2016年4月14日(木)

シャープは騙された?「鴻海」を叩くメディアの「経済IQ」

小宮一慶のメディア・ウオッチ【14】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
小宮 一慶 こみや・かずよし
小宮コンサルタンツ代表

小宮 一慶

1957年、大阪府生まれ。81年、京都大学法学部卒業後、東京銀行入行。86年、アメリカのダートマス大学経営大学院でMBA取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務に携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に就任。国際コンサルティングを手がける。93年、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。94年より、日本福祉サービス(現セントケア)にて、在宅介護問題に取り組む。96年、小宮コンサルタンツを設立。コンサルタント、非常勤取締役、監査役として企業経営の助言を行うほか、講演、著書を通じてビジネスマンに必要な基本スキルについて、わかりやすい言葉で指南している。明治大学大学院会計専門職研究科特任教授。近著に『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』(ディスカヴァー21)、『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(ディスカヴァー21)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)、『お金を知る技術 殖やす技術』(朝日新書)などがある。

執筆記事一覧

経営コンサルタント 小宮一慶=文
1
nextpage

「1000億円値切る」のは当然

シャープの鴻海精密工業による買収が正式に合意しました。

基本合意時の金額より約1000億円低い3888億円の株式を鴻海が買い取ることで66%の株式を取得するというものです。基本合意した後、1000億円「値切った」ということで、鴻海がだましてシャープと基本合意したように受け取られました。

画像を拡大
シャープ公式サイトより。同社は4月2日、鴻海科技集団と共同会見を大阪府堺市で開催し、鴻海科技集団を第三者割当先とする株式引受契約の締結について発表。

しかし、これは買収交渉ではよくあることです。

買収交渉では、まず、基本合意をするのが通常です。ある時点での財務諸表などの状況をベースに、どれだけの株式をいくらで買い取るかを決めるわけです。そして、その後、被買収企業(今回ならシャープ)の事業内容を精査します。

シャープのケースでは、基本合意時に明らかになっていなかった「偶発債務」が3500億円程度あることと、業績見通しが違っていたことなどが判明しました。

偶発債務とは、将来裁判で敗訴しお金を払わなければならないなど、不確定だが将来損失を被る可能性のある出来事を指します。これがシャープの場合、3500億円ほどあることが判明したのです。

また、当初は2016年3月期決算で100億円の営業利益を予想していましたが、最終的には1700億円の赤字ということになりました。これらは基本合意時には判明していなかったことですから、最終合意に向けて買収価格を下げたのは、このような買収交渉を何度となく見てきた私には、それほど驚きに当たらないことでした。

買収交渉ではよくある話なのです。

PickUp