マイナス金利は2年足らずのうちに、井戸端会議での臆測から、世界経済のほぼ4分の1にとっての現実に変わった。
精彩を欠く成長を背景に世界の中央銀行家が米ワシントンに集まる中、ある見方がまとまりつつある。最近まで極めて非伝統的だった政策は、限定的な成功を収めたが、すでに限界に達しつつあるというものだ。
国際通貨基金(IMF)のある最高幹部は4月10日にブログ上で、マイナス金利は有用だったが、「マイナスの政策金利を進められる幅と期間には限界がある」と結論付けた。
金利をゼロ未満に引き下げれば、銀行に貸し出しを増やすよう促し、停滞する経済にさらに刺激を与える。これがマイナス金利の目的だった。
その必要性は今もまだある。IMFは今週、世界経済の成長見通しをさらに下方修正するとみられる。中国の景気減速、原油安が景気拡大を後押しできない状況、生産性の伸びの鈍化が組み合わされ、先進国と新興国経済の展望を暗くしている。
だが、マイナス金利に対する批判が高まっていることから、中央銀行はかつてないほど強力に各国政府に負担を一部担うよう働きかけ、より介入主義的な財政政策を導入するか構造改革を実行するよう求めている。今週ワシントンで開かれる一連の会合の戦線はすでに引かれており、批判的な人々が次第にはっきりものを言うようになっている。
■傷む銀行の収益性
大きな懸念は、マイナス金利が銀行の収益性を台無しにすること、そして個人投資家に転嫁された場合には消費者に現金をため込むよう強いることだ。
大半の銀行関係者はまだ、貯蓄者の預金に手数料を課す破壊的な道を歩むことは支持できないものの、ほかの使える選択肢を引き合いに出す。自らの利益にとって非常にリアルな脅威だと銀行家の目に映っている、その脅威をかわす方法だ。
「もしマイナス金利が続いたら、もっと多くの『リレーションシップ・フィー(銀行取引や口座維持管理にかかる手数料)』を目にする可能性のほうが大きい」。ある銀行幹部はこう話す。「預金に手数料が課せられた明細書を目にすることは絶対にないと思う」
4月11日には、米ブラックロックのラリー・フィンク氏も警鐘を鳴らし、低金利は貯蓄者が必要としているリターンを得るのを妨げており、支出して経済を刺激するのではなく貯蓄を増やすよう消費者に強いている可能性があると述べた。
ウォルフガング・ショイブレ財務相を筆頭に、ドイツの多くの政治家は、市民から年金収入を奪っているとして欧州中央銀行(ECB)を非難している。
■エグジット(出口)の難しさ
金融危機の後、自国通貨クローネとユーロとの年来のペッグ制を守るために2012年に最初にマイナス金利を導入したのはデンマーク国立銀行だった。同行は今年1月、預金金利を史上最低のマイナス0.75%から再び引き上げようと取り組んだ。
だが、ECBによる金融緩和の結果、金利を再びプラスに引き上げるデンマーク国立銀行の能力が制限されてしまった。多額の資本が流入する恐れがあるからだ。