【モスクワ=共同】ロシアのラブロフ外相は12日、日ロ最大の懸案である北方領土問題を巡り、4島全てが交渉対象だとの考えを表明した。4島の帰属問題解決に向けた交渉を「拒否しない」と明言。「われわれは4島の帰属を完全に明確にしたい」とも述べ、日ロ間の領土問題の存在を確認した。東京での15日の日ロ外相会談を前にモスクワで共同通信などと会見した。
昨年9月にモルグロフ外務次官が北方領土問題は「解決済み」と述べるなど、ウクライナ南部クリミア半島編入を受けて欧米や日本が制裁を科した後、ロシアには領土問題で強硬姿勢が目立っていた。ラブロフ氏は自身の訪日や、5月で調整されている安倍晋三首相の訪ロとプーチン大統領との首脳会談を前に一定の柔軟さを示した。
その一方で、平和条約締結後の2島返還が明記された1956年の日ソ共同宣言を重視する立場を重ねて示した。さらに平和条約交渉と領土問題は「直接関係ない」との従来の考えも繰り返し、帰属問題の解決を条約締結の前提とする日本の立場との違いを明確にした。領土問題の進展には引き続き困難が予想される。
ラブロフ氏は日ロ首脳が2001年のイルクーツク声明で「4島の帰属問題を含む全ての問題を解決するための対話を継続することで合意した」と認めた。だが「声明にすぎない」とも指摘し、両国間で批准された唯一の文書である日ソ共同宣言が最重要と強調した。
北方領土を含むクリール諸島でのロシアの軍事施設整備については、資源が豊富な北極海から極東に抜ける航路の一部として戦略的な重要性があるとして安全確保の必要性を指摘。国境地帯で「軍事施設を強化するのは当然だ」と主張した。
プーチン氏訪日については、日本の対ロ制裁は「妨げにならない」と明言した。
ラブロフ氏は訪日前後にモンゴルと中国を訪れる。