ライフハッカー編集部 - Evernote,Webアプリ,Webサービス,ストレージ,ツール 11:00 PM
メモアプリ対決!OneNote VS. Evernote(2016年版)
『Evernote』と『OneNote』と言えば、どちらも米Lifehackerのお気に入りツールですが、前回、米Lifehackerがこの2つを比べてから、どちらのアプリも大きく変わりしました――しかも、いくつかの点では良い方向にではありません。今回は、この2つのアプリが現在どうなっているのかをご紹介しましょう。
Evernoteの変わったところ
過去1年間で、Evernoteは新しい料金プランを導入し、ウェブアプリのデザインを変更し、AndroidおよびiOS用のアプリに新機能を追加しました。
無料プランから一部の機能が消えるも、手頃な有料プランが新たに登場
料金の話から始めましょう。Evernoteに関しては、なんと言っても、これが過去1年間の一番大きな変更点ですからね。無料の「ベーシック」プランでは、もうノートをEvernoteにメールで送れなくなりました。変更される前には、ほとんどのユーザーが気に入って、よく使っていた機能だったのですが...。「IFTTT」レシピを使ってこの制限を回避することは可能ですが、メールの件名で送信先のノートブックを指定するなど、Evernoteのメール転送機能が持つ柔軟性を完全には得られないでしょう。この点はガッカリです。
でも良い面に目を向けると、Evernoteは手頃な価格の新しい有料プラン「Evernote プラス」を導入しました。年額25ドル(日本では2000円)でモバイルアプリ用の「オフラインノートブック」が利用でき、端末にインストールされたアプリをPINコードでロックできます。以前なら、この2つの機能を利用するには、年額45ドルの「プレミアム」プランに加入しなければなりませんでした。
現在のプレミアムプランの料金は年額50ドル(4000円)です。しかし、5ドル上乗せされた分、月間のアップロード容量が増えました。以前は4GBでしたが、現在は10GBです。プレミアムプランに加入すると、添付ファイルの検索や名刺のスキャン、以前に作成したノートの閲覧、PDFへの注釈の描き込み、新しいプレゼンテーションモードの利用が可能になります。
進化を続けるEvernoteのユーザーインターフェイス
昨年、Evernoteは新しいミニマルデザインのウェブクライアントをベータ版から正式版に移行しました。たしかに見栄えは良くなりましたが、同時に、この化粧直しによってウェブアプリの機能性は低下しました。たとえば、デスクトップアプリでできるような、ノートをタグで整理する、複数のタグを1度に選択するなどという操作ができなくなりました。
デスクトップアプリと言えば、Windows版にはほとんど変更はありませんが、Mac版にはいくつかアップデートが施されました。ノートエディターの改良や「Split View」、新しいキーボードショートカットなどです。
筆者が気に入っているアップデートは、ウェブ記事をすばやく集めるためのオプションが追加された「Webクリッパー」です。筆者は、メモを取るためというより、主に情報を保存するためにEvernoteを使ってるので、このアップデートはありがたいものでした。
Evernoteの新機能はほとんどがモバイルアプリ向け
EvernoteはWindowsあるいはMac用のアプリにはそれほど新機能を加えてきませんでしたが、モバイルアプリには大幅なアップデートが施されてきました。Evernoteは、AndroidおよびiOS向けに手書きサポートを追加しました。Androidの新しいEvernoteウィジェットはカスタマイズ性に優れ、ユーザーはツータップですばやくノートを作成できます(この操作は「簡易ノート」と呼ばれています)。一方、iOS用のEvernoteには、改良されたWebクリッパーと「3D Touch」サポート、「Peek」機能、「Spotlight」検索が搭載されました。
企業としてのEvernoteは迷走中?
