(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月9/10日付)

パナマ当局、文書流出の法律事務所を家宅捜索

パナマの首都パナマ市で、家宅捜索が行われた法律事務所モサック・フォンセカが入居するビルの外を警備する警察官(2016年4月12日撮影)。(c)AFP/Ed Grimaldo〔AFPBB News

 「文字通り、ただお望みのことを言ってくだされば、お客さまのために私たちがやらせていただきます」。英国に拠点を構えるCFSインターナショナル・フォーメーションズの陽気な営業アシスタント、エミリーはこう言った。

 この会社は、オフショア企業(オフショア金融センターやタックスヘイブン=租税回避地=に設立・登記された会社)を設立する方法について助言を与える成長産業の1つだ。

 エミリーは私の身元には関心がないということをはっきり態度に示し、代わりに、会社設立のプロセスがどれほど簡単か強調した。

 「書類作成も何も、大してありません。会社が設立・登記されて、私たちがお客さまに書類をお送りします」

 数々のスキャンダルが起きた後、私は自分のオフショア企業を作るのがどれほど難しいか、どんな質問をされるのか、どれほど簡単に自分の身元を隠せるのか興味を持った。私がCFSに電話した2013年当時でさえ、この問題はすでに政策立案者にとって大きな懸念材料となりつつあり、オフショア資産は推定9兆ドルと、中国の年間経済生産高に迫る規模に達していた。

 今年4月初め、タックスヘイブンのオフショア企業設立を専門とするパナマの法律事務所モサック・フォンセカからリークされた1100万点以上の文書が世界を震撼させた。「パナマ・ペーパーズ」と呼ばれる文書は、独裁的な支配者やロシアの大富豪、さらにはアイスランド首相などの口座を明らかにし、人々がいかに金融システムを利用し、一部のケースでは悪用しているかに光を当てた。

 タックスヘイブンの役割はグローバル化の時代に大きくなった。グローバル化によって、企業と個人が納税額を最小限に抑える新たな方法が生まれたからだ。電子技術の進展は、オフショアのタックスヘイブンを利用するのを容易にした。