韓国「慰安婦映画」大ヒットの病理
崔碩栄(ジャーナリスト)
三百万人が見た「鬼郷」にこれだけの問題点が――
今、韓国で映画『鬼郷』が社会現象となっている。日本軍による朝鮮人少女たちの強制連行、性暴力、虐殺などが描かれたこの映画が一般公開されたのが二月二十四日。以来、三週連続一位を記録、観客動員数三百万人突破と快進撃を続けている。
物語は両親とともに平和に暮らしていた少女ジョンミンが、ある日突然訪ねてきた日本軍によって強制的に連行されたところから始まる。ジョンミンが連れていかれた場所は中国にある日本軍慰安所。ここで少女は地獄のような生活を送ることになる。日本軍は無慈悲に暴力をふるい、失神した少女を強姦し、軍刀で脅し、容赦なく鞭を振り下ろす。
映画のラスト近く、日本軍が少女たちを集団虐殺した後、死体に火を放つシーンがある。最も話題となっている場面だが、これは元慰安婦・姜日出(カンイルチュル)さん(87)の絵と証言をもとにして作られたものだと盛んに喧伝されている。しかし、そこには観客をミスリードする非常に危うい要素が含まれているのだ。
映画の冒頭、スクリーンの中央に、この映画は「実話をもとに作られた」と字幕が表示される。元慰安婦の「証言」をもとに脚色された創作物なのか、「実話」をもとにしたのかでは明らかな差違がある。「証言」と「実話」は峻別されなければいけない。「証言」は、あらゆる角度からの検証がなされて初めて「実話」となるはずだ。
私はソウルの映画館の出口で『鬼郷』を見終えた観客たちにインタビューを試みた。「この映画の内容は実話だと思いましたか?」。こう問うと、「ええ。ほとんどが実話だと思います。こんな事実を知らなかった自分が恥ずかしい。元慰安婦のおばあさんたちに申し訳ない気分です」、「少しは脚色があるでしょうけど、ほぼ事実でしょう。もっと多くの人に見てほしい」。多くの人がこう口をそろえた。
『鬼郷』は、「実話」なのか?