こうした改良が加えられている一方で、Evernoteの処理スピードは一向に上がっておらず、安定感も増していません。むしろ、バグが増えて重くなり、ノートの同期に時間がかかるようになった気がします。筆者の場合、ノートがダブってしまうことが時々ありました。また、Evernoteのフォーラムなどを覗いてみると、有料ユーザーたちが、カスタマーサポートのサービスの質が低下しているようだと不平を漏らしていました。
以前から、会社に関する不吉な兆候もありました。Evernoteの共同創業者であるPhil Libin氏が昨年7月に最高経営責任者(CEO)の座を退き、その2カ月後には従業員の13パーセントが一時解雇されました。また同社は海外オフィスのうち3カ所を閉鎖しています。おそらくEvernoteは、今以上に引き締まった、意識の高い企業へと成長しつつあるのでしょう。しかし、「Evernote Food」のサポートを終了し、「Clearly」と「Skitch」(の一部バージョン)のサポートも終了したことを考えると、私たちが愛してやまないメモアプリを開発してくれた企業の行く末を心配するのはもっともな話です。
OneNoteの変わったところ
一方、OneNoteはここ数年でメキメキと力をつけ、無料の優れたクロスプラットフォーム・アプリへと成長しました。今でも最高の力を発揮するのはWindows用のデスクトップアプリですが、Microsoftは、プラットフォームの好みにかかわらず、Windowsユーザー以外の人たちがOneNoteをより有効に活用できるように、ウェブベース版と、Mac、iOS、そしてAndroid用アプリにも目を向けるようになってきました。
OneNoteにかけられていた制限はすべて撤廃
以前なら、OneNoteのフルバージョンを利用するには、「Microsoft Office」(「Office 365サブスクリプション」かスタンドアロン版ソフトウェアのどちらか一方)を購入する必要がありました。このフルバージョンでは、パスワード保護や、作成したメモの旧バージョンを閲覧できる機能、音声や動画の記録、音声検索、ノートブックへのファイルの添付と挿入などが利用できました。Microsoftは昨年2月にこれらの制限を撤廃しました。そうです、OneNoteは完全に無料になったのです。
作成したノートブックを「OneDrive」以外の場所(ローカルディスクなど)に保存できる有料版のOneNote 2016は今もあります。しかし、100パーセント無料が好きな私たちには、OneDriveへの保存で問題ないでしょう。
OneNoteはウェブ版および非Windows版のアプリを改良
クロスプラットフォームの互換性を追求し続けるMicrosoftは、iOS、Android、そしてMac用アプリはもちろん、「OneNote Online」をアップデートしてきました。
OneNote Onlineでは、ノートブックを非表示にしたり、画像をトリミングしたりなどの操作ができるようになりましたが、最近追加された一番の目玉は、音声や動画などのファイルをノートに挿入できるようになったことです。この機能は会議や講義の記録に最適です。「OneNote Clipper」もSafariとFirefoxで利用できるようになりました。
Macユーザー向けには、図形の挿入が改良され(ザッと描いた手描きの図形がより標準的で直線的な図形に変換されます)、Spotlightが使えるようになるなど検索機能も向上しました。一方、iOS用のOneNoteにはオーディオノートやSplit View、「Force Touch」および「Apple Pencil」のサポートなどの機能が追加されました。
OneNoteのもっとも便利な最新アップデートが施されたのはAndroid用アプリです。そのアップデートとは、「OneNoteバッジ」です。『Facebook Messenger』の「チャットヘッド」と同様、ワンタップでユーザーが新しいメモを作成できるように、端末の画面上にバッジが表示されます。
最後に、おそらくもっとも重要なことですが、すべてのアプリとバージョンで、ノートをOneNoteに入力するのがずっと楽になりました。自分宛にノートをメールで送信したり、Microsoftの新しいアプリ「Office Lens」を使って文書や写真、ホワイトボードに書かれたメモなどをOneNoteに挿入できたりするようになりました。OneNote Clipperもさらに機能的になりました。以前は別のウインドウに切り換えて、クリップしたウェブページを保存するノートブックやセクションを選ばなければなければなりませんでしたが、今はブラウザを離れずにノートを保存するセクションを選んだり、ウェブページの一部を保存したりすることもできるようになりました。
今もOneNoteは一部のアプリに制限あり
