宇宙は138億年前のビッグバンで誕生したという説には…
宇宙は138億年前のビッグバンで誕生したという説には、宇宙には始まりも終わりもないとする説が長らく対抗した。だが後者では説明のつかないことがある。それは人類が他の知的生命の存在を示すものに出合っていない事実である▲もし宇宙が無限の昔からあったのなら、宇宙探査をする知的生命も数限りなく生まれているはずだ。ならば太陽系にも人工物や電波が飛び交っていなければおかしい。人類の孤独こそが宇宙に始まりがあった証拠だという▲もちろん138億年の時間も多くの知的生命を生んでいるはずだが、互いに接触するには途方もない距離で隔てられている。太陽系にもっとも近い恒星、ケンタウルス座アルファ星でもその間の距離は4・3光年、今の人類の技術では到達には3万年もかかるという▲その恒星系に光速の5分の1という超高速で飛ぶ小型探査機の船団を約20年で到達させるという驚きの計画が発表された。宇宙物理学者のホーキング博士がフェイスブック創業者のザッカーバーグ氏らの協力を得て推進する人類初の太陽系外の惑星の生命探査である▲「ナノクラフト」と呼ばれる探査機は一辺数メートルの四角形の帆に地上からのレーザー光を受けて推力を得る。カメラや通信・航法機器などは切手大のチップに搭載するという。まさに恒星間の海を進むミニ帆船で、これが宇宙の大航海時代のさきがけとなるのだろうか▲「宇宙の知的生命は知的すぎて地球になど来る気にならないんだ」。人類の孤独をSF作家クラークは皮肉った。何十年か後、アルファ星の惑星住民が探査機を見つけたらどんな論議をするのだろうか。