はらぺこサイクルキッチン<60>春のロングライドには糖質+脂質の「簡単手作りオリジナル補給食」
ゴールデンウイークが近づき、いよいよ行楽シーズン本番! 景色を楽しめるロングライドを計画されている方も多いのではないでしょうか。となれば忘れてはならないのが、補給食。皆さんはお気に入りの“マイ補給食”をお持ちでしょうか?
優秀な補給食はすでに数多く販売されていますし、コンビニに立ち寄るのも便利です。さらに、出発の10分前からでも作れるメニューがあれば、よりバラエティーに富んだ補給食になりますね。わが家でもバーを手作りするなどしていますが、中にはバー形状の補給食が苦手な方や、何も持たずにライド中は補給しないという方も。食べ慣れていないこと、甘い味が苦手なこと、価格が高いことなどがその理由だとか。
市販品は遠征先などでは持ち運び易さや手軽さ、衛生面でとっても便利ですが、時には普段食べ慣れている食材で作れる、身近で気負わない補給食もいいですよね。今回は、食事のように楽しむ“簡単手作り補給食”をお届けします。試作品は夫の池田祐樹(トピークエルゴンレーシングチームUSA)やその友人にも実際のライドで食べてもらいました。
プロライダーからホビーライダーまで、素直な感想をフィードバックしてもらい、味・食べやすさ・パッケージを試行錯誤しました。今日からお家のキッチンで生まれる補給食、始めてみませんか?
ロングライドの補給食は「エネルギー源になる糖質+腹持ちをよくする脂質」を組み合わせることが、快適なライドへのカギと考えました。糖質+脂質を基本に、いくつかの補給食を作ってみました。
ロールサンド
(スライスして潰した食パン、ローストクルミ、スライスしたバナナ、①はちみつと練りゴマを合わせたもの/②ココナッツオイルとブルーベリージャムを合わせたもの)
ポイント:身近な食パンを潰し、簡単に生地を作った点。凝縮させることで、少ない体積でより多くのエネルギーを摂取できる。油分と糖質が合わさることで、腹持ちがよくロングライドにも適したエネルギー源になる。ジャムは好きなものでOK。ジャムの原料であるフルーツはクエン酸補給にもつながる。「時間が経つと油分がパンに染みて最高」という感想は、作った直後は分からなかったので意外でした。
ライダーの感想:ブルーベリーの方は、フルーティーでありながらココナッツオイルの香りが心地よく、しっとりとしていて食べやすかった。エナジーフードはパサパサだったりベタベタだったりというのが多くて、食べづらいものが多い中、しっとり具合が本当にちょうど良くて、すごく食べやすかった。ただ、ラップで包んで上下で絞るのは、開封するのに手間取ってしまうので、レースや乗車中に使うなら工夫が必要。はちみつとゴマの方は、食べ応えあり。ジェルだと空腹感が常につきまとうけれど、お腹が満たされて、レース後半にまた頑張れる気がする。アルミホイルの方が開封しやすい。全体的には、しっとり感とココナッツオイルが好きなポイントでした。
トルティーヤサンド
(手作りトルティーヤ、手作りトマトソース、手作りひよこ豆のハマス、ローストクルミ)
ポイント:生地となるトルティーヤは、焼きすぎると固くなるのでサッと焼くのがコツ。市販のトルティーヤにビザ用ソースを塗ると更に手軽に作ることができます。お好みでチーズを挟んでも。モンゴリアバイクチャレンジ2015で優勝したニコラス・ペティーナ(Nicholas Pettinà)選手が、市販のトルティーヤにジャムを挟んだものを毎朝自作し、レース中の補給食とレース後のリカバリーフードにしていたことから、ヒントを得ました。
感想:美味しい。ハマスも良く合う。市販のトルティーヤで簡単に作れるのもよさそう。
クレープロール
(手作りクレープ生地、ココナッツオイル、ブルーベリージャム、バナナ/手作りトマトソース)
ポイント:トルティーヤよりももう少し柔らかくて食べやすい、クレープ生地にしてみました。甘い系も食事系も良く合います。生地が薄い分、ソースがはみ出るのではないかと懸念しましたが、包むと何重にもなるので意外に大丈夫でした。但し、ソースを欲張るとはみ出します。
感想:クレープの皮が適度に薄くて柔らかく、細く巻いている方は特に乗車中でも食べやすい。甘いクレープロールも美味しいけれど、トマトソースの方は塩気とトマトの酸味が効いた食事のような感覚。おにぎり用のホイルをクルクルクと上で絞った包み方は、食べている途中でも開閉ができてよい。
エナジーおにぎり
(材料:白米、細かくした梅干し、刻んだ大葉、刻んだ紅生姜、すりゴマ、エゴマオイル)
ポイント:ナトリウム補給とクエン酸補給、食欲増進、細菌の繁殖を抑える働きのある梅干しを入れたこと。混ぜご飯にすることで、どこから食べても具材があり、味が均一になるようにしました。ゴマは消化が悪いので、すりゴマにして加えました。具材は好きなものを入れてよいのですが、中でも梅干しはレギュラーメンバーとしてオススメです。脂質としてオメガ3が豊富なエゴマオイルを加えていますが、癖は感じにくいです。
<包装で使用したもの>
●ラップ→蒸れる。上下でネジっていたが、開けにくい上に開けたくないシーンで開いてしまい、不評。(×)
●アルミホイル→上下でネジったところ、開閉はラップよりは良かったがスムーズでもない。(△)
●おにぎり用のホイル→適度に蒸気を逃す働きもありながら、破れにくく何度も開閉可能なので良い。上だけでネジるように包んだところ、好評。(○)
※おにぎりはおにぎり用のホイルを使用。包む方法は、FEED ZONE PORTABLES (VELO Press), 著者Biju Thomas & Allen Lim を参考にしました。
良いと思ったもの、自信がなかったものなど様々でしたが、実際にライドのシーンで食べてもらうと予想外の感想があって参考になりました。みなさんの中でも、ご自分でトレイルミックスを作ったり、おにぎりを作ったり、食べたいものを食べやすい形状にしたりと、色々なアイデアで工夫されている方が多いと思います(バターロールに穴を開けて、ジャムを詰め込んでまた蓋をするという自転車店長も!)。今回は手作りした割合が多かったですが、市販品と上手く組み合わせて作るのも手ですね。
そうそう、これからの季節は気温も上がるので、衛生面だけはご注意くださいね。ぜひオリジナル補給食を作って、補給食自慢しちゃいましょう。かくいう筆者はここ最近、ライドへ出掛けておりませんでした。これを機にバックポケットを膨らませて、のんびりと新緑の景色を楽しみたいと思います。
アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネジャー経験を生かして2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを始め、同年秋に結婚。並行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」でも情報を発信中。