動機や経緯追及へ 2人の接点捜査
埼玉県朝霞市で行方不明になった女子中学生(15)が2年ぶりに保護された事件は31日、寺内樺風(かぶ)容疑者(23)が逮捕されたことで新たな局面を迎えた。計画的とみられる連れ去りの経緯や、監禁状態での生活状況など、事件を巡る謎は多い。容疑者は逮捕後の調べに「女子生徒と面識はない」と供述。「空白の2年」を埋める埼玉県警の調べが本格化する。
「なぜ埼玉の朝霞だったのだろう」。ある捜査関係者は首をかしげる。朝霞市は、寺内容疑者が住んでいた千葉市稲毛区から50キロ近く離れている。居住歴や交友関係から、朝霞市内での寺内容疑者の土地勘は浮かんでいない。
千葉大の学生で「飛行機が趣味」という寺内容疑者と、朝霞市の中学生でバレエ教室などに通っていた女子生徒の間にも接点は確認されていない。県警の聞き取りに女子生徒は、寺内容疑者について「全く知らない人だった」と話し、女子生徒の父親も「面識はない」と語っている。
一方、女子生徒は寺内容疑者からフルネームで声をかけられたとされる。しかし女子生徒の自宅の表札にはフルネームは表示されていなかった。寺内容疑者は連れ去りの際、女子生徒に目隠しをしたことや、偽のナンバープレートを利用した疑いのあることも判明。女子生徒の名前を事前に知り、計画的に狙った可能性がある。
寺内容疑者は、車に乗せた女子生徒を千葉市稲毛区のマンションに連れて行き、今年2月まで監禁状態に置いたとみられる。玄関の外から扉に鍵を取りつけ、内側から開けることができないようにしていた模様だ。
女子生徒は「(寺内容疑者に)連れられて外出することもあった」と話している。寺内容疑者は今年2月、東京都中野区のマンションに引っ越したが、ここでは室内から出られなくするような細工はなかった。女子生徒も「中野のマンションでは出られる状況だった」と説明している。捜査関係者は「長期にわたる監禁状態によって恐怖心が植えつけられ、ある程度の自由はあっても、逃げたり助けを求めたりすることができない状態だったのではないか。真相を把握するために、容疑者への追及が欠かせない」と語る。【奥山はるな、安藤いく子、内田幸一】
異例のヘリ移送
埼玉県警は31日、ヘリコプターを使って寺内容疑者を静岡から埼玉に移送した。午前9時前に静岡県伊豆の国市の病院で寺内容疑者を逮捕した捜査員は、警察車両で県内の河川敷まで運び、待機していたヘリに移した。埼玉県内でヘリからおろし、再び警察車両に乗せて同10時前に朝霞署に着いた。1時間足らずのスピード移送だった。
異例のヘリ移送について県警幹部は「けがから回復したばかりの容疑者の体調を考慮した」と話している。移送中の寺内容疑者は「わりとしっかりした様子で、落ち着いていた」という。【和田浩幸】