私立大学の今後の在り方は? 文科省が有識者会議

私立大学の今後の在り方は? 文科省が有識者会議
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少子化の影響などで全国の私立大学のおよそ4割が定員割れし、厳しい経営状況が続いています。こうしたなか、今後の私立大学の在り方を話し合うための文部科学省の有識者の会議が13日から始まり、大学の統合や連携も含めた経営支援の方法などについて検討を進めることになりました。
私立大学は、この30年でおよそ2倍に増え、全国に604校ありますが、少子化の影響などでおよそ4割が定員割れになるなど厳しい経営状況にあり、今後の在り方をどうするのかが課題になっています。
13日の会議には、私立大学の学長や弁護士など20人余りの有識者が出席し、全国の私立大学の関係者ら100人以上が会議の傍聴に訪れました。
有識者からは、「国公立の大学や短期大学との違いや、役割分担など、全体像を考えたうえで検討していくべきだ」とか、「どういう教育内容が必要なのか改めて考える必要がある」などといった意見が出されました。
有識者の会議は、来年春ごろまでをめどに大学の統合や連携も含めた経営支援の方法などについて検討を進めることにしています。
会議の座長を務める金沢工業大学の黒田壽二学長は、「社会の変化に応じて私立大学も変わらなければならない。大学の在り方をゼロから考えていきたい」と話しています。
会議を傍聴していた新潟医療福祉大学の高山裕司顧問は「少子化や学生の大都市への流出により、地方の小規模な大学は厳しい状況になっている。教育内容に特色を出そうと工夫しているが、地方に就職先がないとなかなか学生は集まらないため雇用創出策も合わせて検討する必要がある」と話しています。
また、山口短期大学の麻生隆史学長は「県外に流出する学生が多いうえ、同じ県内でも大学や短大は広大な敷地が必要なため、駅の近くの専門学校と比べ不便な場所にあることも学生の確保が難しくなる背景にある。高校との連携を図りながら受験生に向けてアピールしていきたい」と話していました。

定員割れの大学が増

文部科学省によりますと、私立大学は、去年5月時点で全国に604校あり、昭和60年の331校から30年で2倍近くに増えています。
一方、18歳の人口は、平成4年の205万人をピークに減少する傾向で、近年は120万人前後とほぼ横ばいで推移していますが、平成33年ごろからは再び減少すると予想され、15年後には100万人を切るとみられています。
こうしたなか、定員割れになる大学が増えていて、文部科学省の外郭団体、「日本私立学校振興・共済事業団」の調査では、回答があった私立大学のうち、定員割れは20年前には数%程度でしたが、現在は43%に上っているということです。
さらに、このうち13の私立大学は入学者数が定員の半分に満たない状態だということです。

私立が公立になる現状と背景

私立から公立へと移行した大学は平成21年度からこれまでに7校となっています。
平成21年度に全国で初めて私立から公立に移行したのが、高知県香美市の「高知工科大学」です。
その後、平成22年度には、静岡県浜松市の「静岡文化芸術大学」と沖縄県名護市の「名桜大学」、平成24年度には、鳥取市の「公立鳥取環境大学」、平成26年度には、新潟県長岡市の「長岡造形大学」、今年度からは、山口県山陽小野田市の「山口東京理科大学」と京都府福知山市の「福知山公立大学」がそれぞれ、私立から移行して公立の大学となりました。
こうした大学の多くは、定員割れが続くなど経営状況が厳しく、専門家からは国公立大学より高い授業料が入学希望者が増えない要因の1つになっているという指摘も出ています。
大学には、公的な資金が出されていますが、公立大学の「運営費交付金」は私立大学の「私学助成金」より原則、多くなるということで、公立の大学になることによって授業料を抑えたいというねらいもあるということです。
一方、自治体には、少子化のなか、「公立化」によって大学を存続させることで、若者を地域に引き止める役割への期待もあるということです。
現在も複数の私立大学が公立の大学になることを検討していて、このうち、長野大学は、公立大学を目指す方針を公表したあと、志願者数が増えて定員割れの状況が解消されたということで、「将来、公立になることが、大学のブランド力の向上につながったのではないか」と話しています。

都市部と地方 経営状況に格差も

私立大学の経営状況は、都市部と地方の間で格差があるという調査結果も出されています。
文部科学省の外郭団体、「日本私立学校振興・共済事業団」が昨年度、全国の592の私立大学の経営状況について、分析しました。
その結果、学生総数が8000人以上の大規模な大学のうち、平成26年度の決算が赤字になったのは、東京と政令指定都市の都市部にある大学で、4.4%だったのに対して、それ以外の地方にある大学では6.3%でした。
また、学生総数が8000人未満の中小の規模の大学で決算が赤字になったのは、都市部で34.4%でしたが、地方では、45.4%となっていて、地方の大学のほうが厳しい経営状況にあることを示しています。
また、都市部の大学に入学希望者が集中する一方で、地方の大学では定員割れをしているところが少なくないということです。

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