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これが食中毒菌の新毒素! 世界初発見 大阪府立公衆衛生研究所
大阪府立公衆衛生研究所は大阪大微生物病研究所と共同で、腹痛や下痢を引き起こす食中毒菌「ウェルシュ菌」の新種の毒素を世界で初めて発見し、米科学誌「インフェクション・アンド・イミュニティ」に掲載された。研究チームは同研究所で受け継がれてきた独自の実験法で原因物質を発見。簡便な検査法も確立したことで、毎年全国で頻発する食中毒の素早い原因究明が可能になった。
平成21年8月、大阪市内のホテルで84人が腹痛などを訴える食中毒が発生。患者からウェルシュ菌が見つかったが既知の毒素は検出されず、未知の毒素を出すウェルシュ菌による食中毒である可能性が高まった。
研究チームは22年に研究に着手。一般的な実験手法を用い、毒素による細胞の変化を調べていたがあえなく失敗に終わった。原点に立ち返ろうと、主に同研究所で30~40年前に使われ、その後も受け継がれてきた独自の実験法「乳(ちち)のみマウス法」を試した。
赤ちゃんマウスの口からチューブで菌液を胃に直接流し込み、下痢などの食中毒症状を引き起こすかどうかを調べるシンプルな実験法。菌を培養した上澄み液の成分を細かく分割して飲ませ、下痢を起こした液をさらに細かく分割して飲ませ、反応を見る。その作業を延々繰り返すことで原因毒素を突き止めることが可能だが、手間や時間がかかりすぎる難点がある。今ではほとんど使われていないが、同研究所では先達らが考案した特殊な器具や飲ませ方のコツなどが伝承されていた。
最新の遺伝子解析装置を持つ大阪大微生物病研究所とともに4年にわたって実験を重ねた結果、新種の毒素を発見・特定し、「BEC(ベック)」と名付けた。さらに、日常的に使用できる食中毒菌の簡便な遺伝子検査法も開発。ウェルシュ菌の毒素の種類を一度に判別でき、食中毒の原因究明に役立つという。公衆衛生研究所の久米田裕子・細菌課長は「今後さらに研究を進め、食中毒の予防につなげたい」と話している。