こうした状況から、G20会議で根回しを行った上で、日本が円安誘導に動くのではないかとの見方は少なくない。安倍晋三首相が先月末、ポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授を首相官邸に招き、「国際金融経済分析会合」を開いたことについても、為替介入に米国などから事前了解を取り付けることが目的ではないかと受け止められている。金正湜(キム・ジョンシク)延世大教授は「円高になれば、日本経済は困難に直面する。東アジアの覇権争いで中国の対抗馬として日本を立てなければならない米国は、円安を容認するだろう」と分析した。
これに関連し、世界の金融界では、日本が再び円安を起こすため、マイナス金利政策を強化するか、7月の参院選を控え、財政支出拡大というカードを切るのではないかとの見方が出ている。
■1ドル=100円まで円高進行との見方も
一方、日本経済がまだ持ちこたえられるとの判断から円高が当面続くとの意見もある。「ミスター円」として知られる元財務官の榊原英資・青山学院大学教授は11日、ブルームバーグのインタビューに対し、105円の水準は日本経済にとって「何ら問題ではない」と指摘した上で、円が年内に100円を超えて上昇する可能性があるとの考えを示した。日本の2月の貿易収支は4252億円の黒字だった。
また、米国は自国の貿易赤字を解消しなければならないため、これ以上の円安を容認しないとの見方もある。米国の2月の貿易赤字は前月に比べ3%近く増加し、471億ドルだった。ルー米財務長官は11日、「国際通貨基金(IMF)とG20は無分別な通貨切り下げ国に圧力をかけるべきだ」と発言した。ルー長官の発言は中国とドイツを標的にしたものだが、日本の行動の幅も制約されるとの見方がある。