東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。
世界遺産・ポンペイ展開催中

トップ > 社説・コラム > 私説・論説室から > 記事

ここから本文

【私説・論説室から】

自衛隊機貸与を読み解く

 武器輸出の解禁など積極的な安全保障政策をとる安倍晋三政権は、海上自衛隊の練習機TC90練習機を初めてフィリピン軍に貸与することを決めました。フィリピン政府は領有権をめぐり中国と対立する南沙諸島の警戒監視に活用する計画です。

 フィリピン軍は南沙諸島に近いパラワン島に軍用機とは名ばかりの旅客機タイプの航空機三機を保有しています。軍の要望は海上自衛隊が保有するP3C哨戒機の提供でしたが、日本側が断り、レーダーも武器搭載もしていないTC90に落ち着きました。

 南シナ海にある南沙諸島はフィリピンのほか、中国、ベトナム、マレーシアなどが領有権を主張。中国は七つの環礁で埋め立て工事を続けています。中国を警戒する米政府は駆逐艦を派遣するなど南シナ海はホットスポットとなっています。

 日本政府は南シナ海への自衛隊派遣について「負担が大きすぎる」(防衛省幹部)として見合わせていますが、TC90を貸与しても無関係でいられるでしょうか。操縦法を教え、機体整備を指導するのに自衛隊が関与する可能性もあります。

 日本の安全保障に直接関係のない南シナ海の問題に自衛隊がかかわれば、中国軍は東シナ海の尖閣諸島に対して威嚇してくるのは確実なのでは。南シナ海問題は、もはや対岸の火事ではなさそうです。 (半田滋)

 

この記事を印刷する

PR情報