韓国与党敗北 日韓協調の継続を望む
韓国総選挙で与党セヌリ党が大敗を喫した。これによって、朴槿恵(パククネ)大統領の求心力低下が見込まれる。ただし、ようやく改善へ向けて進み始めた日韓関係を逆戻りさせないよう望みたい。
朴大統領は3年前の就任以降、自らに批判的な野党や左派系団体に対して厳しい姿勢を取ってきた。政権の中間評価でもある今回の選挙では、与党内で大統領と距離を置く勢力まで排除しようとしたとされる。与党の内紛は結局、野党側を利するだけだった。
選挙結果は、来年末の大統領選をにらんだ政界の動きを反映したものだ。韓国の大統領は再選を禁じられており、朴大統領の残り任期は2年を切っている。力ずくで正面突破を図る政権運営を朴大統領が続けるなら、これまで以上に強い抵抗に直面するだろう。
懸念されるのは、北朝鮮の核問題に対する日米韓の連携や、慰安婦問題に関する日韓合意の履行に悪影響が出ることだ。
韓国社会は金大中(キムデジュン)政権(1998〜2003年)以降、北朝鮮との対話・交流を重視する進歩派とそれに批判的な保守派に割れてきた。北朝鮮による砲撃事件や核実験があっても、北朝鮮への視点を軸とする理念対立の構図は変わっていない。
北朝鮮は、進歩派の最大野党「共に民主党」が大勝したことを受けて韓国を揺さぶろうとするだろう。それは、日米韓の連携にひびを入れることも狙うものだ。
日韓の間では昨年末、元慰安婦を支援する財団を韓国政府が作り、日本政府が10億円を拠出することが合意された。韓国側はさらに、ソウルの日本大使館前に建つ少女像の撤去に向けて努力することになった。
合意を履行しようとする朴大統領の意思は固いとされる。「共に民主党」の選挙戦を指揮した金鍾仁(キムジョンイン)非常対策委員会代表も選挙期間中に「国家間の合意であり、修正できる状況にはない」と述べている。
それでも野党の一部には日本との再交渉を求める声があり、政権攻撃の材料にされる恐れもある。特に少女像移転は韓国の国民の間に拒否感が強い。合意の履行には困難が付きまとうはずだ。
しかし、慰安婦問題での日韓合意はいまや両国関係を前向きな軌道に乗せる基盤となっている。さらに日韓関係の安定は日米韓の連携にとって欠かせない。
日本側にも注文がある。韓国の政局不安定化に乗じて日本の政治家が合意を傷つけるような発言をすれば、韓国の国民感情を再び刺激することになる。日本側には、韓国側の努力を尊重し、合意の精神を守る姿勢が必要である。