世界経済とG20 連携し減速に歯止めを
世界経済が成長の勢いを失いつつある中、米ワシントンで主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際会議が開かれる。先進国にも新興国にも、単独でけん引役になれそうな国は見当たらない。いかにして長期停滞入りを回避するかが問われている。
国際通貨基金(IMF)によると、今年の世界の成長率は、3・2%にとどまる見通しだ。1月時点の予測より0・2ポイント引き下げられた。
中でも目立つのが日本経済の減速だ。0・5ポイント低下し0・5%の成長予測である。中国経済の悪化など、国外要因だけでは説明がつかない。
日本は安倍政権下で、異次元金融緩和と大規模な財政支出を実施した。異次元緩和は円安、株高をもたらしたが、効果は長続きしなかった。一方、財政支出も一時的な推進力となったかもしれないが、基本的に将来の需要を先食いしたに過ぎない。先進国一の借金大国となった国としては、度々発動するのは困難だ。
国によっては、財政出動の余地が残るところもあるだろうが、従来型の景気刺激策を繰り返すだけでは、成長を持続させられないことを、日本の例が示している。
高齢化や働く世代の人口減少はこの先、日本以外の国も直面する課題だ。それを前提に、経済の活力を引き出せる構造改革を地道に進めねばならない。将来への不安を取り除き、自信につなげることが肝心だ。
年金資金など長期的な資産形成に悪影響を及ぼすマイナス金利政策は、逆に将来への不安を高めかねない。日本、ユーロ圏、スイスなど今や先進国が発行した債券の4分の1以上がマイナス金利になった模様だが、国際会議では、その功罪について活発に意見を交わしてほしい。
一方、消費増税先送りは目先の政策として魅力的かもしれないが、これも将来への不安を高めるものだ。
このところ円相場が急騰するなど市場が不安定化し、当局や政策への信頼がかつてなく重要になっている。租税回避地(タックスヘイブン)に実体のない会社を作り、課税を逃れていた富裕層の中に、各国の首脳やその親族らが含まれることが「パナマ文書」により暴露された。真の受益者が誰なのかを金融機関や法律事務所に開示させるルールの整備など、温床のもととなる秘匿性にメスを入れる対策が欠かせない。監視強化で協調し、信頼回復に努めてほしい。
リーマン・ショック後、大規模な経済対策を重ねてきた各国では、新たな金融危機に対応できる政策の余地が極めて限られる。危機の再来は許されない。利己的な通貨安政策などではなく、連携により世界経済を強化する策を議論してもらいたい。