【ワシントン時事】オバマ米大統領は、ケリー国務長官が11日に広島市の平和記念公園を訪問したことを踏まえ、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の出席に合わせて現職大統領として初めて被爆地・広島を訪問するかどうかを近く判断する。11月の米大統領選の行方を含め、国内外の政治情勢に与える影響を見極める考えだ。

 オバマ氏は、ケリー長官が「大統領も(広島に)来てほしい」と述べていることを重視するとみられる。大統領の広島訪問が実現した場合、サミット後にヘリで移動して数時間滞在し、2009年4月のプラハ演説で唱えた「核なき世界」の推進を訴える演説を行う可能性がある。

 オバマ氏はこれまで、被爆地との関係構築を少しずつ進めてきた。10年にルース駐日大使(当時)を広島の平和式典に派遣。12年以降、米大使の広島、長崎の両式典参列は恒例となった。

 一方で、ホワイトハウス高官は、オバマ氏の被爆地訪問を「米国民がどのように受け止めるか」を懸念している。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨年4月に実施した世論調査によると、米国人の56%が「原爆投下は正当だった」と回答。戦争終結を早め、結果的に多くの人命を救ったとみている。

 仮に大統領が原爆死没者慰霊碑に献花した時に拝礼すれば、「謝罪と受け取られる可能性もある」(ホワイトハウス高官)。オバマ氏は09年11月、訪日で天皇陛下に深々とお辞儀をしたことが「卑屈だ」(米メディア)との批判を受けた。

 一部の知日派は「日本の首相に対し真珠湾訪問を要求する声が出てくるだろう」と指摘する。大統領選を控え、オバマ氏の広島訪問が野党共和党や退役軍人会から弱腰外交と攻撃され、日米関係が批判の的にされる恐れもある。