2016年

4月

19日

経営者:編集長インタビュー 兼元謙任 オウケイウェイヴ社長 2016年4月19日号

◇兼元謙任 オウケイウェイヴ社長

◇いじめ根絶の思いが国内最大級Q&Aサイトへ

 

 国内最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」では、家電の使い方から病気の悩みまでさまざまな話題について、会員同士が質問と回答を無料で投稿できる。非会員でも閲覧することができ、月間利用者は3500万人に上る。

 

── Q&Aサイトを作ったきっかけは。
兼元 小学生の頃に経験したいじめをなくしたい思いがベースです。社会に出て、ホームページの作成方法をインターネット上の掲示板で質問したところ、そこは質問をする場ではなかったので、非難を浴び、話を聞いてもらえませんでした。いじめられた時も同じ。誰かに相談をすることもできませんでした。だから、対話のできる質問専門のサイトがあればいいと思いました。

── サイトの人気が出たのはいつですか。
兼元 1999年に設立しましたが、3年間は収益がなく赤字でした。ただ、設立3カ月後くらいに、インターネットの掲示板で「面白いサイトがある」と取り上げられ、アクセスが増えました。また1年後に、入学式、新学期に関するQ&Aがまとまっているとして雑誌に取り上げてもらい、知名度が上がりました。
 3年目の頃、ネット上で皆が英知を絞って助ける仕組みを企業の問い合わせシステムにも利用できないか、という話を頂きました。そして、顧客からの問い合わせの中でよくある質問(FAQ)と回答を提供する仕組みの特許を取り、提供を始めました。その1年で黒字化しました。
── 現在の収益構造は。
兼元 企業向けのFAQサービスが6割です。その他に広告収入と、企業向けにQ&Aサイトのデータやシステムを提供しています。
── 2015年6月期の営業利益は1300万円と前年度から反転しましたが、数年間業績がふるいませんでした。
兼元 多言語コールセンターのブリックス社を買収したためです。日本にいる外国人は苦労することが多い。20年に向けて多くの外国人が来日するので、日本人の理解を深め、外国人の悩みを解消するQ&Aの場が必要だと思います。外国語の専門用語など多言語コールセンターがもつノウハウを、今後、Q&Aサイトにも生かしていきます。

 ◇人工知能を活用

── 他社のQ&Aサイトとの違いは。
兼元 人工知能(AI)を使って、誹謗中傷をする言葉がないか監視しています。コンテンツの価値を高めることを目的に、2、3年前から投稿内容を自動チェックしています。
── 他にはどのような事業を。
兼元 著名人に質問ができるサービス「OKWAVE Premium」を有料で行っています。月額324円で、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんなどが回答してくれます。回答自体に価値があるので、閲覧は会員制です。
 更に、弁護士など専門家が回答するサービス「OKWAVE Professional」を行っています。一般の会員が投稿する質問に対して、専門家の視点から回答してもらいます。歯科医、心理カウンセラーなど3000人の回答者がいて、回答と共に連絡先を掲載できるので、専門家の宣伝になります。そのため、回答者からお金を頂いており、回答の閲覧者は無料です。徐々に収益の柱となってきています。
 また、サイトの月間利用者が月3500万人いるので、これはビッグデータだと思います。彼らが何を見ているのか、どういうことに困っているのかが分かります。そういう情報を企業に提供すれば、商品開発に役立つ。
── いずれグーグルを超える?
兼元 最近、そう言ってもらえるようになりました。世界においては、まだ追いかける立場ですが、Q&Aサイトの強みを生かして挑戦していきます。製品などについて、企業のFAQと、一般ユーザーの回答と、専門家の回答を一緒にまとめるサービスを考えています。グーグルの検索結果は上位に表示されるよう企業が対策をしているため、必ずしも欲しい情報が上位にはきません。オウケイウェイヴが世界中の属性の異なる回答を集めて再構築すれば、より良いQ&Aを提供できます。「Miracle Answers」というサービスで、米国で準備中です。
── ブロックチェーン(ネット上で情報を保持する台帳)技術を使った取り組みは。
兼元 1月にブロックチェーン技術をもつテックビューロ社と事業提携しました。ブロックチェーンというのは、誰が何の情報をどう渡したのか、時系列で追うことができます。Q&Aは知財です。この知識(回答)を最初に出した人は誰か、という情報をずっと保持できることは、知財管理において重要です。いろいろな派生情報があるけれど、オリジナルの情報元はこの人だと分かると、その人にビットコインでお礼することもできます。
── 今後、どのような会社にしたいですか。
兼元 世界企業にしたいです。質問者の回答に対するお礼コメント数と、閲覧者の回答に対するありがとうボタン数の合計で、18年までに15億個を目指しています。現在5000万個。将来的にはサイト内のページの価値でグーグルを超えたいです。

(Interviewer 金山 隆一・本誌編集長、構成=金井暁子・編集部)


横 顔
Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 一時ホームレス生活をし、会社設立のため奔走していました。
Q 「私を変えた本」は
A フランクルの『夜と霧』です。たまに読み返し、今の幸せを思い出します。ガス室の手前まで生きることを考える姿勢を、自分も忘れてはいけないと思います。
Q 休日の過ごし方
A 仕事をしています。最近パソコンをMacに買い替え、創造性を刺激される良い環境で働いています。

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■人物略歴

◇かねもと かねとう

愛知県出身。愛知県立瑞陵高等学校卒業。愛知県立芸術大学卒業後、プロダクトデザイン会社などを経て、1999年にオウケイウェイヴの前身、有限会社オーケーウェブを設立。2000年2月より現職。49歳。

(『週刊エコノミスト』2016年4月19日号<4月11日発売>4~5ページより転載)

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2016年4月19日号

定価:620円(税込)

発売日:2016年4月11日

週刊エコノミスト 2016年4月19日号

 

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