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「おかあさんといっしょ」とは何ものか~「たくみおねえさん」の交代

■たくみおねえさんの引退

あの「おかあさんといっしょ」の三谷たくみおねえさんが交代してしまった。8年間に渡って毎朝(再放送だと毎夕)、幼児とその親達を癒し続けたたくみおねえさんの交代は視聴者にとって大きな「ロス」なはずで、それはあのディーンさまロスや、今シリーズ朝ドラでいきなり消えてしまった西島秀俊ロスよりも遥かに大きなロスとして全国を覆っているみたいだ。

かくいう僕もロス当事者ではある。

50才にして初の子どもをもった僕にとって、2才間近の子どもと「おかあさんといっしょ」を見ることは日課になっている。

オープニングの「みんな~元気~?」から始まって、様々な童謡オールディーズの歌い直し、ぬいぐるみキャラの寸劇、パントマイムお姉さんのコーナー、よくわからないが「ブンバボン」という歌を踊って披露するコーナー、そしてトンネルくぐりの大団円に至るまで、毎朝「おかあさんといっしょ」は我々を楽しませてくれる。

それらルーティンの流れのほかに、僕の大好きな「数え天狗」(横山だいすけおにいさんが天狗になっていろんなものをトリッキーに数えまくる)コーナーをはじめとして、視聴対象の幼児年齢に合わせたミニコーナーが数多く設定されている(これらは3~5才時に合わせてかなり巧妙に組み立てられている)。

それらをトータルに、日本文化らしく「空気」としてまとめていたのが、三谷たくみおねえさんだったのだ。

■たくみおねえさんのギャグ

たくみおねえさんはギャグもできた。それは、新おねえさんと比べてもらえてもらえれば一目瞭然なのだが、当たり前のように「変顔」を演じることができた。

そのユーモアと安心感が、我々保護者を癒やしたのも事実だろう。

その癒やしぶりは、たとえばオタクがメイドカフェに抱くテーストではない。

多少のエロスはそこに混じっているかもしれないが、それはメイドカフェのみなさんにまで匹敵するものではないだろう。強いて言うと、その癒やしは、「おねえさん」という、日本文化の中になぜだか強く根付くひとつの表象(イメージ)にまといつく癒やしだ。

その癒やしは、「おにいさん」にもつきまとうものではあるが、おにいさんは「男性」イメージがどうしてもくっつくため、癒やしになるには少し弱い。

このあたり、だいぶジェンダーバイアス(女性=癒やし)が重なっているものの、NHKらしく「うたのおねえさん」はその表象とバイアスに依存せざるをえない。

■たくみおねえさんの笑顔

うたのおねえさんという設定自体が既存のジェンターバイアスに縛られている。だからこそこれだけ大量の「ロス」が引き起こされているわけではあるが、同時にバイアスを飛び越した安心感を我々に与えてきた。その安心感が8年も日本の朝を支えた。

その背景には、我々の社会が「おかあさんといっしょ」を求めている構造があるかもしれない。

それは、対象が幼児年齢の5才頃までという特殊事情があるだろう。それは、その対象の親達も、子の限定年齢の中で存在できるという特殊事情だ。

毎年春になると、保育所に入れない嘆きが日本中に蔓延する。

今年は匿名ブログから国会にもとりあげられ大騒ぎになった。そうやって大騒ぎしている保護者は(というかそのほとんども)、たくみおねえさんの交代劇は知っといる。たくみおねえさんという表象によって我々保護者とその子たちは支えられてきたことを十分知っている。

が、我々の社会は「たくみおねえさん」によって根本的な改革を避ける。たくみおねえさんの笑顔があるかぎり、保育所の定員や保育士の給与や、それらに支えられる若い親たちの生活を看過する。たくみおねえさんの笑顔が、それに支えられる若い親たちの生活を潜在化させている。

たくみおねえさんの交代は、いかに我々の社会が個別保護者の単独性に依存しているのかをつきつけるものになっている、僕にとっては。

※Yahoo!ニュースからの転載

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