こうした便利なアップデートが追加されてはきましたが、OneNoteはいまだにWindows版のほうがMac版よりも優れています。たとえば、Mac版では入れ子になっているノートを折りたためません。Windows 10用のOneNoteアプリとOneNote Onlineも、使い勝手の良さではWindowsデスクトップ版にはまだ追いついていません。ですから、MicrosoftはWindows派以外のOneNoteユーザーの獲得に懸命なようですが、OneNoteアプリはいまだにWindowsデスクトップ版が最強なのです。
Evernote VS. OneNote:最大の違いは以前と同じ
EvernoteとOneNoteを分かつ最大の違いは以前と同じです。両方を試したことがある(あるいは米LHが以前に行った比較をお読みになった)方なら、両者の大きな違いをすでにご存知でしょう。
- ユーザーインターフェイス:タグとセクションを備えるOneNoteは、見た目も使い心地も紙のノートのデジタル版といった感じです。それに対して、ノートのインターフェイスはシンプルながら、パワフルなタグ付け機能を兼ね備えたEvernoteは、ファイルキャビネットに近いと言えるでしょう。
- ノートの書式設定:Evernoteは、リッチテキスト形式のノートに対して、強調表示やチェックリストをはじめとして、書式設定の優れたオプションを提供してくれます。Evernoteを使って小説を書いているユーザーもいるくらいです。しかし、OneNoteはさらに強力です。ページテンプレートを使ったり作ったりでき、要素をページの好きな場所に配置できます(たとえば、チェックリストを画像やテキストの横に並べる、など)。ただし、OneNoteはたくさんのメニュー項目がリボンに詰め込まれているので、もっとスリムでベーシックなノートエディターがほしいという方は、Evernoteが好みに合うでしょう。
- モバイルアプリ:モバイルのインターフェイスと機能性という点では、Evernoteは今も、OneNoteをはるかに上回っています(OneNoteのモバイルアプリも進歩を遂げてきてはいるのですが...)。Evernoteには、ノートの書式設定ツールやリマインダー、ノートを共有するためのクイックリンクなど、さまざまな機能が用意されています。一方、OneNoteでは、データ接続なしでもノートブックへのアクセスが可能です。この操作は、有料会員でない限り、Evernoteではできません。
- ウェブクリップ、ブラウザとの一体化:最強は今もEvernoteのクリップツールで、作成したノートをGoogleの検索結果に含めることができます。ウェブページをすばやくキャプチャーし、個人用データベースのように、集めた情報を検索するためのベターな選択肢はEvernoteでしょう。
- WindowsおよびOfficeとの一体化:一方、OneNoteがほかのOfficeアプリと良く馴染むのはさすがといったところです。また、Windows用の特別なキーボードショートカットを使って、すばやくOneNoteでノートを作成したり、スクリーンショットをOneNoteアプリに送ったりなどといった操作も可能です。
結論:Evernoteは今も最強のウェブクリップツール、OneNoteは万人向けのより優れたデジタルノートブックになりつつある
これら2つのアプリは目的こそ似ていますが、併用が可能なほどに両者の違いは明確です。使っているうちに、どちらが自分に向いているのかがわかってくるでしょう。情報を招集および整理するという点、そしてモバイル端末でノートを作成するという点では、Evernoteのほうが優れています(ノートにオフラインでアクセスするには料金を支払わなければなりませんが)。それに対して、独創的なノート作成という点では、OneNoteのほうが優れており、Evernoteがプレミアムプランで提供する機能(モバイル端末でのノートへのオフラインアクセスや添付ファイル内の検索、PDFへの注釈の書き込みなど)の多くが無料で利用できます。また、保存スペースもOneNoteのほうが大きく、ほかのOfficeアプリと共有で、15GBが無料で利用できます。Evernoteでは、無料で利用できるのは月間60MBです。
まだ迷っているという方のために、参考記事をいくつか紹介しておきます。
- Evernoteの良さがイマイチわからない人への、再チャレンジガイド
- LH質問箱:Evernoteって便利? 何がそんなにすごいの?
- OneNoteを使いこなすための7つのコツ(英文)
- OneNoteとOutlookを組み合わせてパワフルなプロジェクト管理システムをつくろう(英文)
OneNoteへの乗り換えを検討しているEvernoteユーザーに向けて、Microsoftは3月11日(米国時間)、EvernoteからOneNoteへの新しいインポートツールを発表しました。いつかきっと、EvernoteもOneNoteインポーターを発表するに違いありません。
Melanie Pinola(原文/訳:阪本博希/ガリレオ)