の時助けてください!」:のーまらいふ杉並
障害保険福祉研究情報システム
その他、Twitterに寄せられた支援要望まとめ
聞こえない方々が自分で気をつけることは何がある?
私は実際に被災した経験がないので、色々な方々の話を聞いての要約になりますが・・
大体以下のことを気をつけたほうがいいというアドバイスが多かったのでまとめておきます。
【日頃から気をつけておくこと】
・ご近所さんなど周囲との関わりを持つように心がける
・いざという時にも大丈夫なように避難場所の確認
・市役所に行って、万が一被災した時の避難場所での情報保障を確認しておく
・地域の手話通訳者や他の聴覚障害者との連携を持っておく
【常に身につけておくと良い物】
・ホイッスル
※声を出して助けを呼ぶことができない、または建物の下敷きになって外の様子が聞こえないなどという時に笛を鳴らすと良い
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・小さなノートとペン、または小さなボード
※何かあった時のための筆談用として
・モバイルバッテリー
※聞こえない人にとって、Twitterなどのネットから得られる情報はとても重要です。避難所の配給時間なども分かるし。
その他、耳が聞こえない方々への支援方法について(過去の例)
ソフトバンクからの支援
3.11以降、聴覚障害者は様々な情報を自分でキャッチすることが困難な状況が多かったのですが、それを危惧した宮城県教育大学の特別支援教育講座で准教授として教鞭をとっておられる松崎丈先生が、ソフトバンクの孫社長に向けてこのようなTweetをしました。
松崎さんが孫社長に向けて発信したツイート
このTweetに対し、ソフトバンクの孫社長はこう答えて下さりました。
孫社長の松崎さんへのリプライ内容(NPO法人みやぎ・せんだい中途失聴難聴者協会副理事長の松崎さんの要望に対し、被災地の聴覚障害者向けにiPadやiPhoneを提供したというまとめです。)
すごいですね!!!
こういう案を思いついた松崎さんもすごいですが、それに対し「やりましょう」と即座に答えて下さった孫社長にも感服の思いです。
また、この時は松崎さんを中心とした全日本難聴者協会やろうあ協会だけでなく、株式会社プラスヴォイス(聞こえない方々向けに代理で電話をするサービス(=代理電話サービスor電話リレーサービス)などを行なっている会社)の三浦宏之社長もともに、被災した聞こえない方々への支援活動を頑張ってくれていたそうです。本当に感謝ですね。
リンク→
株式会社プラスヴォイス
URL→株式会社 プラスヴォイス
代理電話サービスの説明(参考)
※電話リレーサービスを行なっている会社は株式会社プラスヴォイスだけでなく他にもいくつかあります。皆さん色々としていただけて本当に感謝しています!
最後に
今後も様々な災害が起こる時があり、また、自分の身に降り掛かってくることもあるかと思います。
また、被災時は、何よりも「早い情報」が重要です。その情報を早く得られるかどうかが分かれ目になることもあります。
そういう時にこそ自分で身を守れるよう、今のうちに様々な知識を得たり、また周りの方々にも伝えたりしていけると良いですね。
それだけでなく、周囲の方々も「聞こえない人もいる」ということを頭の片隅にでも入れてもらえるとすごく助かります!
それが誰かの命を助けることにも繋がります。
よろしくお願いします(^^)